理想の結婚相手が気心知れた同性の親友だった件『親友王子と腰巾着~推しの王子に求婚されて困ってます~』
【レビュアー/澤村 晋作】
本書の帯が、まさに一言で本作を表していますので序文に代えて引用します。
「呪いで女になったら俺サマ王子に求婚されて」
そんな一風変わったラブストーリーでございます。
体は女性で心は男性の主人公と親友王子の精神的BL
本作の主人公は、王子の近習(きんじゅ)であるレノア(男)です。
幼い頃から王子に付き従う、いわば王子の腰巾着。
親からは「お前は王子の為に生まれて来たんだよ」と教育されていることもあって、根っからの太鼓持ち体質です。
しかし、才能豊かながらそれゆえに何かと問題を起こしがちな王子を、自分が憎まれ役になってでもフォローしたりもしてきた親友です。
そんな彼ですが、ある貴族の令嬢が、振り向いてくれない王子に呪いをかけようとした際、王子をかばって呪いを受けてしまいました。
その呪いのせいで女になりました。
そしたら王子から求婚されました。
肉体が女性になったとはいえ、レノアの心は男性です。
つまり、本作は精神的BLというわけです。
親友という長年の理解者だからこそ、知っている「ツボ」
そもそも、貴族令嬢たちからの過剰なアプローチや、そういった令嬢同士の争いなどを見て来たこともあってか、王子は女性不信をこじらせていました。
そこに、自分を深く理解してくれている女性が現れました。
レノアです。
中身は男ですが。
王子はそんなことは気にしないので、ぐいぐいアタックしてきます。レノアは、心は男なわけですから、なんとかこれをかわそうとします。
しかし、親友ですから王子のツボもわかっています。
悲しいかな、染みついた腰巾着の習性から、天然で王子を喜ばせる格好をしてしまったりします。紐パンとか。
自分の性癖を熟知した上で、それに乗っかってくれる女性――
王子からすると、どストライクなわけです。
よりアプローチが強くなるのも自明の理でしょう。そんな、どんどんドツボにはまっていくレノアが魅力です。
呪いを消せるアイテム登場で揺れ動く感情
さて、王子のアプローチを拒み続けるレノアですが、その間にも外堀は埋まっていきます。
他の貴族令嬢たちからも「他の女に盗られるよりマシ」だとして、応援される始末。
肝心のレノア本人も、王子の立ち居振る舞いや、親友だからこそ知る内面に、恋愛対象として惹かれていることを否定できなくなっていきます。
そんな中、レノアの呪いを消すことができるアイテムを王子が手に入れて――
二人はどうなっちゃうのでしょうか?
そして、僕はどういう感情でこの物語を見ているのでしょうか?
わからない……でも面白い。
男女ともにオススメできる作品です。