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「シャーマンキング」の最序盤をホラーな味付けで煮詰めた傑作『オカルトちゃんは語れない』
【レビュアー/ミヤザキユウ】
『SHAMAN KING ~シャーマンキング~』のアニメ化まであと3ヶ月(編集部注:2021年1月現在)になりましたね。
週刊少年ジャンプでの連載期間が、僕がまさに少年だった頃とドンピシャなので、思い出深い作品の一つです。
中盤〜終盤の、少年漫画らしからぬ哲学性を出しつつ、カッコイイ必殺技が応酬するバトル展開も好きなのですが、実は同じくらい、バトル展開に入る前のゆるい最序盤も好きでした。
『シャーマンキング』はざっくり言うと、霊的なものと現世を結ぶシャーマンである主人公・朝倉葉(あさくら・よう)が、未練を残して亡くなった人をお助けしたりする話です。
主人公の能力と人柄の両方が生き生きとしたストーリーで、かつ自分には見えないけれど、どこかで本当にこういうことがあるのかもしれないというリアリティがいい感じなのです。アニメの序盤が楽しみです。
そして、そんな展開が全編を通してしめている、僕のようなヤツが間違いなく好きになっちゃう作品が『オカルトちゃんは語れない』という漫画です。
本作はアニメ化もした『亜人ちゃんは語りたい』のスピンオフ。
”語れない”という否定的なタイトルやコミックカバーの色味からも匂っているように、本作は『亜人ちゃんは語りたい』とはうって変わってホラー&ミステリー色の強い作品になっています。
主人公は座敷童がいるアパートに住む女子大生・高橋陽子です。ちなみに『亜人ちゃんは語りたい』に登場する生物教師、高橋鉄男の姪。
『オカルトちゃんは語れない』(橋本カエ/本多創/ぺトス/講談社)1巻より引用
陽子は、霊能者のような能力をもった亜人です。霊能者といっても、「破ァッ」的なことをする人ではなく、自宅に住んでいる座敷童を見て、コミュニケーションをとれるくらいの力しかありません。
なので作中では、シャーマンのような能力を持った人ほど霊的なものに働きかけることはありませんが、それゆえに等身大の人として霊と対話をします。
どんな霊的なものと遭遇するかも含めてがミステリーなので詳しくは語りませんが、陽子の対応やリアクションにはリアリティがあって、コメディタッチながらゾッとすることもたびたび。
『オカルトちゃんは語れない』(橋本カエ/本多創/ぺトス/講談社)1巻より引用
しかし、本作を読んで毎回思わせられるのは恐ろしさよりも、もし霊的なものが存在するなら、彼らは理解されず、思った通りに認知してもらえず、きっとコミュニケーションに飢えているだろうなという寂しさを感じます。
そしてそういう気持ちをもつのは霊的なものに限らないということ。
本編で霊能者である陽子を通じてそれが報われる瞬間の喜びは、『亜人ちゃんは語りたい』にも通じるところがあるでしょう。
本編を読んでいなくても十分に楽しめるスピンオフ漫画ですが、本編を読んでいると両作品に共通するメッセージの深さもわかり、面白さが倍増することでしょう。それが『オカルトちゃんは語れない』なのです。