『羊の木』 元凶悪犯受刑者11名を受け入れた名もない町の戦慄を描く鬼才2人の狂気
※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
【レビュアー/堀江貴文】
山上たつひこといえば、『がきデカ』 で、いがらしみきおといえば『ぼのぼの』で超有名なギャグ漫画家だ。
そういえばギャグ漫画家は一世を風靡するギャグ漫画を出し尽くすと精魂尽き果てて、それ以降一線から去ってしまわざるを得なくなるという話を聞いたことがある。確かに長期にわたってギャグを生み出し続けているギャグ漫画家は少ない。
そんなギャグ漫画家の中でも超弩級のヒット作を生み出した後、かたや山上は小説家に転向し、いがらしみきおはつい最近『アイ』という人間の本質をえぐる不気味な漫画を発表している。そんな2人がタッグを組んだと言われると漫画愛好家としてはどうしても読みたくなる。
しかも私はこの作品を知った時に刑務所にいた。この漫画はなんと元凶悪犯受刑者11人を秘密裏に受け入れた北陸の名も無き町に起こった事件を描く作品なのである。
いがらしみきおの『アイ』を読むと分かるが彼の最近の作品はかなりキテる。あのぼのぼの画で物凄い不気味な世界を描くのだ。あれは一人読んでるとちょっと背中が寒くなる作品だ。正直言って。そのノリで、山上たつひこの不気味な世界観を描きまくる。しかもあろうことに、この町で毎年行われる「のろろ祭り」という祭りが不気味すぎる!怖い!やばい!
不気味な魚のかぶりものを被った「のろろ」は刃物を持っていても咎められないという。この刃物が包丁の柄の部分を外した刃だけの代物。こんなの元凶悪犯受刑者が沢山きたばっかりの町で繰り広げられるってだけで読者は不気味なものを感じるはずだが、そんな偏見を持っている読者の心理を作者は巧みに誘導しまくる!これ、俺刑務所の独房で読んでたけど背筋が寒くなったよ!
だったら読むなよ!笑って話だけど。
まあ、とにかく終始不気味な感じの漫画だし、もう完結したのでぜひ読んでみてください。