ゲームコミカライズの最高峰『Culdcept』
みなさんはゲームのコミカライズは好きですか?拙者、大好き侍。
そんな私自信をもってオススメするのが本作、『Culdcept』(以下、カルドセプト)です。
さて、原作となる『カルドセプト』というゲームをご存知でしょうか?ボードゲームとカードゲームを組み合わせた斬新なゲームデザインで発売してから20年を超えた現在も愛され、新作が発売されているゲームです。
カードゲームとボードゲームの融合と、言葉で言うのは簡単ですが、それをコミカライズするとなると想像するだけでその難易度が推し量られます。
そんな原作を、見事にコミカライズし、更に魅力を高めた作品となっています。
1・蒐集し、世界をその手にせよ
カルドセプトとは本来、創造神カルデラの所有物であり、書き込むことで万物を生み出した創造の書のことを指します。その創造の書はとあるいきさつで砕け散り、世界中に散らばります。
もとが創造の書ですから、これをコンプリートすると、世界を自由に創造できるわけです。
そう、創造の力を巡り、カードを操れるもの=セプターがカードを奪い合う
それが『カルドセプト』の世界観なのです!
2・自然体で型破りのヒロイン・ナジャラン
本作では、セガサターンの『カルドセプト』をベースにオリジナルの主人公、ナジャランが活躍します。
このナジャラン、明るく食い意地の張ったキャラで、お目付け役として、しゃべる杖・人頭杖のゴリガンと旅をしています。
このゴリガンも、師匠であるホロビッツも、ゲームからいるキャラですが
そんな彼らとごくごく自然に絡んでおり、まるで最初からゲームにいたキャラクターかと錯覚するでしょう。そのあまりの人気から、ゲームに何度もゲスト出演するほどです。
ライバルである「竜眼のゼネス」にいたっては、もはやナジャランとセットでいるほうが自然に感じるくらいで実際、ゲーム『カルドセプト セカンド』にナジャランがゲスト出演した際にも絡みがあったほどです。
3・成長の物語
さて、本作では、そんなナジャランがセプターたちとの戦いを経て、成長していく様が魅力です。
本来セプターとはコンプリートを争い合う、すなわち全員が敵なわけですが、そんな殺伐となるはずの世界で、敵をも友としてしまうような天真爛漫なナジャランに引っ張られ、仲間たちも成長していきます。
特にビスティームの遺跡を攻略するために組んだメンバー、腕のいいトレジャーハンターだが他人を信用できないアルル、名門学院の首席だが頭でっかちで他人を見下しているホアキン、歴戦の傭兵だが現在では飲んだくれのガンツ、彼らが、ナジャランとの冒険の中でだんだんかわってゆく様は大きな魅力です。
サブキャラクターの成長をここまで丹念に描く作品と言うのはなかなかなく、ビスティーム編のラストはその集大成であり、爽快感あふれるシメとなっています。
そして、とある理由から、ナジャランがカード開けなくなる(=召喚できなくなる)という展開があるのですが、再び彼女がカードを開く際、駆け巡る思い出は、きっとあなたの涙腺を直撃するでしょう。
そこから彼女が見せる成長は、ナジャランに影響を受けて仲間たちが成長するようにナジャランもまた、仲間たちから影響を受けていたのです。仲間とは人間だけでなく――もう号泣です。読んで!
最後に
この作品は、『マガジンZ』で連載されていたのですが、今その雑誌は存在しておらず、また作者のかねこしんや先生のご病気もあって停止している状態です。ですが、再開の可能性は残されており、先生も少しずつ絵の仕事に復帰され始めています。応援の意味でも、コミックスに手を伸ばしてみませんか。
特に、紙の最新刊には収録されていない。雑誌掲載時の最新エピソードが、電子書籍版6巻には収録されているので、オススメです。
とにかく、半端ではない面白さの作品。絶対読んでほしい1本です。
WRITTEN by 澤村 晋作
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
※東京マンガレビュアーズのTwitterはコチラ