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シェイクスピアが400年以上前に発明していた、犬猿の仲の男女をくっつける方法『から騒ぎ』
【レビュアー/和久井香菜子】
みなさんの恋は、どんなふうに始まってます?
遅刻しそうになって食パンを咥えて走っているときにぶつかった相手?
下校中に悪者に追われているイケメンを助けたら無理矢理キスされた?
そんなトキメキがあればそりゃ人生豊かですが、実際はそんなドラマティックじゃないですよね。
私の場合、「よし、この人を好きになろう!」って決意して始める感じです。
ほら、大人になると、少女漫画のヒーローみたいな人っていないんだなっていうか、いたとしても自分がその人をとっ捕まえる器量はないんだなとか、まあいろいろわかってくるじゃないですか。
てことは、黙ってると好きな人ってできないんですよね。
でもそれじゃあつまらないので、ある程度条件クリアしてたら、「よし!」って決めて、好きになるって決めるんですよ。
するとあら不思議、めっちゃ盛り上がってきます。メッセが来ると飛び上がり、返事がないとションボリし、目が合うなんてとんでもない心臓的大事件に発展します。
いきなりなんの話だって感じですけど、『から騒ぎ』はそんな物語です。
とある同系列の女子校と男子校が、年に1度、1カ月かけて文化祭を企画し、実行するきまりになってます。
その1か月の間に、「から騒ぎ」する物語です。原作はシェイクスピア。同名タイトルの「空騒ぎ」を現代風アレンジしたものです。
戸部ありすは、芯がしっかりしていて理論的で、ちょっぴり男嫌いで口が悪い女の子。
辺嶺(べね)くんも女嫌いでずけずけものを言う副会長。
二人は顔を合わせる度に、丁々発止で言い合いになります。
『から騒ぎ』(河原和音/ウィリアム・シェイクスピア/集英社)より引用
そんな二人をくっつけちゃえ!と周囲が画策し、まんまとラブなカップルに仕上げてしまうんです。
やり方はカンタン。2人に、「戸部さん(辺嶺くん)が辺嶺くん(戸部さん)のことを好きらしい」という噂話を盗み聞きさせるんです。盗み聞きってところがうまいですね!
『から騒ぎ』(河原和音/ウィリアム・シェイクスピア/集英社)より引用
まんまと周囲に噂話を聞かされて、もうそれだけで、二人の世界の見え方が全然変わっちゃうんです。
もうキラッキラに。
まず辺嶺くんにとって戸部さんがキラキラし始めます。
『から騒ぎ』(河原和音/ウィリアム・シェイクスピア/集英社)より引用
続いて、戸部さんも。
『から騒ぎ』(河原和音/ウィリアム・シェイクスピア/集英社)より引用
ちょ……チョロい!!
でも人の心なんてそんなもんです。チョロいんです。
というわけで物語では周囲に恋愛誘導されますが、これ、ひとりでも発動可能なんです。
後半になると、自発的にくっついた比呂と黒羽に一悶着起きますが、これは作品を読んでのお楽しみ。
ちなみに名前ですが、辺嶺くんはベネディック、戸部ありすはベアトリス、比呂はヒーロー、黒羽はクローディオが原作での名前のようです。
ところで誰か、私にも恋愛ふっかけて誰かを洗脳してくれないですかね……。
物知りで、ボソボソ喋る人が好みです。