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【FXですっ飛ばした人必見!】実体験ベースのトラウマ経済漫画 『FX戦士くるみちゃん』

【レビュアー/山田義久

FXで高級外車すっ飛ばした知人が絶叫

私にとっては、描写がリアルすぎて悪夢が蘇るトラウマ漫画だ。

過去にFX(外国為替証拠金取引)のトレードでドチャクソに負けた経験がある人は、吐き気がして来るだろう。つい先ほどFXで高級外車2台分ほど飛ばした知人に本作の香ばしい数ページを転送したら、即座に私のFacebook messengerに「やめてー!」とナイスな返信がきた。

一見、かわいいキャラクターが出てくる爽やかそうな話に見えるが、内容は全く逆だ。”他人の不幸”という蜜の味を存分に味わってみて欲しい。

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『FX戦士くるみちゃん』(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)1巻より引用

楽してお金儲けしたい人こそ読んで欲しい

対象の読者としては、お金儲けしたい人、特に、楽してお金儲けしたい人が一番いい。

個人的には楽してお金を稼ごうとすること自体、悪いとは思わない。むしろ賞賛されるべきことだし、成果がでている人はこういう考えをしている人は多い。

しかし、「楽して稼ぎたい道」は最初の一歩目を間違えると、その後の行動が全て逆効果、地獄への推進力に転化されてしまう。

この漫画の主人公はまさにそれに当たる。

お金儲けは最初の一歩目を間違えたら地獄

主人公・くるみは最初の一歩目を間違える。

大学2年生の彼女は、アルバイトして貯めた30万円を元手にFXを始める。

その理由が、FXで2000万円溶かして自殺した母に対する自責の念。「自分が頑張ればお母さんが死ぬことはなかった」、「最初から私を頼って入れば死なずに済んだ」。

これを証明するために自分もFXを始める。

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『FX戦士くるみちゃん』(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)1巻 38pより引用

しかし、この発想がそもそも間違えている。

彼女の母はいわば、発泡スチロールの船で太平洋を渡ろうとしたわけだが、「私は勉強する」、「引き際が大切」とか言っているものの、「FXをする」ということは、結局彼女も発泡スチロールの船で太平洋を渡ろうとしていることに変わりはない。

お金を確実に取り返したいなら、アルバイトで稼いだお金を貯金したり、適切なリスクとリターンを見極めて、それなりの資産運用をするべきなのだ。

方法はいろいろ考えられるだろうが、少なくとも借金してギャンブルするに近いFXに頼るべきでないことは自明だ。

原作者の実体験がベースなのでリアル…を通り越してトラウマ物の描写

本作のメインは彼女のFX戦記だ。そこには彼女なりの試行錯誤が描かれている。

原作のてむにゃん氏は実際過去に相場でボコボコにされた経験があるとのことで、その絶望の描写や主人公に吐かせる言葉が、体験者がからするとリアルを通り越してトラウマに触ってくる。

その描写のなかには、さらっと本質を突いた記述もある。

ここは私も大好きな個所だから紹介したい。

「苦しい・・・まるで内臓を棒かなにかで掻き回されてるみたいだ・・・」

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『FX戦士くるみちゃん』(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)1巻129pより引用

これほんと、大きく相場はった時に思惑と逆に行き所持金が洒落にならないレベルまで減りそうな時、まさにこれになる。血の気が引いて頭もフラフラするけど、衝撃が胃下にくるというか。本当に実体験ベースでないとでてこない言葉だ。

「もう無理・・・!生きて帰れる気がしない・・・!」

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『FX戦士くるみちゃん』(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)1巻136pより引用

これも本当にいい言葉で、人はなかなか損失を受け入れることが難しく(その辺の心理についても本作中に解説有り)、一縷の望みにかけたままずるずる相場に引きずられて気づいたら地獄の一歩手前…という香ばしい場面描写でゾクゾクする。

「上げンなら下げンなやァ!クソがァ!」

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『FX戦士くるみちゃん』(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)1巻150pより引用

「上げるなら、下げんなや」…これ、本当にいい言葉で(笑)。相場とかトレードとか関係ない人からしたらジョークにしか聞こえないこの言葉も、相場の数字と戦ったことがある経験者からすると切実に一度は叫んだことがあるような言葉だ。

「この時のくるみ 言うまでもなくーーーー なにも考えていない」

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『FX戦士くるみちゃん』(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)1巻126pより引用

最後はこの言葉「なにも考えていない」。本質をえぐるセリフだ。

くるみは生き残るため、母が失ったお金を取り戻すため、それっぽく理屈を組み立て頑張っているように見えるが、上述の通り、そもそもFXという全く動きが読めない世界に身をおいている以上、全ての言動は自分の思い込みにすぎないし、結局何も考えていないに等しいのだ。

さらにパニックに陥っていていて冷静な判断もできていないのにその自覚もない。すごく考えて、すごく頑張っているように見えるけど、「本質的には何も考えていない」という顕著な例がこれだが、FXに限らずいろんなところで起こっているような気もする。

この他にも、本当に香ばしいセリフが溢れているが、それはぜひ本編を読んでほしい。もともとはネットで公開されていた本作だが、おそらく今回の出版に際して内容がさらに磨かれてくるだろうから展開が楽しみだ(ネット公開版はかなりエグいので表現丸めないといけないだろうし…)。

勝っても地獄、負けても地獄、ハッピーエンドは難しい

ただ、ハッピーエンドはないと考えている。

こういうFXのような、短期決戦の一攫千金を狙えるゲームは負ければ一瞬で黒焦げになるが、逆に勝ったとしても、スパッと勝ち逃げすることは難しい。

なぜなら、その勝利の理由に確固たるロジックがない以上、「次も勝てるんじゃないか」、「もっと稼げるんじゃないか」という呪縛がつきまとう。

その呪縛は、負けて黒焦げになるまでつきまとう。今の勝利は次の敗北の呼び水になるのだ。だいたい、きちんと勝ち逃げできる自制心と判断力があれば、そもそもFXで資産運用なんて考えないもの。

勝っても地獄、負けても地獄。どんな展開になるか本当に楽しみだ…ふふふ。

オススメ!