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#60 私の青春


神聖かまってちゃんを昔ほど聴かなくなったが、それでも彼らの音楽に救われる夜がある。

外には絶対に出せない自分の中の凶暴な自分が暴れたくて泣いているとき。

世界に自分の存在を叫びたくなったとき。

彼らの音楽を号泣しながら聴きたい夜がある。

初めて彼らのを音楽を聴いたのは高校生のころ。

ボーカルの「の子」がまだ生配信で暴れているときで、なんだこいつ、という怖いもの見たさから興味を持つようになった。

いろんなアーティストにつっかかったり、2chで暴れまくったり、ライブ中にリストカットして血まみれになったり。何をしでかすかわからない危険人物。とにかく嫌われまくっているバンドという印象だった。というか、完全なるイロモノ扱いで誰も相手にしていなかった。

初めて聴いたのは「ロックンロールは鳴り止まないっ」だった。

あの時の衝撃たるや。山月記を読んだ時と同じぐらいの衝撃。
PCの前で号泣したのを覚えている。

歌へったくそだなあ!!!!!
それなのに何だこれ!!!魂で歌ってる!!!!

激しい叫びの裏で流れるピアノのメロディーは繊細でとても切なくて。

なんて切実な曲なんだと思った。この人たちは私の味方だと思った。かっこいい!!!すごいバンドを見つけてしまった!!

興奮冷めやらず、わけもなく外を走った。
叫びたかったが、正気を保っているので叫べなかった。

次の日友人に聴かせたら「気持ち悪い!うるさい!」で一蹴されてしまい、気がつけばかまってゃんは、私だけのヒーローになっていた。

ヘルメットをかぶって外に出てやろうかとも思った。ヴィレバンでスマイルのサングラスを必死に探した。

さぞ屈折した学生生活を送ったことだろう、と思う方もいらっしゃるだろうが…。

学生生活はとても充実していた。
友達もそれなりにいたし、大好きな部活にも打ち込んでいた。
優等生でも劣等生でもなく、ただの普通の女子高生だった。

それでもたしかに精神をすり減らして生活していた。自分の中のありあまる「負のエネルギー」をどうしていいかわからなかった。いつも何かと闘っていて(今もだけど)、精神は不安定。
何をどうしていいかわからなかったが、楽になりたかった。ただただ、若かったんだ。

病むことも狂うこともできず、自我ばかりが肥大化して苦しくて。何者にもなれなかった私にもかまってちゃんはとても優しかった。

受験期の特にしんどい時期は美術準備室でひとりデッサンをしながら聴いていた。真面目にやれよ。

クラスの男の子がひとりだけ「俺もめちゃくちゃ好き!」と言ってくれて、とんでもなく嬉しかったのを覚えている。青春だったなあ。

↑死んだら葬式で流して欲しいぐらいには好き



あれからものすごく時間が経った。
私は大人になったし、かまってちゃんは音楽好きなら誰もが知ってるバンドになった。

いつの間にかかまってちゃんを聴かなくなっていた。
昔より少しだけ生きやすくなって、どうにもならない夜が少なくなったからだろうか。

それでもたまに、かまってちゃんを頼りたくなることがある。
世の中の全てにファッキューと中指立てたくなることがある。

何もかも不器用な私が、生きさせろ!と叫びたくなるとき、彼らの音楽は私の中で鳴り響く。

やっぱり大好きなんだよ。
これからも何度もお世話になると思う。

10代の複雑でへんてこな時期に出会えて良かったアーティストだ。


夕暮れの美術準備室。ひとりで聴いたあの日々を絶対に忘れない。

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