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Wacken Open Air 2017 レポート③

Wacken Open Air最終日。天候やら足下やら初めての体験ばかりの中でしたが、ようやくゴールが見えてきました。長いようで短かったドイツ4日目。この日も朝は早起き、前日より2時間遅い出発となりましたが、道も覚えていたのでスイスイです。

最終日もPRESSエリアへ続く階段前に到着したのは1番。
顔見知りになったセキュリティのおじさんに『キミ達かよ』と笑われる。首までタトゥーがガッツリ入っているいつもスマイルなこのスタッフとは、前日のこの待機時間にHeaven Shall Burnは最高だって話もした。Wackenの素敵なところは、会場のセキュリティの人達も音楽が好きでしっかり仕事もしつつ楽しんでいるというところ。大抵の人に出演するバンドのネタが通じる、これはとても嬉しい事だ。

地元、ドイツのRAGEより最終日がスタート!

LOUDER STARGEには前日比較的若いメタルコアファンや女の子が多く集まっていたのだが、この日は地元ドイツの彼らが出番という事で最前列の雰囲気もガラリと変化。

疾走感のあるDon't Fear the Winterからショーがスタート!
3ピースの彼らは、大柄でとても表情豊か。曲のインスト部分では右往左往所狭しとステージを動き回る。

Great Ole Onesではシンガロングが巻き起こる。一見怖そうな見た目と物々しいアートワークのバッグフラッグだったが、メンバー同士の仲も良さげでショーはとても笑顔に包まれた明るい物となっていた。

3曲目が終わると『えっ?なんで俺が今日英語でMCしてるかって??今日はインターナショナルなフェスティバルだろ?ここにいる皆と俺は言葉を交わしたいんだ』とおどけた調子でVo.が発言。ドイツ勢からは彼らのチャーミングさに笑いが、そしてワールドワイドな客層(もちろん私を含めてだが)は彼の言葉に歓声と拍手を送った。

地元勢ならではのハートフルなショーを見せてくれたRAGE。オーディエンスとの一体感が最高だった。

完成度の高さに驚いたTwilight Force

W.E.T STARGEへ着くとまさかの20分押し。ここで目当ての2バンドを撮ったら急いでメインステージエリアへ戻らないとHeaven Shall Burnが始まってしまうというのに…。内心少し焦りつつ、ステージの準備が整うのを待つことに。

このWOA後の2017年9月に来日が決まっていたアドベンチャーメタル、Twilight Force。登場するSEやその身振り、そして衣装からメンバーの話し方まで徹底した世界観。

最初はやはりなんだコイツらは!?と思ってしまうような見た目に驚くバンドなのだが、そのステージのクオリティの高さと演奏技術を目の当たりにすれば度肝を抜かれるだろう。


1曲目は最新作HEROES OF MIGHTY MAGICよりBattle Of Arcane Might、この時点で私は心底驚いた。アドベンチャーメタルの名を冠している通り、シンセサイザーの音や映画/ゲームの中の効果音のような音も多用されているバンドなのだが、楽器隊が滅茶苦茶に巧いのだ。

派手な見た目のメンバーに隠れがちなドラムだが、ツーバスをドカドカと速いテンポで踏み、安定した曲の地盤を生み出している。彼のプレイがまた巧いのだ。

続けてシンセサイザーの煌びやかな音色からスタートするTo The Stars、まさに流星群のような展開。サビでは鳥肌が立つようなシンガロングが巻き起こる。
そしてずるいほど麗しいギター2人が、とても面白いテクニカルな弾き方を披露するのも楽しい。

また、メンバー同士も仲が良いようで髪の毛で遊んだり小突いたり…

こんな場面まで。

そしてカメラマンにしっかり目線を向けてくれたり、一番ファニーな一面を見せてくれたのが彼。……エルフ…なのだろうか(笑)


出身地はTwilight Kingdom...という事になっているが、ヨーロッパを中心にやはりファンベースは大きいようで、テントステージのエリアが後ろまで満員になっている状態。Twilight ForceのTシャツを着ているファンも多かった。

Enchanted Dragon of WisdomPowerwindとテンポの人気の曲が続き、オーディエンスの盛り上がりもひたすら上昇していく。彼らならでは、というか勇者ブレードの形をした風船を掲げているファンも少なくなかった。

ラストは彼らの代表曲とも言えるGates of Gloryから、そのままの流れでThe Power Of The Ancient Force。会場が一体となって手を挙げ、サビではお決まりの"Twilight Force"の大合唱。最後まで笑顔と勇気が溢れ出るようなステージだった。


魅力溢れるWACKINGER VILLAGE

ここで一旦次のバンドの時間に外へ。雨やスケジュールの関係で立ち寄れなかった一番奥のエリアへ向かう。

ヴァイキング風の様相をした店や商品が並ぶエリア、そして映画MAD MAXの世界観を具現化したようなエリアが続いていた。



写真とってもいい?と聞くと、皆が思い思いにポーズを撮ってくれた。

辺りにはEDMやDubstepが響き渡り、まさにMAD MAXのような荒廃した未来感がいい。

彼らの写真集やポートレート、グッズ等も売っていて結構興味深かった。

こちらは麻袋?を相手にぶつけて落とすゲームらしい。

行列のできるパン屋やカリーヴルストの店もこのエリア内にあり、どうやら毎年出店していてW.O.Aに訪れるメタラーの中では定番化しているそうだ。
バンドのショー以外でも魅力だらけなのがWackenである。


ドイツメタルコア!Emil Bulls


W.E.T STAGEでは地元ドイツの漢メタルコア、Emil Bullsがスタート。当初は同じくドイツの重鎮メタルコアHeaven Shall Burnとタイムテーブルがほぼ丸被りだったため諦めかけていたのだが、キャンセルのバンドが出たため約1時間前倒しに。しかし20分遅れなので3曲撮ったらダッシュでメインエリアへ向かわねばならない…楽しみにしていたバンドだけにちょっと悔しい。
一曲目はHeateater、うねるようなギターと刻むギターが重なるハーモニー、そして漢気一本なプレイがド直球にくる。

先程のTwilight Forceの優雅さとは一転、漢気溢れるステージングをカマすEmil Bulls。

ただしTwilight Forceの完成度が高すぎたのか、単に音響トラブルなのか…。ヴォーカルの歌声があまり聞こえない、せっかくだからちゃんと聴きたいのに!と耳栓を外す私。
2曲目はここで聴けると思ってなかった、2008年リリースの初期のアルバムよりThe Most Evil Spell。拳を振り上げるファンも多く見られた。

ドイツ国内ではメタルコアといえば先に述べたHeaven Shall Burn、そしてCALIBANの名が一番に挙げられるほど有名だろう。そんなドイツ国内で今、中堅シーンを引っ張っている3大バンドと呼ばれているその一角を担うのが彼らEmil Bullsだ。
(ちなみにあと2つはAnnisokay、ANY GIVEN DAYだと言われている)

長年このシーンに君臨しているベテランならでは、とでも言うべきか。楽器隊の安定感、曲の基盤がしっかりしている。そして何度も映像では目にしてきたVo.のクリストフの全身で絞り出すように歌い上げるステージング。Annisokayにあるような繊細なか弱さや美しさ…とは対角に位置するような、それでいてANY GIVEN DAYのアスリートモッシュが始まりそうなゴリゴリの力技感…ではなく、自然と一緒に身体が跳ねてしまうようなメタルコア。

2曲目が終わり、ここで撮影を切り上げてメインエリアまで走ろうかな…そう思っていると、まさかの3曲目にやってきたのは個人的に大好きな1曲The Way of the Warriorが。前奏の時点で思わずガッツポーズし拳を振り上げる私。意地でもこの曲だけは聴いて行く、そう心に決めカメラを構え直した。


We are strong (invincible)
We are lions (unbreakable)
We were born to be fighters (unterrified)
We rise, we rise


サビのこの部分はもうオーディエンスと共に大合唱である。ステージから飛び降り柵を乗り越え、Vo.Christophもファンを煽りに煽る。歌詞を見たら一発でわかると思うが、漢気がハンパない。これがEmil Bullsの魅力なのだ。


大満足で拍手をしながら撮影のPITから出る。まだ観たい…と後ろ髪を引かれつつも、遅刻してはこのWacken Open Air 2017にやってきた事自体が水の泡になりかねないので走る。

悲願達成!HARDER STAGEでのHeaven Shall Burn



悲願達成。その一言がこの時まず頭をよぎった。
そもそも、2012年に来日した彼らのショーでMCが一切わからずに「悔しい!せめてなんて言ってるかだけでも理解したい!」と思わなければ、今の私は居なかった。彼らのJAPAN TOURを観ていなかったら…この場所で観てみたい!とWacken Open Airには行かなかっただろうし、そもそも英語を理解しようとすらせず海外バンドの撮影やインタビューなんてやれなかっただろう。まさに私の原点的な存在、重鎮Heaven Shall Burn。彼らをWacken Open Airのメインステージで撮る!それは私が何度も口にしてきた目標だった。

Wacken Open Airのメインステージ特有の、次のアクトを示すスロットが展開。そしてスモークが焚かれ、ゆっくりと最新作Wandererの1曲目であるThe Loss Of Furyが流れてくる。Vo.Marcusの第一声と共にステージの幕が落ち、Heaven Shall Burnが姿を現した。鳥肌が一気に立ち、目の前が涙で滲んでくる。夢にまで見た、Wacken Open Airのステージ上にいる彼ら。5年前は新宿のACBホールで観た、しかしこの地元ドイツで観る彼らは遠く、そしてその偉大さが痛いほど伝わってきた。

踏み台と望遠レンズを持っていなかったことを、この時ほど後悔したことはない(苦笑) 炎が噴き出すセットがステージの最前にある為、メンバーが少し奥の位置で演奏しているのだ。もちろん、ドラムは背の低い私からは全く見えなかった。

しかし、その杞憂を吹き飛ばすほどの轟音、そして破壊力。
Whitechapelを初めて来日公演で撮った時と同じ感情がせりあがってきた。私のカメラのレンズに憧れのHeaven Shall Burnが映っている!信じられない!震える手で何度もシャッターを切っていた。

イントロとなる曲に続き、そこからBring the War Homeがスタート。この人達のギターの音はなんて鋭くて気持ちがいいんだろう。思わずファインダー越しに見とれてしまう場面が何度もあった。

今度こそ、MCがわかるぞ!と思いきや、ここはドイツ。見事にMCがドイツ語で一切わからなかった(笑) 数年後、ドイツ語を勉強して再びHeaven Shall Burnを撮りにWackenへと向かう自分が容易に想像できてしまった。

刻むギターの音色からのスタートに心拍数が上げていかれそうな、Land Of The Upright Ones。既に後ろを振り返ると巨大なサークルピットが出現していた。そこからのオールドなファン大歓喜のVoice of the Voiceless
See them die!!!の声と共にオーディエンスはスイッチが入ったように暴れ狂っている。
あっという間に3曲が終わり、まだ震えていた手と余韻を楽しみながら…我慢が出来ずオーディエンスの中へ。

あぁ、夢が叶ってしまった。Heaven Shall Burnは偉大だった、私なんかじゃまだまだ手の届かない雲の上の人達だ…でも本当に今年Wackenに来てよかった。ニヤニヤしながらオーディエンスの中をステージに向かって横切り、何度も転びかける私。メロイックサインは挙げたが、さすがに12kg以上もある機材を背負ったままなので憧れであろうとこのままモッシュピットに私が突っ込むのはマズい。そんなことを考えていると、このタイミングでアルバムInvictusよりCombatが演奏されてしまう。ここでやっちゃいますかCombat!!! カメラバッグを隣のおじさんに渡すか放り投げてモッシュに突っ込んで行きそうなほど自制心がそろそろ危うくなってきていたので(前日夜には我慢できずどうしても見たかったArchitectsで真ん中まで行き、サークルモッシュに巻き込まれた挙句、頭にクラウドサーフしてきた人の長靴が二回ほど直撃して色んな意味で顔面が大惨事だった)、ショーの中盤だが安全な反対側のステージの後方まで離脱。

朝から何も食べていなかった事を思い出し、屋台でタイカレーを買って食べながら観る事にした。いくらHeaven Shall Burn狂いの私でも、カレー持ってる時はさすがに走って飛び込みはしないだろう、我ながらアホすぎる思考回路をしていると思う。…憧れの神バンド見ながら食うタイカレーは胸がいっぱいで味がわからなかった。この選択は大正解だったのか、その後The Omenがプレイされ(Invictusリリース後の来日公演が2012年だったため、当時演奏された曲は私にとって思い出の曲ばかりなのだ)、その後の名曲Counterwaightで『PAブース囲って周れや!』のHeaven Shall Burnお決まりの最高に狂ってる体育会系サークルピットが発生。しかも3つも。完全に頭悪い(褒め言葉) あの近くにいなくてよかった、絶対後先一切考えずに一緒になって走ってたと思う。

そして最強WoDソングEndzeitをすかさずプレイ。ピアノの音のような前奏が流れ出した時点で近くでゆったり座ったり寝転がったりして見ていた人達が、急に立ち上がって雄叫びを上げだした…どうやら私の近辺に居た人達はほぼ同類だったらしい。PAブース周りのサークルは全く止まる気配すらないのに、そのすぐ前方ではWoDが発生しているという、遠くから見てもカオスな状況。残っていたタイカレーを飲むように食べ終え、カップをゴミ箱に捨てて周りのファンと共に拳を挙げ叫ぶ私、もういい、バカになろう。ちなみに、恐らくあの場で私だけが唯一ノンアルコールだった。

そしてアンコール1曲目はGodiva。徐々に盛り上がる前奏からブチかますMarcusの力強い声とエモさのあるギターがたまらない、2013年リリースのアルバムVetoのスタートソングだ。次の撮影も近い、とりあえずステージサイドに行く為に移動しつつテンション上がって近くのHeaven Shall Burnのマーチ着てる奴らとハイタッチしたり肩を組んでいた。
そしてラストはEdge of Sanityのカヴァーソングながら、原曲を百割増しに破壊的にしたような名曲Black Tears。叫ぶファン、私も叫ぶ。そのまま両手を挙げた状態でステージ袖で撮影の待機をしていたGiruちゃんに再会。気持ち悪い満面の笑みとハイテンションのままで声をかけてしまった、しかもなぜかこの時、顔から血を流していたらしい、何をした私。



番外編

Heaven Shall BurnのMEET & GREET
今回のブログの最後に、Powerwolf後にメインステージ横のMEET & GREETステージで行われていたHeaven Shall Burnのミーグリについて少し…。

ひと目でいいからメンバーに逢いたくて並んだ。後にも先にも、今回のWackenで私がただのファンを満喫したのはこのHeaven Shall Burnだけである。
目の前にいた男女二人組には、Heaven Shall Burnを観に遥々日本から来た事をクレイジーすぎるだろ!と驚かれ、後ろにいたおじさんは『いや、実は全く普段聴かないバンドなんだけどさ、ドラムが俺の息子の学校の先生なんだよ』と息子へのサプライズの為だけに並んでいた。


近頃はどれだけ大物のバンドが相手であろうと、実は密かに大ファンだったり尊敬しているアーティストであろうと、仕事として関わる部分が多ければドライな部分は結構ドライにいく私である。久しぶりに、(Warped TourのAfter The Burialでは思いっきりファンとして話しかけたけど)純粋に凄く好きで憧れている人達にファンとして接することが出来て楽しかったし、嬉しかった。一枚のサイン入りポートレートが宝物のように感じた。たまにはこういう気持ちも忘れないようにしたい。

-- 後編へ続く--

私、Marinaの今後の取材や活動費、または各バンドのサポート費用に充てさせていただきます。よろしくお願いいたします!