Summer Breeze 2024 にPRESS参加してみて(辛かった話)
8月の14日〜17日、4日間通してドイツのディンケルスヴュールで開催されたSummer Breeze Open Airに参加してきました!
Xや各SNSで発信していたので、ちょこちょこ情報を追ってくださった方もいらっしゃったかもしれません。
(最後の方は完全にHeaven Shall Burnとフェス飯に狂ってたし、フライトトラブル大実況になってましたが苦笑)
・まずSummer Breezeとは?
ドイツの3大夏フェス
①6月末のFull Force
②7月末~8月頭のWacken Open Air
と並ぶ、世界規模の巨大フェスティバル
7-8箇所ステージのあるW:O:Aよりも小規模で3ステージとキャンプエリア内に1ステージ、全4ステージで行われる。
大体お客さんの規模は3万人前後かな…(Wackenで7-8万人)
雷雨や泥だらけの印象の強いWackenと違い、ここディンケルスビュールの会場は普段はとうもろこし畑と民間空港。
とにかく雨というよりは砂埃がすごい地域。
最寄りの国際空港はニュルンベルクかミュンヘン、シュトゥットガルト。
一番大きな国際空港はミュンヘンなんですが、ニュルンベルクが一番近く、電車やシャトルバスで行ける距離のため今回はこちらを選択。
余談ですが、ニュルンベルク駅のフードコート的なところにあるアジアン料理屋のタイカレー。ここ個人的なワールドオブチャンピオン・ベストオブザタイカレーなので是非行くことがあれば食べてみてほしい。めっちゃ美味い。スタンダードチキンがおすすめです(他、ビーフ、ダック、フライドチキンがあるのですが、その他は試したことがないw)
ニュルンベルク空港からのシャトルバスは開催一週間前には売り切れていたので、鉄道でエルヴァンゲンまで移動し、そこからSummer Breeze行きのシャトルバスへ。
・初っ端からアジア人差別の洗礼が
さて、実は出発する前から一つ懸念事項があって。
WOAと比較して、圧倒的にこのSummer Breezeはドイツ国内層向けの田舎のフェスティバルの印象が強い。故に何から何までドイツ語表記なのは勿論、ドイツ語話せないと辛い場面がちょいちょいある。
2019年に参加したときも、4日間の開催期間中、3日目の夜まで誰からも話しかけられず、ヘッドライナーの撮影権ももらえず、冷たい飲み物すら無視されてもらえなかった経験があった。
「今回はないといいなぁ〜」なんて、出発前に家族に語っていたのだが、まさか今回更に上をいく経験をすることになるとは思わなかった。
①まさかのフェスティバルシャトルを降ろされる
私は今回の参加名目はPRESS。撮影や取材、レビューを書く権限が与えられ、ステージ前のフォトピットという場所で最初の三曲のみ撮影権が与えられる。
なので、チェックイン(関係者受付)は一般のフェス参加者とは異なる場所にある。
そしてフェスティバルシャトルは一般のお客さんのチェックインのバス停の次に、そのVIPやアーティスト、PRESSのチェックインがあるバス停に向かうことになっているのだ。
渋滞もあり、1時間半ほどかかってフェスティバルエリアへ。
ここで一般のお客さん達は一斉に降り、車内には私と新しく乗ってきた何人かのみになった。すると運転手がしきりに降りないのか?とジェスチャーをしてくる。
なので次のVIPチェックインで降ろしてほしい旨を伝えたのだが、一方的にドイツ語で捲し立てられる。
「すみません、ドイツ語がわからないので英語で話していいですか?」
「私はPRESSなので、次のVIPチェックインで降ろしてもらいたいんです」
何を言ってもドイツ語でずーっと捲し立てられ、あっちへ行けというようなジェスチャーをされる。
「もしかしたら、この時間のバスはVIPチェックインに行かずに、駅とエリアを往復するものなのかもしれない…」
見れば道路の先にはポールが置いてあり、VIPチェックインの前で左折し元来た道を戻るようなルートもある。
私の勘違いなのかな、と思った瞬間、後ろに乗っていた人が突然私の荷物をバス外に降ろし始めた。
「次のバス停、VIPチェックイン、ここには行かないんですか?」
地図を出して再度伝えたが、「ニーハオ」という言葉をかけられ下車させられた。
約1.5kmほどあるその道のりを、真っ昼間の灼熱の中合計37kgの荷物を押して道路を歩くことに。
するとまさか!!バスが私を追い越していったのだ。
しかも抜かれざまにみた運転手は大笑いをしている。
「なんそれ!!ふざけんな、クソッタレ!!」
……流石に日本語で叫んでしまった。苦笑
その後バスはなぜか道路のど真ん中で急停止。ロードバイクに乗っていた現地の人達も困惑気味。
次のバス停まで乗せてくれるのかもしれない——そう思って荷物を押して小走りでバスへ近づいた……。追いついた瞬間、バスは発車して行ってしまった。
「クソ野郎!!!!」(再度叫んだ)
ロードバイクのおじさん達に「どうしたの?」と聞かれたので、「さっきニーハオと言われてバスを降ろされたんです。だから道路を1人で歩いていかないといけない」って言ったら複雑そうな顔で「Good Luck」と言われた。
反対車線には一般のお客さんのフェスティバルエリア行きの車で大渋滞。
「どうしたんだー? チェックインは向こうだぞ!」「暑いから倒れるぞー!」
そう声をかけてくれる人達に「関係者受付なんだけど、アジア人だからバスを降ろされた!」と言ったらSorryと言われた。
結局、この時間大幅ロスでSylosisに完全に間に合わず、Meshuggahとの待ち合わせ時間にも間に合わなかった。
②ヘッドライナーの撮影権が与えられない理不尽
チェックインも時間がかかったものの、ここで話しかけてくれたドイツの人がとても優しくて、1.3km先のキャンプエリアまで荷物と一緒に車に乗せて行ってくれた。「英語苦手でごめんね」と言いながら、一生懸命会話してくれたおじさん達にはものすごく感謝をしている。
そして宿泊用テントを組み立て、いざフェスティバルエリアへ。
PRESS/VIP/レーベル関係者はメインステージ近くのゲートまでのショートカットがある。WOAではめちゃくちゃ歩くので、これはものすごく助かる利点ではある。
そしてPRESSテントエリアに到着。
今年からはリストバンドにQRコードが内蔵され、専用アプリでクリアした人物のみがそのエリアや通路を使用できる仕組みになっていた。
で、このテントエリア。到着した8/14の午後からオープンの場所なのである。
つまりアーリーチェックインチケットで前夜祭からエリアにいたとしても、PRESSテントは開いてないしそもそも使えない。2019年に参加したときも、前夜祭の日にこのテントは開いていなかった。
そして事前の案内メールでも「PHOTO PASSは取得できています」との返答に何度も確認をしていた。実はSummer Breezeはメインステージのラスト3バンド、いわゆるヘッドライナー枠を撮影するには別途ヘッドライナーパスが必要なのだ。
メインステージ出演バンドからそれぞれオファーをいただいていたこともあり、「ヘッドライナーのPHOTO PIT PASSかAAAはもらえないか」と問い合わせていたが、これについては事前返答なし。
そして「14日のテントオープンからメールにてヘッドライナー撮影権を受け付ける」と12日火曜日の時点で公表。
しかし——テントに行くと書いてあったのは「ヘッドライナー撮影パスは月曜日の受付です」の言葉。(写真撮っとけばよかった……)
そう、つまりフェスティバルのPRESSテントエリアがそもそも開いてない、その告知が読めない期間に、身内のドイツ人のみで撮影権を配布し終わっているのだ。
諦めずにメールを送ったものの、帰国した現在も全く返信はない(2019年の時は「ごめんけどもう枠ないから撮影できないよ、でもオーディエンスの中から撮るのは自由だから頑張ってね!」と当日中にメールがあったのに、それすらなかった)
③アジア人の透明化という言葉をのちに知る扱い
初日から、なんか変だなとは感じていた。
挨拶しても目を逸すPRESSの人達、私の使う長テーブルは誰も使わない、でも充電ケーブルは撮影から戻ると勝手に使われていて、謝罪もお礼も言われない。
マナーとして、編集している人間がいたら、その機材の上に自分の荷物や食べ物なんて置かないし、机に座ってガタガタ揺らしたりもしないだろう。
そして出口を塞ぐように固まって騒いだりもしないと思う……が、全部された。
お金を払って飲み物をもらうカウンターは、今年は綺麗なカップで無視もされずに氷入りのコーラをもらえた。
だけど、PRESSや関係者が無料でもらえるパッケージ入りの水やジュースは「君にはあげる事ができない」と1人だけ渡してもらえなかった。
なんだろうという違和感は、最終日のとある撮影を終えてPRESSテントに戻ってきた時にはっきりと確信に変わった。
私と同じテーブルに誰も座って作業しないと思っていたけど、そのテーブルの長椅子だけ全て撤去されていたのだ。
少し空いているスペースに「座っていい?」と聞いても皆微妙な反応か無視。
もういいやと思って、床に座って気を取り直して編集作業をしていた。
そう、「意地悪をしようという意思ではなく、そもそも目に留める存在じゃないと思われている」感覚だったのだ。
というか完全にアウトオブ眼中。隣の奴が床で作業してたら、ここ使う?って日本人なら聞くと思う。というか、他の世界フェスティバルのPRESS参加者にはそういう気遣いのできる人間がいるのに何人も出会ってきた。
けれど、この人達は。そもそも1人だけ混じっているアジア人と会話する必要も、目に入れる必要もないし、そもそも気にもしてないのだ。
(ちなみに長椅子は、別の人間が昼寝するためにすぐ近くへ持って行っていた)
前回の参加の際は、今ほどSNSに重要性が置かれてなかった時代。
公式のフェスティバルPRESSチームもいなかったので、誰よりも先に画像をアップして公式やバンドに使ってもらうことで認知され存在を認めてもらうことができた。
けれど今は2024年。各バンドにも専属のフォトグラファーやビデオグラファーがいて、Summer Breezeの公式PRESSチームが存在していた。
結果、自分のSNSにアップするだけがメインになってしまい、ほぼ納品業務もなかった。
初日にEmmureのフランキーが自身のオフィシャルで使ってくれたことが、どれだけ私の励みになったことか。
・臨機応変なんてものはない
先に挙げたように、今回のフェスティバルでは不正アクセスを防ぐためか、リストバンドのチップの色とコードを読み取ることで判別して入れるエリアを区切っていた。
ただここで大問題。
Infected Rainのエージェント、Meshuggah、JINJER、DISTANT、Rise Of The Northstarの皆、Napalm RecordsやNuclear Blastの人達、Architectsのスタッフ陣etc…
皆がスタッフやプロダクション事務所にいくら直談判してくれようとも、私はそのゲートの向こうに一歩も入れない。
なぜなら!リストバンドのチップが!入場不可のブザーを鳴らすPRESS関係者だからだ!
「メンバーが一緒に行って、ここまで送り届けるから」と説明しようとも無理。
「この子は日本から来て、俺たちの面倒を見てくれてる人なんだ」と告げても無理。
なのに、よくわからないドイツ人は勝手にその日だけパスを交換してMIWのバックステージに突撃しようとしたりしてる。そっちを取り締まらなくていいのか!?
結果、会う予定だった人達とは半分ほどしか会えず、なんだか悔しい不完全燃焼な感じになってしまった。
ここでごねて暴言吐いたり、無理やりバックステージに行くと、今後のアジア人参加者の印象含めて悪くなってしまう、だからしなかったけど、すごく悔しい結果になってしまったのは間違いない。
ただ、あくまでこれはPRESS参加の人間の話。
Summer Breezeはバンドと一般の参加者へのホスピタリティは世界基準で見てもかなり高めのフェスティバル。
その背景にはシャトルバス一つ、エリア内の水洗シャワーを使うにしても、必ずチケットを買って課金しなければいけないという面がある。
しっかりとした経済面での潤いが、そのままバンドやお客さんの過ごしやすさに直結していることは間違いない。
数多くのバンドが「Summer Breezeはベストだよ」という。それはそのホスピタリティの高さや安全性、そして運営や関係者のアーティストへのリスペクトの高さ故だろう。
来年のラインナップに日本から「花冷え」が決まっていることも発表された。
私が入れないあのバックステージの裏側には、彼女達を傷つけるものはないはずだ。そこは、日本で見守るファンの人たちには安心してほしいと思う。
・嫌な思いもしたけれど
いろんな事があったけれど、まず無事に帰国まで辿り着けた事に感謝。
そしてそんな中でも4日間やり抜き、限られた中ではあったけれどいろんな人達と会話をすることができた事が有意義だった。
そして帰国便を待つミュンヘンで、「最後くらい地域の名物食べてみよう」とバイエルン地方の白ソーセージを注文した時のことが私の今回のドイツの締めくくりとしてとても印象に残っている。
これを注文しようとカウンターに並んでいたら、男の人に横入りをされた。後ろにいたご夫婦が注意したけど、そもそもアジア人の前に割り込む事をなんとも思っていないようなそぶり。
まぁ、こんなもんか…と思いながら、一生懸命覚えたドイツ語に注文。
通じた!嬉しい!!とほくほくしながら席につき、いざチャレンジ。
しかし、お湯に浮かんだソーセージを取り出して、ナイフで切れ目を入れて皮をむいて食べる事しか知らない私。丁寧にナイフとフォークで裂け目を入れようとして苦戦。
「手伝おうか?」
さっきのドイツ人のご夫婦が声をかけてくれたのだ。
「いや、挑戦してみるよ」
そう笑顔で答えてフォークに力を入れると、ソーセージは思いっきり空中へ。
やっちゃった〜と思って拾うと、「貸してごらん、僕が一つやってみてもいい?」と現地の人の食べ方を実践して教えてくれた。
片方は手で押さえて、ナイフで二箇所に切れ込みを入れる。
あとはりんごの皮やじゃがいもをむくようにナイフを添えてくるりと回しながら皮を外す。
ここでは丁寧にナイフとフォークを使おうとする人物の方が滑稽に見えた事だろう。
けれど「甘めのマスタードをつけて食べるのがおすすめだよ」「良いフライトを」と優しく見守って話しかけてくれた。
「あなたたちのおかげで楽しく食べることができました、本当にありがとう。良い1日を!」
と手を振って別れた。
私も日本にいる時に日本食を食べている海外の人を見て「あっ食べ方間違えてる」「食べづらそうだな……」と感じることは時々ある。
「知らないんだろうな〜」と頑張って食べている海外の方がふと目に入ることもある。
ただ、私はご夫婦が話しかけてくれて嬉しかった。
笑い者にもされず、美味しい食べ方を教えてもらった。
それって、なかなか得られない貴重な経験なんだなって感じました。
自分も、もし日本食の食べ方を勘違いしている人や、困っている人がいたら、目を逸らしたり恥ずかしがったりせずに声をかけられる人間になりたいと心底思った。
私のモットーの一つである、
『やられて嬉しいことを人にする、やられて嫌だったことは絶対に誰かにしない』
そこのまた一つ、新しく勉強になったなと感じるような出来事でした。
ただ、、、来年はWacken Open Airに参加しようかな!!笑
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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