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Doepfer A-100備忘録(4)A-115 Audio Dividerの出力
今回はA-115 Audio Dividerについて、詳細な説明をします。
なお、A-115は2008年にversion up(V2)されていますが、本記事ではV1で動作の確認をしています。現行のV2では動作が違う可能性があります。
■2つのdivider: A-115とA-160-1
A-115 Audio Dividerは、周波数が高く可聴領域(オーディオレート)にあるシグナルをdivide(分周、分割)するモジュールです。前回説明したA-160-1 Clock Dividerもdividerですが、こちらは周波数の低いシグナルを処理してリズム等に使うことを想定しています。
ただ、この違いはあくまで「標準的な使い方の想定」であって、実際には両モジュールとも入力シグナルの周波数の高低にかかわらずdividerとして動作します。
マニュアル操作によるgate On/OffをA-115に入力しても動作する
オシレーターからの矩形波出力をA-160-1に入力しても動作する
一方で、A-115とA-160-1では分周のロジックに違いがあります。その他の違いも含めて以下に説明します。
■A-115の分周ロジック
A-115に矩形波を入力しF/2 + F/4の波形を見ると、下図のようになります。
(説明しやすい波形になるよう、F/2、 F/4のノブは調整しています)
![](https://assets.st-note.com/img/1699092288806-0CzdChVfS9.png?width=1200)
なぜこのような波形になるのか、説明したのが下図です。
![](https://assets.st-note.com/img/1699093310224-OxSd9X4rEV.png?width=1200)
この波形から、F/2、F/4の出力波形の立ち上がりタイミングは、入力した矩形波の立ち上がりタイミングと同時であることが分かります。図は示しませんが、 F/8、F/16の出力波形の立ち上がりタイミングも同様の仕様でした。
すなわち、A-115の分周ロジックは下図のようになっています。バイナリカウンタで分周するA-160-1とは異なるロジックとなっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1662388651611-jWRLBkGgMv.png?width=1200)
■A-115は分周後のシグナルをmixして出力する
A-115では、矩形波以外のシグナルを入力した場合、矩形波に変換した上で分周されます。またA-115は、入力シグナルと分周後のシグナル(F/2, F/4, F/8, F/16)をmixしたものを出力します(A-160-1は各分周結果を個別に出力する)。
ここで注意が必要なのは、入力シグナルは反転されてからmixされるという点です。
A-115にサイン波を入力し、Orig.とF/2をmixした場合の波形は下図のようになります。下段の波形で、曲線で表される部分が、Orig.ノブによりmixされたシグナルですが、入力したサイン波を反転したものであることがわかります。
![](https://assets.st-note.com/img/1699092066623-RZM803Ny3o.png?width=1200)
注)A-115 V2では、ジャンパの設定で、Orig.ノブでmixされるシグナルを「入力シグナルを矩形波に変換した後のシグナル」に変更することが可能です
■その他
オシロスコープで波形を見るとわかるのですが、Orig.の出力はプラス側にバイアスしていて、F/2 - F/16の出力はプラス側にバイアスしているようです。このこともあり、各ノブを動かした際の波形の変化が複雑で、狙った波形を作り出すのは難しいです。
例えば、全部のノブを10にしたからといって、その時の波形が最も複雑な形をしているとは限らない、等…
波形は気にせず、音を聞きながらノブを動かしてポイントを探る、という使い方が良いと思います。CVにも使えますが、狙ったCVを作るよりは、CVの予想外の変化を楽しむ方が向いていると思います。
■疑問
以下は、本記事を作成して生じた疑問&個人的考察です。
Q1) A-160-1 Clock Dividerの使用目的を考えると、その分周ロジックはA-115のものを採用した方が都合が良さそうだが、そうしなかったのはなぜか?
A1) この疑問への回答が、A-160-2 Clock/Trigger Divider II であるように思う。A-160-1は「Clock Divider」ではなく「Binary Counter」と命名していれば良かったのかも。
Q2) A-115のOrig.ノブでmixされるのが、入力シグナルそのままではなく、入力シグナルを反転させたものであるのはなぜか?
A2) 出力波形をより複雑なものにして、倍音を増やす効果を狙っているのかも?
Q3) Orig.やF2 - F/16の出力にバイアスがかかっているのはなぜか?
A3) これも、出力波形をより複雑なものにする目的?
なおA-115 V2では、ジャンパの設定で、出力をACカップルからDCカップルに変更することができる。
■まとめ
本記事がDoepfer A-115の活用につながれば幸いです。
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v1.0 : 2023/11/04 公開