『未婚の女』上演情報解禁
『未婚の女』の公演詳細が発表されました。2022年10月『オルレアンの少女』2023年4月『アンティゴネ』に続く、〈女性と戦争〉をテーマに掲げた深作組新ドイツ三部作の第三作目に当たります。日本初演となる『未婚の女』、ぜひ観にいらしてください。
*以下、本作品の内容を含みます。
最初に本作を紹介してくださったのは、シラーを主に研究している友人の丸山達也氏です。丸山氏による『未婚の女』初演(ロベルト・ボルクマン演出)の観劇記録は、2015年ベルリン演劇祭テアタートレッフェンの報告でお読みいただけます。
エーヴァルト・パルメツホーファー
1978年8月15日、オーバーエスターライヒ州リンツ生。オーストリアの劇作家。
2008年 テアターホイテの批評家へのアンケートで次代を担う新人作家に選出
2010年 『die unverheiratete 未婚の女』ミュールハイム劇作賞受賞
2014年 『die unverheiratete 未婚の女』ウィーン・ブルクテアターで初演
2015年 『die unverheiratete 未婚の女』ベルリン演劇祭に招聘
2020年 『Die Verlorenen』でミュールハイム演劇週間に招待
2020年 『Die Verlorenen』がテアターホイテの批評家アンケートで2020年の最優秀作品に選出
2019-20シーズンよりミュンヘン・レジデンツテアターでドラマトゥルクを務める。
あらすじ
登場人物
若い女 夏川椎菜
中年の女 サヘル・ローズ 宮村優子(Wキャスト)
老齢の女 山村美智
四姉妹 有川マコト 宮地大介 小田龍哉 神農直隆
原作の「登場人物」にはウルリケ30歳、イングリッド50歳、マリア90歳とあるが、劇中でマリアは「96歳」と自称する。
年表/参考資料
『未婚の女』の背景を知るために、年表と手に入れやすい資料をご紹介します。
年表
1889年 ヒトラー、オーストリア=ハンガリー帝国のオーバウスターライヒ州ブラウナウに生まれる。
1907年 ヒトラー、ウィーンの造形美術アカデミー受験、不合格
1908年 ヒトラー、ウィーンの造形美術アカデミー受験、不合格
1913年 ヒトラー、ミュンヘン移住
1914-18年 第一次世界大戦
1933年 ヒトラー、ドイツ国首相就任
1934年 ヒトラー、大統領ヒンデンブルグの死後全権掌握、総統となる
1938年 3月12日、ナチスドイツがウィーン侵攻
1938年 3月13日、オーストリア、ナチスドイツに併合
1945年 4月13日、ウィーン地区で戦闘が終了。赤軍が占領。
1945年 4月20日頃、マリア、ある兵士の脱走を密告。
1945年 4月30日、ベルリンでヒトラー自殺
1945年 5月7日、ランスのアメリカ司令部でヨードル将軍が調印し、
ドイツ国防軍の無条件降伏が決定。
1945年 5月8日23時、(ヨーロッパ戦勝記念日)に発行
1945年 その後、マリア、告発され有罪判決
1955年 5月15日、占領四カ国と条約を締結し、オーストリア独立
1955年 10月26日、オーストリアは永世中立を宣言
1957年頃 マリア、刑期(12年)を終える
おすすめ資料
・論文 :戦後初期オーストリアにおける 「アムネスティー(恩赦・忘却)政策」の展開(水野博子)
・『ポストモダニズムと歴史叙述』ヘイドン・ホワイト(吉田寛+立命館大学「物語と歴史研究会」訳)
・『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?(小野寺拓也, 田野大輔, 岩波ブックレット)
・『歴史と事実、ポストモダンの歴史学批判をこえて』(大戸千之, 京都大学学術出版会)
・『物語 オーストリアの歴史』(山之内克子, 中公新書)
・『ヒトラーの脱走兵』(對馬達雄, 中公新書)
・『ドイツ・ナショナリズム』(今野元, 中公新書)
・『ヒトラーのウィーン』(中島義道, ちくま文庫)
・ギリシア悲劇『エレクトラ』(ソポクレス、エウリピデス, 文庫版複数あり)
ほか参考資料
・ギリシア悲劇『アガメムノン』『供養する女たち』『オレステス』
・『戦後オーストリアにおける犠牲者ナショナリズム-戦争とナチズムの記憶をめぐって-』(水野博子, ミネルヴァ書房)
・『ポストモダンの条件』(ジャン=フランソワ・リオタール、, 小林康夫訳, 水星社)
・『歴史の概念について』(ヴァルター・ベンヤミン)
・『倫理、〈悪〉の意識についての試論』(アラン•バディウ, 長原豊、松本潤一郎訳, 河出書房新社)
・『他者の苦痛へのまなざし』(スーザン・ソンタグ, 北條文緒訳, みすず書房)
……など