#211映画鑑賞日記③
昨日はこちらの映画を観た。
ジェームズ・アイボリー監督作品はこれまで「眺めのいい部屋」と「日の名残り」を観たが、いずれも好きな作品だ。
こちらの作品も、当時の英国の階級社会がベースにあるが、他の二作品は映画を鑑賞したが、今回は主人公の姉妹の性格や言動に自身を投影してしまった。
二人ともいわゆる『オールドミス』(姉は後半結婚するが)であるところから、まあ共通しているが…
当時の英国社会のそれは、揶揄い以上の意味を持つ。もっとも、最近の日本ではあまり聞かなくなった言葉だが。
中流階級以上の女性が生きていく上での糧や安定した生活を得るには、結婚し誰かの妻になることが必須だった。特に、中流階級は相当盤石な資産がないと相応の生活の維持が難しかったようだ。
また、『オールドミス』ならではの視点や思考、行動がストーリーのメインだが、綺麗事の裏にある闇を無意識無自覚のうちに露見させて事件を起こす姉妹が面白い。しかも、この姉妹は学術芸術を愛する両親のもとに生まれ育ったため、女性でありながら進歩的知識人と「議論・討論」を楽しむ人々でもある。
この姉妹の言動と引き起こされる悲喜劇に、当初は、原作者が男性だから『オールドミス』の描き方が手厳しいか無理解によるものからきているのかと思ったが、第三者からすると『オールドミス』の言動は、そんなものなのかもしれないと気づき、ついには身に覚えを感じてしまった(全く僭越なことだけれど)。
ある時まで「独身だから苦労していない、常識がない」と、母からしょっちゅう言われてきたが、これを独り身の気楽さに嫉妬しているのだろうと思っていた(と同時にある種の傷を受けた)。が、この映画で“学のある『オールドミス』”の生態を客観的に観たことで、安定に努める家庭人には、やはり異端でしかないことが分かった。
割と若い頃から、折に触れ、恋人関係、結婚、家庭など大変なのに皆よくやるなぁと思っていたが、愛情もさることながら、世間の人はそれらがもたらす「安定(拠り所)」を必要としているのだった。
私は正当な異端であり、常識外れなのだった…
映画の感想からズレたが、ヘレナ・ボナム=カーターが素晴らしく良い!「眺めのいい部屋」同様、ご本人は無論のこと、彼女の姿が際立つような設定や演出に製作陣の愛情を感じる。
…映画の世界に浸るよりも人や人生、事象そのものを観察するようになったが、齢のせいか。