朝、目が覚めたら
朝、目が覚めたら隣に知り合いの女性が眠っていた。知り合いというか長年の付き合いのある見飽きた顔の女が。
不意に目を開けた時に至近距離で視線が合ったのでびっくりした顔をして起き上がったが、やがてやれやれと頭を掻きながら、呆れた眼差しをこちらに投げかけてきた。
頭はボサボサ。涙の跡が頬に残っている。惚けたようなまだ寝ているかのようなその眼差しはとろんとしていて、よく見ると、あちこちに赤い痕が残っていた。
『おはよう』
ベットの上にちょこんと座った女性の背後から、筋肉質な男性の腕がにょきっと現れて、お腹に回されたかと思うとあっという間に引き寄せられて、ベットの軋む音が部屋に響いた。
『・・・おはよう』
目の前にいたはずの寝乱れた女性が見えなくなって、替わりに昨夜自分の付けた赤い痕が付いた厚い胸板が視界を覆った。
『何をしてたんだい?』
彼が耳元で囁く。くすぐったくて逃げようと踠いたけど、抱きしめられた腕はきつく、でも優しくあたしに纏わりついていた。
『見てただけ、『あたし』を』
彼があたしを見下ろす様に上に移動したから、横を向いたらまた寝乱れた女性が困ったような表情をしているのが見えた。
『鏡なんか見てないで、俺を見て』
そう言われてあたしは鏡の中の自分から目を逸らして、彼の瞳を見つめ返した。