
もう猫なんか絶対に飼わない・・・。
「只今・・・!?」
一瞬「ニャ~!!」と声が聞こえたような気がしたのだが、そこにジャイの姿は無かった。いつも寝ているソファーの上には抜け毛が沢山ついていた。
ソファーを見つめ独り言を呟いた「ごめんね!具合が悪いのに外出して!」
涙が溢れてきた。
具合の悪いジャイを置いて二晩家を空けなくてはならなかった。姿の無いソファーを見て最悪の状況を想像した・・・。帰ったその日も、次の日も、そして次の日も・・・、帰って来なかった。思い出す度に胸が締め付けられた。
こんな思いをするなら「もう猫なんか絶対に飼わない」と誓ったのだった。
食欲がどんどん無くなって寝ていることが多くなった。辛うじて錬り状の餌を食べていたが、それも拒否するようになってしまったのだ・・・。
ただならぬ状況に慌てて動物病院に運んで診察を受けた。血液検査の結果・・・、「貧血ぎみ」という診断だった。赤血球につくウイルスが原因ではないか!?ということで抗生剤を処方してもらった。
食欲がないため薬を飲ませるのに苦労し何とか一日半薬を飲ませ続けたが、目に見えるような回復はなかった。その後福岡への仕事が入っていたため二日間家を空けなければならなかった。体調の回復を願って家を出たのであった。
「お母さん!猫を飼いたい!いいでしょ?」
「絶対にダメ!!あなた達は最後まで面倒見たことないじゃない!」
以前に兄が動物を飼いたいと言って飼い始めたが、そのうち飽きて放りっぱなしにしたのだった。その後の餌やりは母が代行するようになった経緯があったからだ。私たちの「責任の放棄」を繰り返したくなかった結果の回答だった。
子供の頃、母は動物を飼うことを極端に嫌がっていた。その当時は「母は動物が嫌いなんだ」と思っていたがそうではなく「動物を飼うことの責任」を私たちに訴えていたのだったということを思い出した。
動物は家族の一員。癒やしを与えてくれる愛おしい存在だが、生きている以上病気や怪我をすることもある。今回のジャイの病気では人と同じように困難に直面したときに寄り添っていく気概が必要なんだという事を思い知らされた出来事だった。
帰宅後の行方不明から三日後、やせ細ったジャイが帰って来た。生きていたのだった・・・、抱きしめた・・・、涙が溢れてきた。
痩せてはいたが餌も食べるまでに回復してきていた。その後も薬を継続して飲ませた結果、元気を取り戻し今も一緒に暮らしている。