酒粕のパフェ
わが町にあるアイスクリーム屋 MOMO icecream から酒粕のアイスクリームができたので一日だけ営業しますとSNSからお知らせが届いた。
ならば行かねばと。なんだかんだと最近は理由をつけては食べているなぁ。
酒粕のアイスクリームはもちろん初めてではない。何しろ花屋の店頭で酒粕をどれだけ販売したことか。そんなことから酒粕にまつわる物は結構食べてきた。苦手な酒粕が大好物になるほどなんだから、この経緯を話し始めたら…そうね、地球を一周しないとならないかしら。
それはさておき。
冬季休業中の中の特別営業というこの日は11時オープンだそう。私はテクテク歩きながらお昼を回った1時に訪ねた。
あれ?看板が出てない。まるで閉まっているかのようで、扉はもしかして開かないんじゃないかと期待抜きで引いてみるとガラガラと開いた。誰もいない?と思ったら
「あ、みえさん」
「やってますか?」
と思わず私。
「みえさんで丁度完売です」
「なんてラッキー」
「今完売のお知らせを出しますね」
作っているのを待つ間、他愛ない会話をしていると和装の60代と思しき男性と若い男性客が入ってきた。年頭の挨拶を済ませるとこの方々は予約してあるという。MOMO icecream に予約して訪れるとはかなりな常連さんだ。後からもう一人お着物の女性がやってきた。聞いた話では、この方が酒粕をここに贈ったお陰で私はこの美味しい酒粕のアイスクリームの恩恵に与ったということのようだ。
さてパフェがやってきた。
私で最後のパフェだ。心して戴かなければ。上に乗った栗が落ちそうになる。栗とそれを固定したクリームは前哨戦で、本題の酒粕の部分にスプーン投入。つべこべ言わずに食べなさい。
いやぁ、そうか。そうくるよね。酒粕なんだもの、この味です。鼻に抜ける酒粕の香り。こんなに美味しく酒粕を活かしたアイスクリームを今まで食べただろうか。そしてパフェの醍醐味は下に隠れたものとのコンビネーションだ。実は今日はそれも楽しみの一つだった。
酒粕のアイスクリームの下には栗きんとんのクリームに隣り町で作っている無農薬佐野川茶のアイスクリーム。北海道の有機黒豆に…ん?これはなんだろう?聞けば生姜糖寒天なんだそう。薄い拍子切みたいに入って良いアクセントになっている。そこに金柑の手づくりジャム、無農薬生姜でできたジンジャーミルクアイスクリーム、干し柿の洋酒漬けクリーム、地元西原の茶葉を使った雑穀ビスケットが一番底に入っている。
素晴らしい。
こういう組み合わせがなぜできるのだろう?実におもしろい。これぞセンスだし、日頃の遊び心がでるんだと思う。こういう発想ができる人がこの小さな町にいるんだから嬉しいし頼もしい。
それにしてもパフェが完売となってからも人は次々とやってきた。パリやニューヨークみたいに冬でも関係なくアイスクリームを食べる人がこの町に増えたらいいなぁ。そんな日も来そうな予感がしてちょっと嬉しい昼下がりだ。
帰り道、甲州街道を歩いていると上野原名物の永井酒饅頭店の前を通った。おじさんと目が合いこんにちはと軽く会釈をする。酒饅頭を買いに行くといつもオマケしてくれるおじさんだ。
酒饅頭に酒粕のアイスクリームか…。
お酒が飲めない私にはこういうお酒の愉しみ方があったんだなぁとつい可笑しくなった。
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