MUJIカフェでの怪
となりで
MUJIカフェでバランスのとれたご飯でも食べようと、長~いソファーベンチの真ん中辺りの席に予約席の立て札を置いた。
朝から人に会ったり、厄介な買い物で神経を使ったのでなんだかお腹が空いていた。とりあえず選べるデリセット4品で、ひじきの炊き込みご飯にした。
白身魚とえびのしんじょう、北海道のコロッケ、厚焼き卵、海苔のサラダ。
常温の水もトレーに乗せて席に着くと、なんだかホッとして、食べる前にすでにささやかな幸せがテーブルに用意され、おもわずニンマリ。
少し遅れて左隣りにも女性が座った。40歳くらい。シルバーの縁がキラリンと光るメガネを掛けていた。白いシャツにベージュのカーディガンで一見おとなしそうな感じの方。ちらりと見た次の瞬間、その女性はナプキンを大きく広げてふわりと天になびかせたのだ。なんだろうと目が再び隣りに注がれた。おもむろに4種類おかずの乗ったお皿の上にそれを被せた。
んんっ?なんで隠すの?
ちょっと不思議だな、と思いつつ、いただきますとこちらはお味噌汁から手を付けた。食べているとなんだかお隣りさんの仕草が気になる。というのも音がするのだ。ガサガサ、プラスチックの袋の音だ。何してるんだろうと再びチラ見。
え?
どして?
お味噌汁の上にはポケットティッシュが乗っかり、お水の上には除菌シートもそのまま乗っていた。ご飯のうえにも何か紙らしきものが乗っている。
あれ?食べないの?
摩訶不思議だ。
気になってこちらの食べる手がやたらとスローになってしまい、お腹ぺこぺこで前のめり気味に背筋を伸ばして食べていたのに、そこからはやたらと背もたれに寄りかかりながら、目だけが、お隣りへ注がれてしまう。いかん、いかん。失礼であるぞ。
でも
だって
気になるではないですか。
トレーに乗っているすべてのものには蓋がされた。いったいなんのため?
私はコロッケを箸で半分にしながら考えた。
う〜む、儀式だな。
なんのって?誰かに捧げるとか?さっぱりわからない。
ファスティング明けで、昨日までお粥だったとか。
訳あって1/3だけしか食べられなくて、見てしまうと全部食べたくなるから隠しているとか。
それにしても、なかなか食べないのはなぜだろう。
猫舌なら何も乗せない方が冷めやすいはず。
そうか、わかった。
コロナ禍で空気中のものが中に入らないようにしているとか?
とまあ、勝手に想像を巡らしながらのMUJIカフェでの昼下がり。
私が帰る頃にはめくって食べていたので、「ボナペティ」と心の中でつぶやいて去ったが、もやもやはとうとう解決されなかった。