個人的2022年下半期ベストアルバム
早いもので2022年も終わってしまうので、下半期よく聴いたアルバムを10枚選びました。(順不同) 6曲以下のEPは除いています。
THE 1975 / Being Funny In A Foreign Language
数々の世界的音楽フェスティバルのヘッドライナーを務めるなど、今がキャリア絶頂期とも言えるマンチェスターの4人組バンド、THE 1975の通算5作目、約2年半ぶりのアルバム。タイトルは "異文化・他者への理解"に由来している。
前作『Notes On A Conditional Form』(2020年)が全22曲, 81分という大作だったのに対し、今作の収録時間は11曲, 44分と前作の約半分。しかし内容は非常に濃密で、様々な表情の楽曲が緻密に並べられている。代名詞とも言えるタイトなカッティングギターが特徴的なM2「Happiness」、BTSやJustin Bieberのような世界基準のスケール感を期待させるM6「I'm In Love With You」が特に好き。バンド史上最高傑作と言っても過言ではない。
来年はTHE1975だけでなくArctic MonkeysやRed Hot Chili Peppers、Pavementも来日するそうで、中学時代から大学時代までの音楽遍歴を呼び起こすメモリアルな1年になりそうだな。(チケット代高くて怖気付いてる)
サニーデイ・サービス / DOKI DOKI
大傑作『いいね!』(2020)以来、2年半ぶり通算14枚目となるオリジナル・アルバム。悲しいニュースが続いた世界を優しく包み込むような、爽やかで風通しの良いアルバム。これだけのキャリアを重ねながら純粋なギターポップを作り続ける曽我部恵一の直向きな感性に、国内のインディーシーンで長年厚く支持されている理由がある気がする。
SuiseiNoboAz / GHOST IN THE MACHINE DRUM
日本のオルタナティブ・ロックバンド SuiseiNoboAzの1年8か月ぶりとなる新作は「機械と人間」「精神と肉体」という対比をテーマにしたコンセプト・アルバム。M1「GHOST」からM8「Y.O.M.I」に至るまでの流れが完璧。同じように繰り返される機械的な日々を、第三者的な視点で綴る歌詞が印象的。
笹倉慎介 / Little Bug
OLD DAYS TAILORのフロントマンであるSSW、笹倉慎介の1年2ヶ月ぶり4枚目となるフルアルバム。アンビエントやヒップホップ、エレクトロニカのビートを解釈し、日本語フォークとの融合を図った新しい音楽。安心して眠りたい夜はいつもこのアルバムを流していました。
スカート / SONGS
澤部渡のソロプロジェクト・スカートのメジャー4枚目となるアルバム。 2022年11月公開の映画『窓辺にて』主題歌の「窓辺にて」をはじめとする、これまでリリースされたタイアップ楽曲10曲(!)に加え、新録曲を含めた全13曲が収録。
ミツメ・トリプルファイヤーと共に ”東京インディー三銃士" を名乗っていたスカートも、気付けばメジャーで4枚ものアルバムをリリース。流行を大きく取り入れた音楽性でもビジュアルを全面に押し出すプロモーションでもなく、楽曲の良さで確実に評価されていることがとても良いと思った。
今作はメジャーアーティストらしくタイアップ楽曲が収録曲の大半を占めているが、アルバムとしてのまとまりを損ねることなく見事にそれらが馴染んでいる。再録されているM3「ODDTAXI」の新アレンジもかなり洗練されているので聴き比べてほしい。
七尾旅人 / Long Voyage
七尾旅人の4年ぶりのニューアルバム。前作『Stray Dogs』をきっかけに結成されたストレイ・バンド(Kan Sano、小川翔、Shingo Suzuki、山本達久)によるバンドサウンドを中心にしつつ、スタンダートジャズやソウル、ゴスペルなどのポップミュージックを軽快に横断し、あらゆる時空間を旅するかのような1枚。
時代や社会が抱える数々の深刻な問題をテーマにしたジャーナリズムと救済のアルバム。愛犬と手作りの筏に乗るアートワークもすごく良い。
踊ってばかりの国 / Paradise review
5人編成になってからの4年間で4枚というペースで新譜をリリースしている踊ってばかりの国の7曲入り最新EP。全曲がGOK SOUND(吉祥寺)のエンジニア、近藤祥昭によるオープンリールを用いたアナログレコーディングで録音されている。GOK SOUNDは学生時代よくお世話になった場所なのでどこか嬉しい気持ちになった。スタジオは今年の11月をもって店舗の営業終了を余儀なくされてしまったが、そこで生まれた音楽はいつまでも残るということに希望を持ち続けていきたい。
Rex Orange County / WHO CARES?
同世代から絶大な支持を集める新世代ポップ・シンガー Rex Orange Countyの、全米3位を獲得した『Pony』以来約2年ぶり4枚目となるオリジナルアルバム。オランダのミュージシャン Benny Singsとの共同制作による今作は、ストリングスを多用するなど、自身の新境地とも言える一枚。今年は彼に関する非常に残念なニュースもあり、失望したファンも少なくなかったが、彼の人格的な問題と創作物は切り離して考えるべきだと思うな。
沓名真由 / MOMENT
2020年に音楽活動を始め、配信リリースを中心に活動を続けてきた女性SSWの1stアルバム。最小限の楽器で構成された無駄のないシンプルなバンドサウンドは、1stアルバムながら既に洗練された印象を受ける。全曲を通して落合亮太 (Easycome) がギターを担当。淡くて儚い昭和歌謡的なメロディが心地良い。早くも次回作が楽しみ!
牧野ヨシ / GOOD FISHING
ラッキーオールドサンのサポートメンバーとしても活動する男性SSW 牧野ヨシの『野暮ったい服を着てどこへゆく』以来、実に7年ぶりとなる新作。今作は家主や台風クラブを擁するレーベル、NEW FOLKからのリリース。野暮ったく飾り気のない、生活感と温かみで溢れる日本語フォークロックの新たな名盤。
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