個人的2024年ベストアルバム
年の瀬ですね。今年リリースされた新譜でよく聴いていたものを10枚選びました。(順不同・6曲以下のEP除く)
claire rousay / sentiment
現在、米LAを拠点に活動するアーティスト・ミュージシャンで、エクスペリメンタル・ミュージック(実験音楽)やアンビエント・ミュージックの既成概念に挑戦することで知られているclaire rousay(クレア・ラウジー)が、米シカゴの老舗インディー・レーベルThrill Jcckeyに移籍し、機械的にエフェクトされたヴォーカルとギター演奏を大胆に取り入れた作品。
アンビエントミュージックにオートチューンで加工したボーカルを乗せるという、今までありそうで無かった発想が面白い。アルバムは男性の声でラウジーの詩を朗読する「4PM」から始まる。THE 1975の「Notes On A Conditional Form」(2020)を思い出した。部屋で作業する時や、寝る前によく聴いていた。
Clairo / Charm
前作『Sling』(2021)から3年ぶりの3枚目となるスタジオアルバム。ソフトロック、ジャズ、サイケデリック・フォーク、ソウルなど多彩なジャンルを融合した、70年代風の豊かなサウンドが特徴。恋愛初期のときめきや人間関係の儚さをテーマとし、表現者としても人としても成熟が進んだ様子が感じ取れる。”Pretty Girl” のMVが世界的にヒットしてからもう7年ですか、、
Haruomi Hosono / HOSONO HOUSE COVERS
細野晴臣の1973年の名作『HOSONO HOUSE』の発売50周年を記念して制作されたカバーアルバム。Mac DeMarco、Cornelius、矢野顕子、安部勇磨、mei ehara、Sam Gendel、John Carroll Kirby feat. The Mizuhara Sisters (Kiko & Yuka)、TOWA TEI、SE SO NEON(韓国)、rei harakamiなど、国内外の多彩なアーティストが参加し、それぞれの解釈で再構築。アルバムは全11曲を収録し、2024年11月6日にLPレコードとして発売された。
参加者のラインナップが豪華すぎる。近年リリースされた国内のトリビュートアルバムでは一番のクオリティかもれない。M7:『冬越え』(安部勇磨)が特に好き。同じく今年リリースされたソロアルバム『Hotel New Yuma』にも参加している優河のコーラスがとても良い役割を果たしている。
HONNE / OUCH
イギリス・ロンドン出身のエレクトロ・ポップ・デュオの3年ぶり4枚目のニューアルバム。(ちなみにユニット名は日本語の「本音」に由来している)90年代初期のヒップホップ・プロダクションから、トーチ・ソングやバラードを経由した洗練されたポップミュージックまで、あらゆる要素を含んだ創作意欲に溢れる作品。どこか初期のVampire Weekendみたいな雰囲気も感じられて好き。
Katy Kirby / Blue Raspberry
米国テキサス州スパイスウッド出身のシンガーソングライターの3年ぶり2枚目のアルバム。90年代インディーロックとモダンフォークを融合させた前作のサウンドを基盤とし、弦楽器やホーンを活用することで音楽に奥行きと温かみを加えている。M6『Drop Dead』が好きです。
MJ Lenderman / Manning Fireworks
米国ノースカロライナ州アッシュビル出身のシンガーソングライターであり、インディーロックバンド「Wednesday」のギタリストとしても活動しているMJ Lendermanの4枚目となるソロアルバム。前作『Boat Songs』(2022)で評価されたオルタナ・カントリー的手法とファジーなギターサウンドをさらに深化させた作品。全体を通して、おおらかで朴訥としたカントリー/フォークの要素と、鋭利で爆発的なオルタナティブ・ロックのエネルギーが巧妙に組み合わされている。乾いたギターと音と切ない歌声がとても良い。
Mone Kamishiraishi / kibi
上白石萌音の2年4ヶ月ぶりのオリジナルアルバム。ある1日の時間の流れの中にある様々な情景や感情の機微を表現した作品。水野良樹(いきものがかり、HIROBA)や大橋トリオ、角舘健悟(Yogee New Waves)、鈴木迅(Laura day romance)といった上白石が敬愛するアーティストが参加し、ウォームな手触りのポップスやジャズが鳴り響く。自身による作詞曲も5曲収録されている。
星野源、藤井風、TOMOO、上白石萌音など、こういう良質なポップスを世の中に広めてくれるアーティストが時代の最前線に居続けてくれ!と願う。
Saho Terao / しゅー・しゃいん
寺尾紗穂の11枚目のアルバムは日常に寄り添う温かさと繊細さを兼ね備えた作品。アルバムタイトルに込められた「靴磨き(シューシャイン)」のイメージが象徴するように、普段見過ごされがちな小さな輝きや、日々の営みの中に潜む感情を丁寧に掬い取っている。人生の一瞬一瞬に宿る美しさと儚さを讃えながらも、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエル・パレスチナ紛争など、いつもの日常と同時並行で起きている戦争や災害に対する深い内省も感じる。録音には伊賀航・あだち麗三郎・マヒトゥ・ザ・ピーポーなどのミュージシャンが参加している。
Satoko Shibata / Your Favorite Things
2年ぶり7枚目となる今作のアルバムは多彩な音楽性と独自の視点が融合した作品。ジャンルを横断する柔軟な音楽性と、日常生活や内面的な思索、ユーモアとシリアスが交錯する歌詞が魅力的。また、ネオ・ソウルやヒップホップ的な志向を、長年サポートしてきた岡田拓郎とのタッグにより更に解き放った作品でもある。
思いはいつか離れてしまうかもしれないが、好きなものはいつまでもそこに残る。そんな切なさ・みっともなさを思い出してどうしようもない気持ちになるのだけど、そんなことを歌にしてくれる柴田聡子が好きだ。
Still Woozy / Loveseat
米国出身のシンガーソングライター兼プロデューサーであるSven Gamskyのソロプロジェクト。ベッドルームポップ、インディー、R&B、エレクトロニカを融合した独自のサウンドが特徴で、甘いメロディとリラックスした雰囲気が魅力だが、Still Woozy名義で活動する前は「Feed Me Jack」というマスロックバンドを組んでいたようで、こちらもかなりイケている。
今作「Loveseat」は、Still Woozyの柔らかな感性が詰まった作品で、タイトルが示唆するように、親密でカジュアルな空間での感情や出来事をテーマにしており、恋愛、孤独、自己探求などが歌詞に込められている。Tahiti 80、Rex Orange County、Easy Life(現 hard life)に通ずるものがあってとても良い。
以上です。良いお年を!