「タイトル長すぎ!」が当たり前?──ラノベ的“文章タイトル”が生み出した新たな戦略
近年、ラノベ(ライトノベル)などを中心に、「タイトルが一文まるごと」という現象が当たり前になってきました。
たとえば、「異世界でチート能力を手にした俺が、現実世界でも無双して何やら美女にモテまくる件」みたいな長いもの。
一見すると「覚えられないよ!」と突っ込みたくなりますが、このスタイルにはちゃんと理屈があります。
タイトルの役割と現代の課題
タイトルは本来、作品の内容を示し、その作品を区別する「看板」のようなものです。
ところが、情報が増え続ける現代では、短いタイトルほど他の作品やサービスと被りやすくなり、検索しても違うものがヒットしてしまうリスクがあります。
また、SNS上でのファンコミュニケーションやエゴサ(自作品名でネット検索)を円滑に行うためには、被りにくい、ユニークなタイトルが有利なのです。
長いタイトルがユニークIDになる理由
では、長いタイトルは何がそんなに良いのでしょうか?
まず、長いと他とかぶりにくい。つまり、検索で「その長文タイトル」を入れれば、ほぼ確実にその作品がヒットします。こうして「ユニークな識別子」を確保できるわけです。
しかし、長いままだとSNSでの呼びやすさや、やり取りのしやすさには問題が生じます。そこで編み出されたのが「略称」という戦略です。
略称の画期性:無意味と有意味の両立
長いタイトルを略してしまえば、SNSでの発信やファン同士の会話も楽になります。
その略称は、しばしば意味を持たない短い文字列になることが多いのですが、実はそこに画期的なポイントがあります。
意味をなさない文字列は、ほぼ他と被らず、これ自体が一種のユニークな識別子になります。そして、その略称を見れば、すぐに「元の長いタイトル」を思い出せる。
つまり、略称は「無意味なはずなのに、その作品を即座に想起させる」という不思議な両面性を持っているのです。
たとえば、「転スラ」(「転生したらスライムだった件」)は、転スラ単体だと意味を持ちませんが、この略称を見るだけで「元の長文タイトルの作品」をすぐ思い浮かべることができます。これこそが、長いタイトルと略称の二刀流が成し得た斬新な仕組みなのです。
長いタイトルはわかりやすい――それは当たり前の利点
また、長いタイトルであるがゆえに、見た瞬間に作品の傾向が分かることも当たり前の恩恵として挙げられます。
短いタイトルでは「これはどんな話だろう?」と悩むところ、長文タイトルなら「異世界」「チート」「美女」などのキーワードが並んでいて、一瞬で作品の方向性が理解できます。
膨大な作品が並ぶ中で、初見の読者に作品内容をダイレクトに伝えるには、むしろ自然な解決策と言えるでしょう。
なぜ今、この流れが当たり前になったのか
このスタイルが広まった背景には、ネット環境の高度化や膨大な作品群が存在します。
かつてはシンプルなタイトルで注目を集めることが難しくなかったかもしれませんが、今や作品があふれ、検索性やSNSでの拡散性、エゴサでの発見しやすさが重視される時代。
そのため、長いタイトル+略称というセットが、自然と“最適解”になってきたのです。
まとめ
「長ったらしいタイトル」が主流になっているのは、一見奇妙に思えるかもしれません。
しかし、そこには「他作品との差別化」「検索しやすさ」「略称による独自のブランディング」など、しっかりした戦略が隠れています。
さらに、タイトルを見ただけで中身が分かることは、当たり前ながら便利な機能として読者に寄与します。
本来、タイトルとは作品の看板。
長文化と略称の組み合わせは、まさに「分かりやすさ」と「ユニークさ」を同時に実現する巧みな戦略なのです。