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【打線】#ベストソング2020

今年2020年に発表された曲で僕個人としてお気に入りの全13曲をピックアップして野球の打線風にまとめてみました。打順と守備位置は北海道日本ハムファイターズのポジションを参考にしています。

1(中) 青春の馬/日向坂46
2(遊) エメラルド/back number
3(指) 星影のエール/GReeeeN
4(一) 10月のプールに飛び込んだ/欅坂46
5(右) 灯ル祈リ/コブクロ
6(二) 裸の心/あいみょん
7(左) 花咲ク街/ゆず
8(三) The song of praise/Mr.Children
9(捕) パラボラ/Official髭男dism
(投)先発  Teenager Forever/King Gnu

中継ぎ Gravity/BUMP OF CHICKEN
中継ぎ 感電/米津玄師
抑え  SMILE〜晴れ渡る空のように〜/桑田佳祐


はじめに(どうでもいい事)

そもそも、僕は今年10月に書いた欅坂大辞典の記事をもってしばらく音楽評論的な感想文を書くという行為は終わりにしたいと思っていた。あれ以上のクオリティと膨大な量を兼ね備えた文章は今後絶対に書けないと思っていたし、自分の好きなことや趣味について発信していく分には日々のツイートで十分だと思っていたこともあった。Twitterでフォローさせていただいている方々の素晴らしすぎるSOUNDTRACKSの感想文や考察ツイート、また年末の風物詩の1つともいえる今年のベストソング特集やヒット曲の解説などを投稿されていることを目の当たりにして、自分もやってみたいけれど果たして今の自分にこんな素敵な記事を書けるだろうか?読んでくれる人がいるのか?など様々な不安な気持ちも相まってしばらく書き起こす気持ちにはなれなかった。

しかしこの文章を書き始めるに至ったきっかけでもある2020年12月6日当日、明け方に不思議な夢を見た。櫻坂46の推しメンである尾関梨香さんと僕が一緒に飲食店へ行くというあまりにもファンタジーすぎる内容だった。

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(まさにこんな感じ)

そこで彼女に言われた一言に、「もう少し頑張ってみる?」というものがあった。個人的な近況としては、卒論は大分落ち着いてきたし資格の勉強も比較的順調であり、特に悩み事など無い今の僕にとってはその発言が何を意味するのかも分からず、寝起き後はただその言葉だけが鮮烈に脳裏に焼き付いていた。

丁度この日は日曜日だった。北海道の日曜の朝は「相席食堂(芸人・千鳥によるバラエティ番組)」の再放送と「FFFFF(エフファイブ:北海道テレビ放送HTBにて放送されている北海道日本ハムファイターズの応援番組)」が放送されており、いつものようにこの2番組を観終わった後に何気なくシャワーを浴びている時だった。非常にリラックスしていたその時、静かに葬ろうとしていたあのアイデアがもう一度蘇ってきた。

"やっぱり欅坂大辞典に次ぐ新たな記事を書いて2020年を締めくくるのに相応しい作品を放出したい。このアカウントをここまで続けてきた意味みたいなものをしっかりと形にして残したい。"

夢の中でおぜちゃんに言われたあの言葉は僕の中に眠っていた中途半端な気持ちに対し、活を入れるものだった。ここで本格的に「SOUNDTRACKS」と「ベストソング2020」の2本の記事を同時進行で書き進め、同日リリース的な形で発表しよう!という構想が出来上がった。確かに今までに同じ方が同時に2本以上の記事を投稿しているパターンは滅多に見たことがないし、これは斬新で面白いかも!!と思い立ち、新しい可能星を求めて一気に書き上げた。

きっと読む人にとって記憶に残るような記事に仕上がったつもりです。ぜひ最後まで読んでいってください!



2020 -starting lineup-

1(中) 青春の馬/日向坂46

日本テレビ系ドラマ「DASADA」主題歌 、 TBSテレビ系「第6回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会予選会(プリンセス駅伝2020)」中継テーマソング

4thシングル「ソンナコトナイヨ」に収録されたカップリング曲。とは言ったもののカップリング曲感は全くない。表題曲と肩を並べる、いやそれ以上のポテンシャルがこの曲に秘められていると思う。あまりにも名曲過ぎる。変な言い方だけど、この先日向坂46は青春の馬を超えられる楽曲を生み出せるのか?ってくらいリズミカルに進むメロディーラインはこの上なくキャッチ―で秀逸だし、AメロでAm→G→F→C/E→Dm→C→Bm7-5とルート音が綺麗に下降していく展開はお見事だし、ライブでのパフォーマンスも圧巻。一切ケチをつける場所が見当たらない。イントロからBメロまでは常にCのキーで進むが、サビに入った途端3つ上がり、E♭に転調、さらにラスサビではもう半音上がり、最終的にはEにまで到達する。キーが上がっていく転調を積み重ね、増々疾走感を伴い高くなっていく展開は聴いていて非常に心地が良い。

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余談だがこのMV撮影場所はMr.Childrenの「Your Song」でもお馴染みのあのNTT日比谷ビルの屋上である。(「青春の馬」のMVはShort Ver.化に伴い、現在は公式YouTubeでこのシーンは観られなくなってしまった)

ひらがなけやき改め、日向坂46として新たなデビューを遂げたこのグループにとっての実質2年目以降の新たなビジョンを明確に示した一曲。この曲の颯爽と駆け抜けていくスピード感、爽やかな風貌、センターにおける守備範囲の広さと打率の高さは日ハムでいうところの西川遥輝そのもの。間違いなく2020年不動のリードオフマンであった。

The easy way has no meaning



2(遊) エメラルド/back number

TBS系日曜劇場「危険なビーナス」主題歌

こういうback numberも大好き。C♯mのコードを軸に展開していくダークかつ疾走感あふれるクールさが非常にカッコいい。曲の終盤ではキーが半音上がり、Dmの黒光りするサウンドが華麗にロックを彩る。2020年10月16日にミュージックステーションに出演した際に最新曲として本楽曲を披露したback numberであるが、ボーカルの清水依与吏さんはラスサビにてイントロから終始かき鳴らしていたテレキャスターを床に置き、マイクスタンドに手を添えて歌い上げるという貴重すぎる演出を披露しお茶の間を震撼させた。

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(ピンクペイズリーの奇抜でサイケデリックな柄が目を惹くテレキャスター。同じFender製のエレキギターとして、Mr.Childrenの桜井さんが愛用しているブルーフラワーのデザインに近いものを感じる。)

軽快なステップで展開するこの曲は得点圏の拡大を狙う二番かつ遊撃手"守備の華"感が強い。日ハムでいうところの平沼翔太及び中島卓也っぽさを感じる。

ちなみに余談であるが、サビの歌詞の"溢れたセリフさえ〜"のところをずっと"溢れ出すリフさえ〜"だとしばらく勘違いしていた

星を纏う君には誰も適わない




3(指) 星影のエール/GReeeeN

NHK連続テレビ小説「エール」主題歌

10年前から変わらないGReeeeNらしいポップでキャッチーなメロディーラインは相変わらず健在で聴く人にとって幸せをもたらしてくれる。今年は大切な人達と物理的に会うことを控えなければならないという期間がしばらく続いたが、そんな苦しい時期でも決して消えることはない仲間との繋がりや絆を歌った名曲である。

この曲がタイアップを担当したドラマ「エール」自体は観てなかったけど、楽曲が素晴らしすぎてYouTubeで何度も繰り返し聴いた。この動画の凄いところは、歌詞と同時にコードも記載されていること。公式の動画でこういう工夫が見られることは珍しいので、楽曲の理論的な分析を頻繁に行う自分にとっては非常にありがたい。キーがCなので、割とシンプルな構成なのかな?と思っていざ分析してみるとC♯dim7,D/F♯,Ddim7などまず普通のCキーの曲には見られないコードが多々登場し、かなりこだわり抜いた作曲となっている。口ずさみやすい旋律の印象とは相反してコードの豊富さと予測できない和音配置はもはや今でいうヒゲダン並み。ちなみに、リズムの取り方が6/8拍子なのでギターでのプレイは若干の弾きづらさがある。

とにかく本当にメロディーが良い。見る人、聴く人の心を奪っていく神業打撃技術ともいえる複雑なコード進行の中に見せるキャッチ―なメロディーラインは、パ・リーグ内で二季連続最高出塁率を記録した近藤健介並み。紛れもなく2020年の中軸を担う指名打者。傑作です。

愛する人よ 親愛なる人よ 星影に響くはエール



4(一) 10月のプールに飛び込んだ/欅坂46

ローソン『欅坂46×ローソンスピードくじ』キャンペーンソング
イオンカード『あなたらしさ・その先へ』篇CMソング
メチャカリ『Color Bomb』篇CMソング

今年2020年の主砲を務めるのは2019年末に発売されるはずだった欅坂46の幻の9thシングル表題曲。爽やかさ溢れるストリングスとバンドサウンド主体のポップチューン。今年10月7日に発売された欅坂46の集大成的ベストアルバム「永遠より長い一瞬 ~あの頃、確かに存在した私たち~」に未発表の新曲として収録、初めてフル音源化された。非シングルにしてローソン、イオンカード、メチャカリと大手3企業のcmタイアップをとるという異例の快挙を成し遂げ、昨年下半期はこれらのcmがテレビから流れていたこともありお茶の間では比較的浸透している曲であろう。

楽曲自体は欅坂46の最高傑作クラスで素晴らしい。もう本当に素晴らしい。この曲を聴くために自分は今まで欅坂を応援してきた、と言っても過言ではないくらいの名曲。なんと言っても美しすぎるピアノの音色とメロディー。暴力的な美メロの透明感。イントロは綺麗なピアノの音色から始まり、次第に豪勢なストリングスが絡み始め壮麗さを増してゆく。Aメロはエレキギターのアルペジオから構成される上品な展開にうっとりするし、BメロはⅣ→Ⅴ→Ⅰ(D♯→F→A♯)の3コードで安定させ、しっかりと落ち着つかせる。サビはいきなりトニックⅠでガツンとぶつけに行くんじゃなくてあえて穏やかなサブドミナントⅣ(D♯M7)の響きで柔らかくアプローチ。しかもここで聴くべきポイントなのはサビの出だしが"ターンタータ・ターンタータ"のリズム(通称・ミスチル譜割 by杉山勝彦談)になっていること。このリズムに乗せて、あまりガンガン行かない柔らかなサブドミナントⅣの和音をサビの頭に持ってくることで何が起こるかというと、非常にキャッチ―で耳に残りやすい旋律と化すのである。実際にMr.Childrenのシングル曲「innocent world」「Any」でも全く同じ手法が活用されており、常にリスナーを聴き飽きさせることなく加速感を維持しつつスムーズに旋律を紡ぐことができる。

この曲の歌詞の凄いところは、欅坂46の3rdシングル「二人セゾン」で"移り変わる春夏秋冬の景色の美しさ"や"共に過ごした季節の中で感じた人生観"を歌っていたのに対し、"季節なんか関係ないのが僕の生き方だ"と言い切っちゃっているところ。4年の月日を経てある意味成長を遂げた主人公"僕"のスタンスに非常に感動してしまった。また、以前までの欅坂46の楽曲の主人公は組織の中で浮いた存在で孤独を選んだり、"僕"にとっての邪魔者は排除したり、目の前の悩みをガラスに見立てそれらを破壊していくなど、多くの強気な過激派反抗行動が描かれてきた。しかし今作はただ"寒い10月のプールに飛び込み水飛沫を上げる"だけなのだ。とにかく"自由"を強く主張し"周囲の環境に合わせない自分の行動を肯定"している。今までとは若干角度を変えた欅坂的アゲインスト精神が垣間見える一曲となっている。曲をどこで切り取っても全部聴きどころ。

四番という主砲ポジションを担う本楽曲、僕の心に対する打点は間違いなく今年トップの成績であった。

(「欅坂大辞典」より一部転載後加筆)

季節なんか関係ないのが僕の生き方だ



5(右) 灯ル祈リ/コブクロ

カンテレ・フジテレビ系 火9ドラマ「DIVER-特殊潜入班-」主題歌

凄まじい熱量を感じられる強くて優しい歌。小渕さんが紡ぎ出す繊細なメロディーと骨太サウンドのレスポール、黒田さんの圧倒的歌唱力。もうこれに尽きる。このパワフルさは中田翔に次ぐ安定した長打を武器にしている五番、まさに大田泰示のようだ。自分は初めて今作をもってリアルタイムでコブクロのシングルを購入した。これは絶対に買わざるを得ない!と思ったし、コブクロがこの曲をもって出演した音楽番組は必ず録画していた。Mr.Childrenの「GIFT」でいう、"降り注ぐ光があってだからこそ日陰もあって その全てが意味を持って互いを讃えている"というメッセージ性にもリンクするかのような、世の中の二面性を描いた傑作である。この歌を聴くと、絶対にこの世の中に必要の無い人はいないし必ず全ての物事には意味があって成り立っているのだと、強く思い知らされる。

また、本作を語る上で絶対に欠かせないこととして極めて高度な転調技術が挙げられる。イントロからAメロにかけてはDやE、F♯mのコードを配置させたA(=並行調:F♯m)がキーであるが、Bメロでは一変して3つ上がり、F、G、Amのコードを取り入れたCキー(=並行調:Am)となる。そのBメロ最後の"凌げない~"の後に鳴らされる音はCキーのⅢコードであるEが上手くサビのキーAのⅤ(ドミナント)コードEと一致し、見事な回帰を果たす。このようにサビは再びイントロ・Aメロと同じAキーに戻るのである。かと思いきや、サビが終わった直後はAm→F→C→Gのコード進行が現れまたまたCキーに転調する。もちろん、その後に続いてゆく2番Aメロは1番と同様にAキーである。特筆すべきは、やはりラストの壮大な和音の畳みかけである。"共に生きる魂を捧げよう"という雄大な叫びによってこの歌は大団円を迎えるが、この部分のコード進行はF→G→G♯→A♯→Cとルート音をFから最終コードCに向けて上昇させている。サビのキーはAだったのに対し、気付けば終盤ではいつの間にか三度上のCに転調して曲を終えているのが本当にお見事。

AとCの3度関係を上手く交互に引っ繰り返しながら一つの音楽を進めていくという展開はまさにこの楽曲で主張している"表と裏"、"陰と陽"、あらゆる森羅万象が全て互いを讃えあって存在しているというこの世の真理に基づいた表現であると感じた。

本楽曲カップリング曲の「Lullaby」も最高のバラード作品であり、小渕さん自身も大好きな曲だと大絶賛している。

生きる意味を叫べ ひび割れ切った時代の影に



6(二) 裸の心/あいみょん

TBS系 火曜ドラマ「私の家政夫ナギサさん」主題歌

ピアノ主体の最上級品の感動バラード。もうたまらなくメロディーが良い。このしっとりと穏やかに奏でられるピアノのイントロで既にもう再生を停止してもいいと思ってしまうくらい聴きごたえのある歌の出だしは感動的。いつもはギターを弾きながら歌うあいみょんが手ぶらで丁寧に本楽曲を歌い上げる姿は今年何度もテレビで見かけた。切なくも暖かいハーモニカの音がより丁寧にこの曲を彩る。誰が聴いてもラブソングなんだけど、歌詞に"君"とか"あなた"っていう対象の相手が一言も登場しないのが恋愛を歌った歌にしては新しいアプローチだと思う。ただただ"私"が抱えている一途な気持ちだけが綺麗に明確に映し出されている。

本楽曲のキーはG♯である。同じ調でバラードの歌は他にスピッツの楓とかヒゲダンのPretenderとかアンジェラ・アキの手紙とか欅坂の二人セゾンとかがトップに挙げられるけど、そのアーティストにとっての代表曲ポジションになり得る素晴らしい名曲しか出来上がらない気がする。この楽曲の最大のポイントは、サビの最後"抱えて~"の直後にG♯→G♯sus4→G♯というトニックのsus4を活かした優しく包み込む、メロ締めの安定感を加えていること。

元乃木坂46の若月佑美さんが出演し、あいみょんの新曲が主題歌を担当するという2つの理由で僕は「私の家政夫ナギサさん」を観ていたが、全く先の展開が読めない、上手く作りこまれていた本当に素敵なラブコメディであった。キャラクター設定、ストーリー展開、主題歌含めて傑作。「裸の心」に描かれている主人公の真っ直ぐな思いは多部未華子演じるメイと大森南朋演じるナギサさんの心情と照らし合わせて聴いてしまう。

ただ想いを今、私 伝えに行くから



7(左) 花咲ク街/ゆず

伊藤園「お~いお茶(2020年日本の春)篇」CMソング  

アルバム「YUZUTOWN」のリード曲。「桜会」の再来か?とも言うべき、日本らしい風情溢れる和風ポップス。琴や篠笛といった和楽器の音を取り入れたイントロから既に"日本らしさ"を感じる。もちろんメロディーラインはいつものゆずらしい、穏やかで優しい極上のハーモニーが光っている。このMVは歌詞にある"巡る季節また広がる"の通り、メンバーの背景に大きな樹木を配置し様々な季節の移り変わりを感じられるという合成映像に仕上がっている。また悠仁のBmのコードの押さえ方が簡略化(Fの握るような押さえ方を2フレットに取り入れたもの)が見られたりしてそういった細かい仕草にもときめいてしまう。

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(悠仁のシェイクハンド型Bm簡略化)

ちなみに「YUZUTOWN」の発売日がMr.Childrenの「Birthday/君と重ねたモノローグ」と同じ2020年3月4日なのは両グループとも古くからのファンである自分にとっては非常に嬉しいことであった。

サビの一行目"花咲ク街~"はG→Dと始まってゆくが、二行目の"悲しみやがて~"ではメロディーは同じものの、Em→Bmと、最初のGとDのそれぞれ並行調マイナーコードを使用し、若干異なる響きを見せる。そして、サビの締め"満開の笑み~"の部分をトニックGコードに向けて全音ずつ上昇していくコード進行Ⅴ♯→Ⅵ♯→Ⅰ(E♭→F→G)も特徴的で、独特の春らしい浮ついた心模様というか期待と不安溢れる覚束ない心情を映し出しているかのよう。その一方で、ラスサビで一度だけ歌われる"桃色の頬~"のフレーズにはⅡ→Ⅴ→Ⅰ(Bm→E→A(全音転調しているのでキーはAになっている))という王道な手法がとられており、"満開の笑み~"のトニックⅠへの誘導とは若干異なっている。全く同じメロディーにも関わらず、そこで鳴らされているコードが違うというフレーズが多々見られ、高い作曲テクニックが感じられる。

この曲がお~いお茶のCMソングとしてお茶の間から流れ始めた頃はまさに東京オリンピックを約半年後に控えた華々しい2020年の開始を予感させるオープニングとも言える時期。しかし現実に待ち受けていたのは現在もなお収拾の兆しを見せない未曽有のパンデミックの第一波の始まりであった。希望に満ち溢れていたはずの輝かしい未来が見えない時期にこの曲がテレビから流れていた印象が強く残っており、この曲を聴く度に早く世界中に春が訪れて欲しいと願うばかりである。

季節の変化を明確に感じられる日本特有の、和の国ならではの四季を巧みに描いた最高のJ-POPだと思う。

きっと誰のこころも花開く日は来るんだ



8(三) The song of praise/Mr.Children

(日本テレビ系朝の情報番組「ZIP!」新テーマ曲)  

爽やかで清々しくて優しくてポップで熱いアグレッシブな応援歌。僕がSOUNDTRACKSの中で間違いなく一番好きな曲。2020年の春、ZIP!のテーマソングにミスチルの新曲が起用されると知った時に大歓喜したし、実際解禁された一部パートを聴くだけでもこれは凄い名曲きたぞ...!!と確信した。昔から我が家の朝の情報番組は日本テレビ系で、小学校まではズームイン、中学に入学した年にZIPにリニューアルされ、それ以来もずっとZIPを観ながら朝食をとり学校の準備をし、登校するのがルーティンだった。そんな自分にとってこのニュースは感無量であった。2020年11月25日(水)に日本テレビ系音楽番組「ベストアーティスト2020」には彼らMr.Childrenがこの曲をもって約5年ぶりとなるテレビ出演を果たしたことが非常に話題となった。本楽曲で桜井さんは「DANCING SHOES」「Birthday」と同様に赤く煌めくボディが目を惹くGibsonのJ-45を使用し、熱くかき鳴らしていた。二番Aメロの"未来の可能性"のフレーズを"すこしの可能性"とオリジナルの歌詞とは変更して歌っていたことも記憶に新しい。

この曲のまず素晴らしいポイントが出だしの田原さんのセミアコによる爽やかすぎるジャカジャーンのE♭のコード。前曲othersの贅沢なオーケストラによる長いアウトロの余韻にまだまだ浸っていたい所ではあるが、突然鳴り響くこの音に胸を打たれる。まだまだ人生は終わらない、みんながみんな役割を持って生きているんだ、というこの曲自身のメッセージとも受け取れるように若干の曲間を設けながらアルバムは続いていく。これはサザンオールスターズの「世に万葉の花が咲くなり」の序盤における「BOON BOON BOON ~OUR LOVE[MEDLEY]」~「GUITAR MAN'S RAG (君に奏でるギター)」というカオティックな2曲が終わった後に突如鳴り響く、「せつない胸に風が吹いてた」の優しくキャッチ―なあのイントロにも通じるスーパー・カタルシスである。この曲自体のさらに面白い構成だと感じる点が、イントロもアウトロも間奏もなく常に絶え間なく桜井さんの歌声が入っていること。普通ならインストゥルメンタルだけで奏でられる箇所、言うなれば各楽器が出しゃばりたいパート、例えば箒星や幻聴のイントロならドラムを核に表現するとか、innocent worldでいう間奏でベースソロ・ギターソロを全面に押し出したいという見せ方があるはずだ。この歌で見られるのは楽器はまさにボーカルの声を称賛(=praise)しているような音作り。バンドのバランス感が非常に良い。楽器の音は緩やかに流れつつ、だけどそこに乗せる歌詞とボーカルの歌声は熱い。これこそがMr.Childrenらしい歌(=The song)なのかなと思わされる。その中でも一番聴きごたえのある場所が、二番サビ終わりの"景色を讃えて~↓"の語尾、掠れ気味にフォールしていく箇所の歌い方。声の出し方がなんとなく昔っぽい気がして非常に大好き。この曲の歌い方は全体的に若々しくて元気な印象。メロディー展開が個人的には一番大好きで、Aメロの最後"見上げて過ごした〜"が高いトーンに持って行くのに対し、それに続くサビ出だし"駅ビルの〜"からは低く丁寧に歌われる。今までのMr.Childrenの楽曲ならサビ前メロで高く持って行ってサビでさらに高いキーに持っていき爆発するという強い曲のインパクトを与えるのが通例であった。そうではない、ギャップにも衝撃を受け心を惹かれた。サビの締めはTHE・ミスチルらしくドミナントを分数コードにするG→G/A→D(1カポ)の進行を取り入れ、収まりはかなり安定している。また、"輝かせていけるんだ"を「輝かしていけんだ」と歌ったり、"毛頭〜ない"の文学的で巧みな歌詞表現や、"〜してんだよ"など話し言葉のように歌ったり強烈な桜井節が見られるのも特徴。

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来年からは新社会人として生きていく自分にとっては、Wow~の熱いシャウトで背中を押されながら出勤したいと願うばかり。このタイアップは長年続いてほしい。

(【徹底解析】Mr.Children「SOUNDTRACKS」より転載後一部加筆)

ここにある景色を讃えたい




9(捕) パラボラ/Official髭男dism

アサヒ飲料「カルピスウォーター」CMソング  

超名曲。まさに"J-POP界の若き主人公"とも言うべきOfficial髭男dismによる王道ポップス。昨年2019年はPretenderで始まり宿命が大ヒットしアルバムTravelerがバカ売れし、今年2020年に入ってからはドラマ「恋は続くよどこまでも」の主題歌としてまたもやヒットしたI LOVE…がリリースされ、絶え間なく日本中に流行歌を届けてくれたヒゲダンによる快進撃はまだまだ留まることを知らなかった。これからも絶対にこのバンドについていこう!と確信した。雪が解けて気温も上がり、新年度がさぁ始まろうとしていた時にリリースされた本楽曲は聴く人の新しい生活を讃えるのに相応しい応援歌となった。

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ジャケットに描かれているパラボラアンテナが由来のこの題名通り、未来に向かって眩い光を放出しながら夢や理想像を追いかけていこうと前向きに歌われている。特に個人的には聴く度にコロナ禍にぶち当たった就職活動期間中のことを思い出すし、何とか現状のストレスを解消しながら生きていきたい、そして自粛期間中に増えた体重を落とそうと思って本格的にランニングを始めた時期の思い出とともにある。本楽曲とゆずの「そのときには」をリピートしながら駆け抜けたあの今年の4月、5月のことは絶対に忘れられない。

二番サビの鼻歌とララルラの押韻はお見事。天晴。

そして、キーがB♭の曲のイントロの打率の高さは異常だということを改めて証明してくれた一曲でもある。Mr.ChildrenのOver,Any、スピッツのシロクマ、乃木坂46の羽根の記憶、世界中の隣人よ、欅坂46の10月のプールに飛び込んだ、back numberの水平線、秦基博のひまわりの約束等(他にもたくさんあるけど思い出せるのはこのくらい...)。このイントロの強さは初球でスリーベースヒット打つみたいなもん。B♭(シ♭),D(レ),F(ファ)の3音から構成されるB♭コードを軸に展開していくこれらの曲は、日本人の心の琴線に触れる音階を持っていると思う。このB♭のコードの響きを聴くと夕暮れ時の紅く染まった空が見えるのは自分だけだろうか。

本楽曲は4月にシングル配信されたが、8月にHELLO EP発売に伴って初めてCD化された。当EPは「HELLO」を表題曲に携えた楽曲集であるが既に配信リリースされていた「パラボラ」と「Laughter」、デビュー前から存在されていたとされる「夏模様の猫」の計4曲を円盤化収録し、どれも違ったベクトルを向いた新たなヒゲダンの可能性を感じた名盤に仕上がった。今年の8月は本作EPと同日発売の米津玄師の「STRAY SHEEP」を何度も繰り返し聴いていた。

遥か先をゆくどっかの僕が迷わないように眩い光放ってみせるよ



(投)先発  Teenager Forever/King Gnu

SONY ワイヤレスヘッドホン/ウォークマン CMソング 

2020年上半期にて大ヒットを飛ばした名盤「CEREMONY」に収録されたリード曲。もう今年数え切れないくらい耳にしたこの曲。カオスな音作りでKing Gnuらしいミクスチャーロックの極みであり、所々アコースティックで爽やかな疾走感溢れるロックなナンバー。十代のような無邪気さや若々しい勢いを常に持って人生を歩んで行こうよという歌詞はきっと全人類全年代の人間が共感するであろう。

アップテンポなKing Gnuの曲の"球団の絶対的なエース感"、というか"安定の先発ピッチャー感"は異常。そして(捕)ヒゲダンとの安定感抜群な強固なバッテリーね。これは有原と宇佐見を彷彿とさせる最強ペア(ホークスでいうところの千賀と甲斐キャノンか?)。平成のロックバンドにおけるバッテリーが(投)ミスチルと(捕)スピッツなら、令和の邦楽シーンにおける絶対的なバッテリーは当面の間は(投)King Gnuと(捕)Official髭男dismが担っていくことであろう。

Aメロや間奏のTeenager Forever...の部分で常に鳴り響くコード進行は、トニックのFから始まり→Gm→Am→A♯dim→Bm-5→C→C♯dim→と常にルート音を上昇させ最後はトニックFの並行調であるDmへ到達する。ここまで10フレット分の移動であり、一般的なJ-POPにはまず見られない強烈な展開が繰り広げられている。この異常とも言える曲進行は、まるで"いくら歳を重ねても遊び心を持って人生を楽しもう"といったメッセージ性すら感じさせる。

Teenager Forever



中継ぎ Gravity/BUMP OF CHICKEN

アニメーション映画「思い、思われ、ふり、ふられ」主題歌

中継ぎ1号は今年秋に発売されたバンプのロッカバラード。序盤は静かに綺麗に響かせていくが曲の経過に従い徐々に盛り上がっていくロックな展開が美しい。"美しいロック"という言葉はBUMP OF CHICKENの音楽を表現する為にあるのかもしれない。

建築学科所属の僕個人として気になったフレーズの1つに、「給水塔の下 あれは蝙蝠」がある。この「給水塔」とは塔に貯水した水を塔の高さと重力を利用して住宅へ水を送るという設備であるが、このシステムを人間の心理に例えてタイトルの「Gravity」と結びつけているんじゃないかと勝手に推測してる。"君"に自然と惹かれていく"僕"の心情を、絶対に逆らうことの出来ない「重力=Gravity」に例えていると解釈できる。

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(MVの最初と最後に映るコレも給水塔に見えてきた。)

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(例:東山給水塔。)

(現在、建築の給水方式の進化に伴い給水塔はあまり見られなくなってしまったが昭和の産物として廃墟マニアのような方々からは人気があるらしい。)

この曲はYouTubeでアップされたにも関わらずiTunesでダウンロードするレベルでハマった。自分がバンプの曲をリアルタイムで購入したのってこれが初めてだったかもしれない。

また明日の中に 君がいますように



中継ぎ 感電/米津玄師

TBS系 金曜ドラマ「MIU404」主題歌

中継ぎ2号。150万枚売ったと言われている2020年史上最高規模の売り上げを誇る米津玄師の大名盤「STRAY SHEEP」に収録された新曲。マイナーキーに乗せ、ほとんどのコードが7thというブルージーな空気感を漂わせるアップテンポなロックチューンである。

この全体的なコード進行やCメロの変拍子が織りなす曲線美はまるで今年パ・リーグにて最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得したソフトバンクのモイネロが繰り出すあの強烈なカーブのよう(日ハムの中継ぎはいい例えが思いつきませんでした)。

稲妻の様に生きていたいだけ



抑え  SMILE〜晴れ渡る空のように〜/桑田佳祐

民放共同企画「一緒にやろう」プロジェクト 応援ソング

頑張る全ての人を讃えるダイナミックな応援歌。国家に次ぐ我が国の主題歌と言ってもいいくらいの名曲かもしれない。2020年夏の東京オリンピックに向けて日本が一つになって動き出そうという壮大なプロジェクトのテーマソングを担ったのは桑田佳祐氏。民放放送局5系列(日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビ、TBS、テレビ東京)で流れる音楽を作り、全国へ発信するという大役は全国どこを探しても国民的超一流歌手である彼にしか務まらなかったことであろう。さすが桑田さんならではの非常に口ずさみやすくキャッチ―なメロディーは、曲を彩るシンセサイザーやエレキギターの音との相性が抜群に良い。そして、歌詞も聴く人の背中をそっと押してくれる。夢を追うことや努力することというのは必ず自分自身と向き合わなければならないことであり、それには必ず物理的にも精神的にも"孤独"というものが付きまとう。今まで勉強にしてもスポーツにしてもバイトにしてもゼミの活動にしても、素直にやればやるほど必ず馬鹿にされてきた自分の経験上、やっぱり嘲笑う奴を無視してやるべきことを全うして自分に磨きをかける行為こそが個の成長に繋がっていくのではないかと思う。まさにサビの頭フレーズ、"栄光に満ちた孤独なHERO"がそれを物語っている。努力し続ける人へ向けたエールという点では、コブクロの小渕健太郎さんが自身の「虹」という楽曲を制作した際、"必死で頑張っている人は自分が輝いていることに気付かないくらい輝いている"という言葉を残していたことをふと思い出した。

やっぱり音楽が持つ心理刺激作用には魔法のようなものを感じるし、応援歌の力は改めて凄いなと思わされる。

本楽曲の圧倒的クローザー感は来期には抑えとしてメインで活躍の意欲を見せる北のベテラン守護神・宮西尚生を感じさせ、聴く人の心へ向けた安定したピッチングを見せる。

栄光に満ちた孤独なHERO 夢追う人達の歌



最後に

以上が僕が今年出逢ったお気に入りの曲紹介でした。ファイターズの守備ポジションとなぞらえて各楽曲の特性と重ね合わせた打順配置は我ながら上手く表現できたと思います。例えば、キャッチーな曲を生み出し続けいつまでも聴いた人の心を掴んで離さない曲を作り続けたいというOfficial髭男dismの音楽業界に対する前向きな心意気は、ゲームのリードを執る的確な合図を投手に送りどんな球でも絶対に取ってみせるという勇猛な姿勢を保つキャッチャーそのものだったし、King Gnuが不動のエースだとしたらそのバッテリーを組むのは間違いなくヒゲダンだと思う。投手と捕手、互いに役割や身体の動かし方は違えどチームを先導していく姿を、音楽性は異なるものの令和の邦楽シーンを引っ張っていくバンドとしてこの両バンドを重ね合わせてしまった。他にも青春の馬をトップバッターにしたり中軸に王道ポップスをもってきたこと、アベレージの高い曲たちを下位打線に配置できたこととか、全部ひっくるめてどこを切り取っても強い流れを生み出せた。この名曲打線なら無敵の若鷹軍団こと福岡ソフトバンクホークスにも圧勝できます(断言)。

(おまけ)二軍 2020 -farm starting lineup-

1(捕) I LOVE…/Official髭男dism
2(遊) 公私混同/ゆず
3(指) Birthday/Mr.Children
4(三) Nobody’s fault/櫻坂46
5(右) smile/Twenty★Twenty
6(中) 水平線/back number
7(一) カイト/嵐
8(左) silent/SEKAI NO OWARI
9(二) 世界中の隣人よ/乃木坂46
(投)先発  千両役者/King Gnu

中継ぎ 猫ちぐら/スピッツ
抑え  ただがむしゃらに/日向坂46


I LOVEの一番捕手・郡拓也っぽさと公私混同のショート感、中軸の堅さ、猫ちぐらの2軍中継ぎ感は上手く表現できているかなと()


同時投稿の「【徹底解析】Mr.Children「SOUNDTRACKS」」も是非よろしくお願いします!


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