人工股関節全置換術後の痛みに対するアプローチ①
①人工股関節全置換術後の股関節外側部の痛みに対するアプローチ
人工股関節全置換術は、主に変形性股関節症に対して行われます。寛骨臼と大腿骨頭の両方が置換され、術式は前方系と後方系があります。人工関節置換術の基本知識については、以下の文献を参考にして頂ければと思います。
人工関節置換術の基本的知識ー有効なリハビリテーションのためにーhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/54/9/54_698/_pdf
人工股関節置換術後の理学療法アプローチの際には、手術の侵襲部の痛みについて考える必要があります。ここでは、前外側アプローチの手術後に大腿外側部に痛みを訴えるケースについて、お話ししようと思います。
キーワードは、手術部の伸張ストレスとします。
前外側アプローチは、大腿筋膜張筋と中殿筋の筋間から侵入していきます。ですので、同部位に伸張ストレスが加わってしますと痛みが発生します。
では、どのような状況で伸張ストレスがかかるのか、考えてみたいと思います。
一つ目は、同側の股関節内転筋の過緊張です。股関節の内転は、外転筋を伸張させますので、痛みの原因となり得ます。
二つ目は、大殿筋、大腿筋膜張筋、外側広筋の筋張力です。大殿筋と外側広筋は、大腿筋膜張筋と筋連結があるため、これらの筋の筋張力が術部への伸張ストレスとなる。
以上のように、手術後は、股関節周囲の筋緊張バランスが痛みの発生に影響してきます。
また、術後は相対的に内旋作用のある大腿筋膜張筋、中殿筋前部線維、小殿筋前部線維のスティッフネスが高いことが多いため、拮抗する股関節外旋筋の出力が低下していることがあります。
歩行動作においては、中殿筋の機能低下により、大腿筋膜張筋の過剰収縮がある場合があります。
筋緊張は、普段のベッド上の臥位姿勢から立位姿勢、動作などの影響を受けますので、姿勢・動作の評価が必要です。
また、理学療法介入にあたっては、ただ筋緊張の高いところを落とすだけでなく、なぜ筋緊張が高くなっているかを評価した上でのアプローチが必要となります。
このケースでの理学療法介入を、以下に挙げたいと思います。
・姿勢・動作の改善
・ポジショニング
・リラクゼーション
・筋緊張バランスの調整
・股関節の安定に関わる筋出力の促通
・股関節周囲筋の筋力向上
・体幹の安定性向上
(参考文献)
・理学療法プログラムデザインⅢ 運動器下肢編.文光堂.