運動学習(KR)
ここでは、KRを中心に、運動学習について説明します。
(用語の確認)
・結果の知識(KR:Knowledge of performance):付加的フィードバックであり、運動自体というより、運動(反応)の結果に関する情報であり、通常は運動終了後に与えられます。KRの与え方は、運動学習に影響を及ぼすので、適切な頻度、タイミングで与える必要があります。
運動技能学習の段階には、Fittsが区別した段階があり、これは初期相(認知相)ー中間相(連合相)ー最終相(自動化相)という3段階になっている。
初期相(認知相:cognitive phase)
・初期相とは、目標を理解し、何をどのように行うかを理解する段階である。つまり、運動技能学習は、認知することからはじまるということです。宣言的知識であり、言語的に考え、いくつかの仕方を試みる相です。
中間相(連合相:associative phase)
・中間相では、運動が滑らかになり、系列運動へと移行していきます。この相では、感覚情報フィードバックと結果の知識(KR)が重要です。何を行うか(what to do)からどのように行うか(how to do)へ変換される。宣言的知識が手続き的知識に変換され、運動を言語的に説明することが難しくなります。
最終相(自動相:autonomous phase)
・運動はさらに無駄なく、速く、滑らかになります。自動化され、運動に対する注意は減少し、言語は運動遂行に不要になります。
運動初期で対象者自身の内観や気づきが乏しい場合は、KRをやや多めに与えますが、連合相の段階では、自身の運動感覚の内的なフィードバックで制御できる必要があります。ですので、KRに依存しないように注意が必要です。
※ガイダンス仮説:Salmoniらは「KRは学習にとって必要であるが、これを過剰に与えることはかえって学習を妨げる」
実際、もともと自身の動きに対する気づきが良い患者さんの方が、機能障害や動作の改善がスムーズにいく例が多いと感じます。
運動学習に関する文献の中から、以下の文献を挙げました。KRが運動に及ぼす効果などの記載もありますので、是非参考にして下さい。
運動学習についてhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/rika1986/9/3/9_3_149/_article/-char/ja/
運動学習におけるパフォーマンスと情報処理https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/16/3/16_3_133/_pdf/-char/ja
運動学習理論と理学療法の接点https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/21/1/21_1_93/_pdf/-char/ja
(参考文献)
・基礎運動学 第6版.医歯薬出版株式会社.