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嘘みたいな本当の話。
社会人もそろそろ20年目に突入しようとしている。思えば遠くへきたもんだ。そして私の一人暮らしも年季が入ってきた。これまで数回引っ越しをしてきたが、忘れられない部屋がある。それが、
お化けの出るマンション
嘘みたいだろ?でも本当なんだぜ。
始まりは、実家から遠い職場に勤め始めたこと。残業や休日出勤が多く、朝は超ウルトラ渋滞。マイカー通勤なんぞしようものなら2時間前には出勤しないといけなかった。そこで、一念発起、一人暮らしをしょう!となった。会社からそこそこ近く、できれば角部屋。家賃は安い方が良い。色々調べた結果、あるマンションにたどり着いた。ちょっと奥まった場所にあり、裏は田んぼ、前は空き地でマンションだけそこに建っている感じ。すぐ近くにホームセンターがある。ATMもある。これは便利。幸い当時の会社の近辺にスーパーとコンビニがあったので、会社に自転車か原付でいける距離なら問題ない。部屋は四階建てマンションの最上階。ものは少なかったから1Kでよし。どうせ貯金して別のマンションに住む前の前座だったから。不動産屋さんと一緒に部屋を見る。日当たりも良好で問題ない。そして契約をして引っ越し1日目。
お断りしておくが、私に霊感は皆無だ。生まれてこの方金縛りすらあったことが無い。なのに。なのにだ。
引っ越し初夜、段ボールに囲まれた部屋で寝ていると、誰かが荷物を降ろしているような音がする。
ドサッ。ドサッ。
こんな夜中に誰だ?と思った。眠いからいいや、と思ってその音を聞いていたが、ふと気づく。こんなに気配を感じるってのはおかしい。目を閉じたまま様子をうかがう。しばらくすると、その降ろしたであろう荷物を抱え、上の階に上がってくる気配がする。おかしい。透視でも出来ない限りありえない。でも、確実に近づいてくる。どうしよう、もう私の部屋の近くだ。
あ、ドアが開く!
と思った瞬間私は金縛りにあった。誰か入ってきてるわ私は金縛りだわ、恐怖と混乱で、なんだかよく分からないうちに意識がなくなって次目が覚めたら朝だった。もちろん誰もはいった形跡はない。これが金縛りってやつか。疲れてたからかな、とさして気にしなかったのだが、その後金縛りは7日連続で私を襲った。
ある晩は、おかっぱ頭の白いワンピースを着た女性が私のベッドサイドに立っていて、三つ折りにした手紙のようなものを差し出している。それを受け取ろうとしたら金縛り、寝ているときに台所の蛇口から、水がぴちゃん、ぴちゃんと落ちている音がしたので、締めに行こうと思ったら金縛り、またある時は、サラリーマン風の男性が、大きな地図を私の方へ広げ、どこに行ったらいいのかと聞いてくるので、答えようとしたら金縛り。いい加減慣れてしまいはしたが、それでも寝入りも寝ざめも悪いことこの上ない。他の部屋はどうなんだろうと思い、お隣のかわいらしい女子大生に聞いてみた。
そんなことないですよ
ですよね!どうやら私の部屋だけのようだ。なんだかなと思いながら住んでいると、ついには、昼寝をしている時にまで金縛りがやってくるようになった。昼寝をしていたら、となりにおっさんらしき人が、ふう、と一息ついている。
だれ。
ていうかなに?その間私は絶賛金縛り中だ。またある日の昼下がりは、レジ袋をカシャカシャ鳴らす音がして、なんだ?と思ったら金縛り。さて、これはいよいよいかん。そう思って大島てるも調べたがヒットしなかったため、知り合いの霊媒師に相談した。すると、
ここは霊の通り道だね♪
なんということでしょう!詳しい事は聞いたけど覚えていないが、なんでも私の部屋は幽霊がどこかへ行く道の途中にあるそうだ。本当ならさっさと引っ越した方がいいのだろうが、契約途中で引っ越すのもお金がかかる。とりあえず2年満期まで住んでから引っ越そうと思い、対処法を霊媒師に聞いた。特に彼らは人間に害をもたらすものではないので、ちょっとずれて通ってもらえばよし。ということで、部屋の中に大量の盛り塩をするはめになった。ま、まあいい。友人や彼が来た時に少々びっくりされるだけで大したことではない。そこかしこに置かれた丼いっぱいの盛り塩は、彼らが通った時には一晩で全て綺麗な塩水となった。2年の間に私は恐らく日本一伯方の塩を大量消費した人間だろうと思う。
それからしっかり2年住んだ。2件目のマンションは前回の教訓を生かし、それはそれは快適に住むことが出来た。今現在も穏やかに暮らしている。でも、時々思い出す。
あの2年はいったいなんだったんだろう。あの場所には、まだ当時の姿のままマンションは建っている。