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生まれ変わっても、俺は貝で呑りたい

貝ってさ。
なんであんなに美味いんだろ。
なんであんなにお酒に合うんだろ。

つぶ貝、赤貝、ホッキ貝。
刺身で食べたら最高じゃん。
刺身盛り合わせってメニューがあるなら、お願いだから貝を1種類でも入れてほしい。

貝は焼いても美味いんだよな。
サザエに蛤、ホタテに牡蠣。
浜焼きで豪快に焼いてさ、焼き上がったら醤油とかちょろっとたらしてさ。
考えただけで喉がビールを欲してくるよ。

煮てよし、焼いてよし。
この言葉って貝のためにあるのかもね。貝は煮ても美味い。
貝だけで出汁をとった鍋なんて絶品中の絶品だし、煮たバイ貝がお通しで出てきたりしたらテンション爆上がりするのは確実だ。
鮑のオイスターソース煮なんか貝の豪華饗宴。いや、鮑なんて贅沢はいわない。トコブシだってめちゃめちゃ美味いよ!

万能の貝は、天ぷらやから揚げみたいな揚げ物だっていけちゃう。
天ぷら屋で一杯呑った〆に、貝柱のかき揚げ天茶をささっといただく。
大人になって初めて知ったときには感動したよ。

最後に忘れちゃならない調理法が蒸しだ。
アサリの酒蒸し、ムール貝のビール蒸し。
貝とお酒は相思相愛のベストカップル賞で間違いない。


でもね。ひとつだけ気になることがあるんだ。
この世で貝を初めて食べた奴、ちょっとぶっ飛びすぎてない?

俺らは貝が食べられることを知っているし、貝が美味いことも知っている。
だから、何も気にせず美味しくいただける。

でもさ。よく考えてみて?
まったく未知のものとして貝に出会ったとして、あれ食べる?
俺は食べない。
まず、食べ物だと思わない。


日本人は縄文時代にはすでに貝を食べていたことが、貝塚の調査でわかっている。
と、小学校のとき歴史の授業で習った。

獲物が獲れない海辺近くで生活していた人たちが、海に食物を求めたのは理解できる。
しかし、砂浜を掘って出てきた貝や岩場に張り付いていた貝を見て、食べてみようと考えるだろうか。

俺はここで一つ、仮説を立ててみた。
この世で初めて貝を食べたのは、現代の年齢にして10代〜20代前半ぐらいの年頃の男性だったのではないだろうか?

理由は、モテたいから。
それぐらいの年齢の男は、女性から注目を集めるために多少の無茶はするもんだ。


「俺、こんなデカい獲物を獲れるんだぜ!」
→言うまでもなくヒーロー。モテ度MAX。

「俺、あんな高い木の上にある果実も採ってこれるぜ!」
→いつの時代も女性は果物が好き。モテ度大。

「俺、砂の中にあった変なの(貝)だって食べられるぜ!」
→獲物を獲る力や度胸もない。木に登る運動神経もない。でも「それ本当に食べられるの?」と注目を集める。モテ度?


世の中の女性は、そんなんでモテるわけないじゃんと思うかもしれない。
でも、それぐらいの年齢の男は、そんなバカなことをやっちゃうのよ。
何かですごいと思われたくて。

この仮説には続きがある。

貝が食べられることを発見したその集落は、貝を食べた男のチャレンジ精神を褒め称えただろう。
当然、デカい獲物を獲れる彼からも、高い木に登れる彼からも、貝を食べた漢は一目置かれる存在になる。
その結果、モテたかはわからないけど。
せめて生まれ変わったらモテモテの人生を歩んでもらいたいものだ。


今日も俺は、貝を肴に一杯呑ってる。

貝が食べられると発見してくれた漢に感謝しつつ、つぶ貝とホッキ貝の刺身で呑ってるよ。

あなたは貝が食べられると発見して、モテるようになったかい?
それとも生まれ変わってから、モテモテの人生を歩めたかい?
俺は妻にも子どもにも恵まれたし、今からモテモテになりたいなんて思わない。
仲間にも恵まれたから、生まれ変わったらなんてことも考えてない。
でも、これだけは言える。

もし生まれ変わっても、俺は貝で呑りたい。


#創作大賞2024 #エッセイ部門

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南原卓也(美味いビールが飲みたい)
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