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旅と酒場と男と女 ~大阪での葛藤~

なんのご縁か、18歳からの10年間、俺は毎年必ず大阪に遊びに行っていた。
最初は「大阪城」や「通天閣」へ行ったり、「なんばグランド花月」で吉本新喜劇を観たりもしたもんだ。
しかし、3回4回と訪問すれば観光ではなく飲み歩きが目的になってくる。
いつからか、大阪に来たら必ず立ち寄る酒場ができていた。


俺が大阪へ行く度に訪れる酒場は、某駅直結の地下街にある。そこには様々なお店が密集し、人気店だと早い時間から店の前に行列ができてきるのも珍しくない。
俺が行っている串カツ屋もそうだ。比較的回転の早い立ち飲み屋だが、最長60分待ったこともある。

埼玉からバイクで一人旅に出て3日目。
大阪の宿にバイクを置き、俺は早速、この串カツ屋を訪れた。
時間は16時。
すでに店内は賑わっていた。


一杯目の樽生ビールが身に滲みる。
この酒場の樽生ビールは、お世辞抜きで美味い。
クリーミーな泡。
ほどよい苦味と爽快感。
ビールが口の中の油分を洗い流してくれるから、次の一口がいつまでも美味い。

ここは価格によって串の長さが分けられていて、お会計時にそれぞれの串の本数を調べればどれだけ食べたか一目瞭然というわけだ。

サクッとしていて重くない串カツはいくらでも食べられる。
美味いビールと無限ループで、やめられない止まらない。

しっかり揚がってるから「チューリップ」の骨まで食べてる先輩がいるわ。
ん? ダメダメ!
「チューリップ」の骨は串と同じ。
スタッフがお会計時に計算できなくなっちゃうよ!

大阪には面白い人が多い。
隣で飲んでいた二人組のギャルもなかなかパンチのあるギャルだった。


「お兄ちゃん、ソースは二度づけ禁止やで。わかってるか?」


地元で飲んでいてもそうそう声をかけられることなんてないのに、今回の旅ではまぁよく声をかけられる。
しかも突然、大きな声で。
周りの人たちも、チラッとこちらの視線を向けたのがわかった。

「二度づけしてねーわ!」

思わずツッコミを入れると笑って謝罪された。


「しかしお兄ちゃん、よう食べるし飲むな。大食いの人?」


そんな感じで話し始めて、しばらく一緒に飲んでいた。
大阪で流行っていること。
東京の笑いについて思うこと。
おすすめの酒場など、最新の大阪についてたっぷり教えてくれた。

「チューリップ」の骨は1日2本までなら食べてもOKとかいう謎のルールまで教えてくれた。
※本当かどうかは未確認。自己責任でお願いします。


二人はオープン直後からここで飲んでいて、その前は別の店で飲んでいたらしい。
すでにいい感じに仕上がっていた。
よく喋る方のギャルとは別に、もう一人のギャルは黙々と串カツを頬張っている。

よく見たら、ギャル達の前には俺の倍以上の数の串があるではないか!
きけばこのギャル、そのうち大食い選手権にもチャレンジしようと思っている程食べるらしい。
この串もほとんど一人で食べたという。
恐るべき大阪の大食いギャル。


「まだまだ前菜やな。この子(喋るギャル)はもう帰ってしまうねんけど、お兄ちゃん、暇ならこのあとどっかご飯食べに連れてって!」


この子がどんだけ食べるのか見てみたい。
それに大阪でギャルとサシ飲みってのも捨てがたい。
しかし、一人旅はまだ途中。
所持金すべてをこのギャルの食費にしてしまうのはリスクが高すぎないか?
頭の中で超高速の一人会議が行われる。


「ちなみに、何か食べたいものでもあるの?」
「う~ん、キタに美味しいお寿司屋さんあるで!」


答えは決まった。
それはこの旅で唯一、俺から誘いを断った瞬間だった。


#創作大賞2024 #エッセイ部門

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