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ネパールの面白い話・・・修理屋編

ネパールの山奥で修理屋を営んでいる村田です。

電気製品、バイク、発電機、秤、鍋、ヤカン等何でも格安で修理しています。
(うそです。半分は本当ですが本業はニジマスの養殖をしています。)



ミキサー壊れる

つい先日の事、ニジマスの餌に混ぜる納豆を何時もの様にミキサーにかけていると突然煙を吹いてミキサーが止まってしまった。

インド製のこのミキサー、毎年、餌の干し海老や魚を何百kgも挽いてグラインダー代わりに10年以上酷使して来た。

10年以上前に購入したインド製のミキサー


このような使い方をすると普通だったら数ヶ月、運が良くても1年くらいで壊れないのは奇跡だろう。(このミキサーを買う前には何度も壊れて買い替えていた)

だから流石に10年を超えてからのここ数年は「何で壊れないのだろう?・・・どこかおかしいのかなぁ~?」と不思議に思って見ていたのだった。

そんな事情もあったおから本当に壊れた時には「どこもおかしく無かった・・・」
と、思わず安心してしまったのだったのだが・・・仕事で毎日使っている物が壊れるとやっぱりヤバイ事になる。

明日からどうしよう・・・という訳だ。

明日から魚のご飯はやらない・・・という訳にはどうしてもいかない。

これだけ景気よく煙が出て壊れたからにはモーターのひとつやふたつ焼き切れていて当然である。

修理に出しても、とても数日で直るとは思えない。

そのまま買い換えるしか無さそうだ。

取り敢えずそおいう方向で検討するとして、その日の作業を片付けてしまわない事にはどうにもならない。

早く仕事を片付けて代わりのミキサーを買いにカトマンズまで行かなくては・・・。

一体幾らかかるだろう?

どう考えても1万円以下では見つからないだろう・・・頭が痛い・・・。

新たな出費が頭をよぎると急に憂鬱になってくる。

そんな訳だったから、このまま何も確認しないで捨ててしまうのは、後ろ髪を引かれる思いであった。

第一この十数年で培った、その道一筋の貧乏人としての誇りが、このケチケチ根性がどうしても許してくれない。

やっとの事でその日の作業を片付けて、飯でも食おうかと思った矢先、うんともすんとも言わなくなったミキサーが不貞腐れて転がっているのが目に入る。

・・・疲れているのに・・・こんな人目につく所に転がってやがって・・・(自分でぶん投げて置いたくせに)

仕方が無いので底部のネジを4本外して蓋を開けてみると・・・

なんじゃこりゃー!!
見ただけでめまいがしてくるような蜘蛛の巣様のめちゃくちゃな配線。

それでも一つ一つの配線を辿りながらテスターで調べて行くと・・・断線箇所が見つかった!!

モーターのコイルの束に巻き込まれる寸前の場所が1箇所焼き付いて断線している様だ。

配線を少し引っ張るとポロリと完全に焼けた配線が取れる。

試しに通電して恐る恐る指を突っ込んで切れた配線を繋いでみると、なんとモーターが勢いよく回り出した。

負荷をかけすぎたて確かにコイルの焼ける匂いが立ち込めて、もうダメだと思ったのだが焼け切れたのはここだったのか!!

更に調べてみるとモーターのカーボンも殆どすり減ってしまって異様に火花が散っている。交換しないとヤバそうだ。(匂いの原因はカーボンが減っていたせいだろう)

早速配線をやり直してから取り外したカーボンを持参して山の麓の金物屋に行くと、こんな田舎なのに直ぐに使えそうなサイズのカーボンが手に入った。

流石に純正品は無いのでピッタリという訳には行かなかったが、多少削ったりバネを引っ張ったりしたらそれらしく直った。

あと十年は無理かもしれないが2~3年はもって欲しいものだ。

何でも直るネパールの修理屋

幸い今回のミキサーは修理屋に持ち込む事もなく自分で修理出来たのだが、中にはどうしても修理屋に頼らざるを得ない場合もある。

だが、ネパールの凄い所は携帯もノートパソコンも日本では絶対に買い替えになる様な物でも殆ど修理が出来ることである。

パソコンの修理屋を覗き込むと半導体がびっしり張り付いた基盤から壊れた部品を器用に剥がして交換している。

日本ではこんな事絶対にやってくれない。

以前日本製のホンダのオフロードバイク(XL185、知っている人は相当年配です)に乗っていた頃エンジンが壊れてバイク屋に行ったら・・・「純正部品を使えば6万円以上掛かるが、中国製のバッタもんの部品を使えば二万円で直るがどうするか?」
と聞かれてびっくりした。

ホンダXL185


この時はエンジンの他にも発電コイルやサスペンションのオイルも抜けてしまっていたのだが、部品を揃えようにも何分古いバイクで相当時間がかかると言われた。

だが、何とかお願いしてみると
外注で発電コイルを巻き直し、分解出来ない構造のサスペンションも何故か分解して格安で直してしまった。

流石にこんな安いインチキみたいな中国製の部品で大丈夫なのか心配になったのだが、バイク屋に聞いてみると
「中古で買った時点でお前のバイクは半分以上バッタもんの部品で修理されてるから、もうホンダでは無い。」
との事 、それを聞いて安心してバッタもん部品を取り付けた。

確かこの時はピストンとカムとクラッチ、コイルとサスペンションを直し修理代込で2.5万円程だった。

そんな訳だから例え物が壊れても直ぐに捨てないで修理屋に持ち込むことは結構有効だ。

例えモーターのコイルが焼き付いたとしても専門の修理業者がいてコイルを巻き直して貰えるのだが、問題は一旦修理に出してしまうと一体何時直るか分からないという点である。(以前落雷で壊れたインバーターを修理に出したら一年以上掛かった事がある。この時は充電機能が壊れて帰ってきた。)

殆どの職人は、その場で壊れた機械をバラバラに分解してしまって、もう他の修理店に鞍替え出来ない状態を作り出してから
「明日までに直しておくから取りに来い。」
と言う。

だが、翌日行っても明後日行っても絶対に治っていない。

明日と言われたら最低一週間は行かない方がよい。

二、三日と言われたら結構深刻で、数ヶ月かかると思って修理に出さないといけない。

現に今年の五月に雨季に備えて修理に出したレインコートが雨季の終わる九月の下旬になっても直っていない。

確かこの時は
「一週間で直るから取りに来い。」
と言われていた。

流石に雨季にレインコート無しでは仕事にならないので結局新しい物を購入した。
(この修理屋では古くなったダウンジャケットや寝袋からダウンを取り出して格安で新品に仕立て直してくれるのだが、冬に備えて修理に出すと春まで帰ってこない可能性が非常に高いのでとても迷っている。)

そんな訳だから毎日使う物が壊れてしまうと本当に困る。

だからダメ元で自分で修理を試みる癖が自然に付く。

修理に出した後の進捗状況は職人の忙しさ加減とやる気加減、その日の気分次第だ。

途方もなく伸びることはあっても縮む事はまず無い。

「絶対に」と何度も確認した約束の期限に物が直らなくても何だかんだと言い訳するばかりで一向に埒が明かない。

やれ「風邪を引いたから」とか「腹が痛かった」とかグズグズ抜かした後で「明日までには必ず!」・・・と言った具合になる。

それじゃあ・・・という事で正直に翌日出かけていこうものなら今度は「そうだ!子供が風邪を引いて・・・」となる。

要はいい加減なのである。

飲み屋のねーちゃんを口説くようにして散々通いつめて修理が終わってもまだ安心するのは早い。

修理から帰って来た物を信用してそのまま使うと直ぐに壊れる。
酷い時には店を出る前にもう壊れている。嘘じゃない。

ネパールの職人はとても優秀なのだけれど大抵殆ど全員がいい加減で、とりあえず壊れている場所をとても安く直してくれるのだが、その際に他の場所を壊す。

壊しても知らん顔だ。

気が利いた職人になると自分が壊した所を修理した代金も請求してくれる。

更に優秀な職人は何も言わなくとも修理に出した機械の高級な部品を取って無料で安いのと付け替える。

特にパソコンや携帯等を修理に出す時はよく見ないで引き取るとCPUもメモリーも全部取られている。

だから大切な物を修理する前には徹底的に調べて何処が壊れていて何処が壊れていないか等を含め確認した上で修理に出すしかない。

しかも、修理が終わったら直ぐに自分で徹底的に分解して修理の際に壊れた箇所を自分で再修理してからでないと絶対に酷い目にあう。

可能であれば修理している間ずっと付き添って監視するのが良い。

そおすれば修理方法も習得でき、部品も抜かれない。

職人の腕の善し悪しも実によく分かる。

あわよくば仲良くなって次回からは前客を全部すっ飛ばして一瞬で対応してくれる事もあるのだ。

だが、一見さんで修理に出すと実に頼りない。

修理が終わっても大抵他の場所が壊れて2、3回店を往復する羽目になる。

だから毎日の作業に必須の機材は遅かれ早かれ再購入する羽目になり、修理したものは予備の機材として現役を離れて倉庫に保管されることになる。

結局修理の意味が見いだせない。

うちの社長


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