ネパールの田舎のおもろい出来事
ネパールの山奥の村に住んであとひと月ほどで七年になる。
その間日本には帰っていない。
本業のニジマスの養殖が忙しく・・・は無いが目が離せないのだ。
さて、ネパールの田舎に住んでいると、たまにおも白い事が起こる。
つい先日の事、家の近くの山道に米が落ちている。
・・・可哀想にバザールから米の袋を背負って来た人が袋に穴が空いてしまい、こぼしてしまったのだろう・・・などと思いながら先を急ぐと道沿いにあちこちに米が落ちている。
家に帰って妻に話をすると早速妻から別の情報が入った。
昨夜近所に泥棒が出て米や畑の野菜が盗まれたらしい。
近所のおばさんの情報によれば養殖場のすぐ裏の山道にも米が落ちているという。
それにしても、食い物ばかりが盗まれるのもどうも解せない。どうせ盗むのならもう少し金目の物を盗んだ方が良さそうなものだ。
そうそう、米と野菜と来れば魚も必要だろう・・・と思い当たって心配になる。
穴の開いた米袋を背負って養殖場の魚を狙ったなら養殖場の裏にはまとまった米が落ちているに違いない。
そんな推測の元、妻と現場に行ってみると、確かに養殖場脇に沢山の米が落ちている。
犯人が米袋を背負ったまま魚を盗ろうか迷ってしばらく立ち止まったに違いない。
妻と二人落ちた米の後を辿ると、やはり私が朝米を見た場所に続いている。
更に辿ろうとしている所に近所の人が通りかかり、挨拶を交わした後米の話をすると泥棒は今朝捕まったとのこと。
犯人はうちのすぐ近所の「デブ」というあだ名のついた青年。
数年前から夫婦仲が悪くなり家が貧乏になると酒浸りで手癖が悪くなっていたのだが、数ヶ月前遂に奥さんが愛想を尽かして子供を連れて逃げてしまった。
その後は仕事にも行かず村人にも相手にされず食べるものもないので、すっかりとやせ細ってしまい、あちこちで野菜泥棒をしていたようだ。
そして米を盗まれたのは私の家から一時間ほど山を登った所にある家。
朝起きて米の袋(一つ25~30kg)が二つ無くなっているのを見つけて、早速こぼれた米を辿って彼の家にたどり着いたという。
犯人の家を突き止めたまでは良かったのだが、いざ彼の家に踏み込んでみると家の中には道中撒き散らしてしまって、すっかりすぼんだ米袋とその脇でガァスカと寝ている彼の他に何も無かった。
生活に困った彼は家の中の殆どのものを売ってしまいコップひとつ無い有様。
そんな訳で彼を警察に突き出すのも不憫になり、盗んだ米を家まで背負って返却するように話をつけて一件落着となったらしい。
めでたしめでたし。