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【『SURVIVE』 INI 西洸人】vol.1食わず嫌いだったラップのイメージを変えた

「こんなに聞き取りやすいくて歌詞を味わえるラップを聴くのは初めてかも」
聴き始めて30秒くらいでそう思えた。


タイトル通り、ラップは今まで若干避けてきたジャンルの音楽だ。というのも「これがラップなのか…」と最初に認識したラップがどうも苦手だったから。詳しくは語らないが何となくそこで苦手意識を持った。
まぁ、たまに聞こえてくるラップで「これは凄いな」と思ったものもあるにはある。ひとつ挙げるとすれば、物凄く早口なのに滑舌がよすぎなものの類だ。
ただ、残念ながらそのテクニックについて絶賛はしても、早口がゆえに次から次へと発せられる言葉が反対の耳からこぼれ落ちていき、脳内でその意味を理解できないという。
まったくもって受け手である自身の能力不足が原因で好きになれないというのはどうかと思うが、仕方ない。


ラップ曲はメロディというものが少なく、話しかけられているかのようで、言葉が抑揚なく流れていく雰囲気がある。言ってみれば言葉の川みたいなものだ。その川がゆったりだっり激流だったり。

例えが微妙に難しいな…
今まで聞いたことのあるラップは、上流から流てくる水の中に立って、その水の「流れ」が足元を過ぎていくのを感じているようなものだ。
だがこの曲は、目の前に流れてくる水が飛沫(しぶき)となって全身に当たってくる。
飛沫(=言葉)が体に散らばる感覚細胞ひとつひとつにその意味を伝えてくる。そしてそのはっきりと粒立った言葉が、きちんと頭の中に入り、脳はそれらを意味あるものとして腑に落とそうと働く。


なぜ彼の発する言葉は聞き取りやすいのか。
それは滑舌の良さ、歯切れの良さ、芯の通った力強い口調、クリアな息継ぎなど、彼の歌い方の色んな特徴が要因になっているのかなと。
ひとつひとつの言葉に魂が宿っているのを彼自身よく分かっていて、敢えてそういう歌い方をしているのかもしれないとも思う。

あと、言葉を発するタイミングが極めて正確だというのもあるのかもしれない。
8ビートあるいは16ビートを感じながら聴くと分かりやすいと思うが、ただ発しているだけに聴こえる言葉が、きちんと拍を刻んでいることがわかる。
言葉に付けた強めのアクセントがリズミカルに響くのは、拍が正確に取れているがゆえの産物なのだろう。

尚この特徴は、もろに彼のダンスの特徴とリンクしていて、ある意味これが彼のセンスだと言えそうだ。

そしてもう一つ、聞き取りやすいポイントとなるのが言葉選びが上手いことが挙げられる。
日本語メインで言いたいことが理解しやすい。英語も多少ありはするが、本筋は日本語で大体は語られている気がする。 
韻を踏むという条件の中、いかにしてひとつの曲の中でストーリーを作り上げて聴き手に分かってもらえるのか、考え抜かれての日本語での作詞なんだろうなと勝手に解釈。
私もJであるが故、そう思いたい。

それから、聞き取れるかどうかは前述した早口が云々のところで分かるように、曲のテンポに関係するところもやはりあって、この曲は頭で理解できるくらいの丁度よいテンポだからというのもあるだろう。
そしてそのテンポを担うバックサウンドが秀逸で、彼の歌声をより引き立たせているようだ。
強めに叩かれる乾いたスネアと優しめのバスドラがビートを刻みテンポを誘導、儚げなギターと揺らぐシンセが歌詞の意味に色を添える。


つらつらと書いて内容がごちゃごちゃしてしまったが、要はこの曲が自分の中にあるラップの偏ったイメージを払拭してしまうくらい、物凄く心地よく心に響いた素敵な曲だということが言いたかった。

ラップって奥深いな…


歌詞や映像について、今回は全然触れなかったので、時間があればvol.2として書こうと思います。



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