育児休業中の就業・就労制度
令和5年7月31日、厚生労働省から「令和4年度雇用均等基本調査」が公表されましたが、各種報道では育児休業取得率が話題となり、ニュースのインタビューでは “休みたくても休めない” といった声が取り上げられていました。
休みたくても休めない(あるいは 休みを申請しづらい)というのは、特に中小企業で人手不足・業務の属人化により休業されると仕事が回らないことが大きな理由の一つと考えられます。確かにベテラン従業員が長期間不在となれば、業務に支障が出る可能性は高まりますが、『育児休業中に仕事をしてもらうことも可能な制度がある』ことを知る人が少ないのではないかと思うので、その制度を解説してみます。
1.育児休業中に仕事をしてもらえる制度など(概要)
● 出生時育児休業(産後パパ育休)期間中に仕事をしてもらう制度
・子の出生から8週間以内限定の 短期の育児休業中は、
事前合意があれば一定の範囲内で就業させることが可能
※本人から希望があり、会社が認めた場合に限り就業が可能
● (通常の)育児休業期間中に一時的・臨時的な仕事が認められるケース
・男女とも、子が2歳になるまで延長して取得できる育児休業中に、
本人の合意があれば、一時的・臨時的に就労させることが可能
※会社からの求めに対し、本人が合意することが前提
恒常的・定期的な就労は対象外(復職したとみなされる)
2.出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業
令和4年10月から始まった制度で、主に男性従業員が対象で、従業員本人から就業の希望がある場合に利用可能です。
[制度利用の前提]
・労使協定の締結(就業させることができる労働者の範囲について)
[具体的な手続き]
1. 就業希望者は、就業可能日・時間帯・その他の労働条件(テレワークの
可否等)を書面等で申出
2. 会社は、上記1 の範囲で、就業して欲しい日・時間帯等を書面等で提示
3. 本人は、上記2 の内容に同意する場合は、その旨を書面等で提出
4. 会社は、同意を得た旨、就業させる日時・労働条件を書面で通知
※1~3を 休業開始予定の前日までに行うこと
[注意事項]
・就業日数等の上限は、休業期間中の所定労働日の半分、所定労働時間の
半分がです
・休業開始前であれば、従業員は同意の撤回が可能です
・就業日数が多いと、出生時育児休業給付金が減額される、
社会保険料免除の対象外になる、可能性があります
3.育児休業期間中に一時的・臨時的な仕事が認められるケース
いわゆる育児休業は、休業中の就労は想定されていません。しかし厚生労働省から例外的に就労させることが可能な事例が提示されており、一時的・臨時的就労は認められることが示されています。
[例外が認められる条件]
・労使の話し合いによる合意がある
・子の養育をする必要がない期間に限られている
・一時的・臨時的な就労である
[注意事項]
・労働者が自ら会社の求めに応じ、合意すること(会社の一方的な指示に
より就労させることは不可)
・就労日数が多いと、育児休業給付金が減額又は停止される可能性があり
ます
[相談窓口]
※ 就労させる場合は、事前に下記へ相談することをお勧めします
就労の可否等: 労働局 雇用環境・均等部(室)
育児休業給付金: ハローワーク
4.まとめ
育児休業 は、育児と仕事の両立を念頭に定められた制度で、必ずしも休業中の仕事を禁止しているわけではありません。
上記の他にも、職場復帰後にもう一度 育児休業を取得できるなど、令和4年10月からは、より育児と仕事を両立させやすい制度となっています。「育児休業」=「長期休業」という考えではなく、育児と仕事のバランスをとるための手段の一つと考え、これらの制度を上手に利用することで、子育て世代の従業員が、安定して働き易い職場環境に繋げていただけるのではないかと考えます。