Rolandの映像スイッチャーでSRTの送受信を試す 〜VR-6HD、VR-120HD、V-80HDを使った検証〜
今回のテーマはRoland映像スイッチャーのSRT機能について。
ネットワークで映像を伝送する方式「SRT」は、さまざまな機材への搭載が進んでいます。
Rolandの映像スイッチャーもその一つで、新しい世代の機種には軒並み搭載がされるようになりました。
今回はRolandスイッチャー3機種を例に、SRT映像の送受信がどのようなものなのかを試してみました。
SRTとは?
近年「AV Over IP」というネットワーク経由で映像・音声を伝送する分野に注目が集まっています。ネットワークで伝送ができれば、ケーブル配線や遠方への伝送も手軽になることが期待できます。
その方式は様々ですが、中でも搭載する機材が増えているのが「SRT」です。最近ではATEM MiniやRolandスイッチャーでも採用され、私たち配信初心者にとっても身近な存在になってきました。
SRTは次世代の映像伝送方式として期待される規格です。ロイヤリティフリーで安定性の高い仕組みから、急速に採用が広まっているようです。
SRTのより詳しい概要については、以前にも整理をしたので。ぜひ併せてご覧ください。
SRTの採用が広まるRolandスイッチャー
Rolandの映像スイッチャーと言えば、高価なぶん安定性と信頼性の高い機材です。そんなRolandのスイッチャーにSRTの送受信機能が搭載されています。
2024年11月現在で搭載されているのは、比較的最近発売された「SR-20HD」「VR-6HD」「V-80HD」「VR-120HD」の4機種です。
今回はこの内3つの機種を使い、RolandスイッチャーのSRT機能をテストしてみます。使い方が分かればとても簡単なので、お持ちの方はぜひ試してみてください。
CALLERとLISTENERの概念
具体的な紹介の前に、SRTを使う上で理解が必須な「CALLER」と「LISTENER」の概念について紹介をさせてください。
SRTで映像を送る際は、接続をしかける側の「CALLER」と、接続を受ける側の「LISTENER」が必ず存在します。
これは映像の送る側・受け側とは関係がなく、原則どちらもCALLERにもLISTENERにもなれます。
例えば映像を送るカメラがLISTENERで、映像を受けるスイッチャーがCALLERにもなれますし、その逆もまた可能です。
機材によってはCALLER固定なこともありますが、Rolandのスイッチャーは「CALLER」と「LISTENER」のどちらにも設定ができるようです。
SRTで受信・送信どちらもできる
Rolandのスイッチャーの特徴の一つが、SRTで映像の受信・送信どちらも行えることだと思います。
例えばATEM MiniはSRTの送信のみ対応で、映像の入力はできません。また、RolandスイッチャーにはSRT用の設定画面も用意されており、よりSRT対応に力が入っている印象を受けます。
今回は「SR-20HD」「VR-6HD」「V-80HD」の3機種を例に、SRTの受信・送信のイメージをご紹介します。
SRTで映像を受信する
RolandスイッチャーはSRTで映像を受信して、映像ソースの一つとして使うことができます。
設定はメニューの「SRT入力」から行っていきます。
設定メニューでは、映像の受信をCALLERで行うのか、LISTENERで行うのかによって設定が若干異なります。
CALLERの場合は接続先のIPアドレスを入力しますが、LISTENERの場合はIPアドレスの入力がありません。後の設定項目は基本的に同じです。
基本的にはIPアドレスとポート番号をCALLERとLISTENERで合わせて設定すれば、あとは開始することで映像の受信ができるようになります。
ただし、SRT入力を使う場合は一部機能に制限がつきます。ご注意ください。
SRTで映像を送る
RolandスイッチャーはSRTで映像を送信することもできます。各機種の配信方式には「SRT」選択肢があります。
SRTはYouTubeへの配信も可能ですが、2024年11月時点ではまだYouTube側がクローズドβの機能になっています。そのため、基本的には自分の機材の間で映像を送るために使うことになると思います。
配信の設定メニューは、映像の送信をCALLERで行うのか、LISTENERで行うのかによって設定が若干異なります。
CALLERの場合は接続先のIPアドレスを入力しますが、LISTENERの場合はIPアドレスの入力がありません。後の設定項目は基本的に同じですが、LISTENERの場合だけ最大3つまでの同時配信が可能です。
配信した映像はOBSやVLCメディアプレーヤーなど、SRTに対応した機材・ソフトで受信することができます。
今回はSRTの開発会社が提供しているiPhoneの無料ソフト「Play Pro」で受信してみました、非常に安定して受信することができました。
SRTの遅延は比較的多い
SRTのポイントの一つが、比較的遅延がある方式なことだと思います。
これはHDMIとSRTで入力した映像のタイミングを比較したキャプチャです。このテストでは2秒弱、SRT入力の映像の方が遅い結果となりました。これまでの感覚としても、大体1〜2秒ほど遅延がある印象です。
これだけの遅延があると、同じ会場の中でHDMI映像と併用するのは難しいと思われます。使えたとしても、口元が見えない引きの映像などではないでしょうか。
そもそもSRTは弱い回線でも信頼性高く映像を送ることを重視した規格です。信頼性を高めるために回線状況に合わせて遅延量を調整したり、ロスしたデータを再送する機能などを搭載しています。
そのためNDIなど他の方式と比べると、SRTは低遅延を求める規格ではないのかなと思います。むしろSRTが輝くシーンは、別の場所からの中継や、別の部屋へモニタリング映像を送るような場面だと思います。
遠隔中継のテスト
そこで、遠隔中継を想定したSRTの配信テストを行ってみました。
実は、我が家には諸事情でインターネット回線を二回線を引いています。そのため、別々の回線で送受信すれば、インターネット越しの伝送テストができるかと思います。
テストはRolandスイッチャー2台に異なる回線を接続して行いました。SR-20HDからSRTで配信を行い、V-80HDでSRTの映像を受信た形です。
受信するV-80HD側の回線ではルーターでポート解放の設定が必要です。ただ、それさえできれば非常に簡単に映像を受信することができました。
それぞれのタイミングを比較したのがこちらです。
SR-20HDの配信直前の映像と、V-80HDの映像受信後の映像を同時に並べてみました。その差は1.5秒程といったところ。
ローカルネットワークの検証とも概ね変わっておらず、その意味では遅延が少ないことに驚きました。
自分でも疑い何度か検証をしてみましたが、やはり大体1〜2秒ほどの遅延でローカルネットワークと大きく変わらないようでした。
同じ場所からというの好条件ではありますが、とは言えローカルとここまで差がないのは興味深い結果でした。
いつか実際に中継にも使ってみたいです。
以上、RolandスイッチャーのSRT機能を3つの機種を使いながら試してみました。
自分はこれまでNDIについて自分なりに検証を重ねてきました。その感覚から言うと、SRTはとても安定している印象を受けます。
もちろん遅延や画質などはNDIに軍配が上がるのですが、配信の安定性を重視するSRTのコンセプトを感じるものでした。
SRTについては他にも検証を行なっているので、下記のリンクから併せてご覧いただければと思います。
レンタルのススメ
今回の記事はPanda Studio様からご支援をいただいて執筆しています。
Panda StudioではSRTに対応したRolandスイッチャーを全機種のレンタルを提供しています。気になる方は、まずレンタルで試してみてはいかがでしょうか。
▼Roland V-80HD
https://bit.ly/3CpWta6
▼Roland VR-120HD
https://bit.ly/48NJ7k5
▼Roland VR-6HD
https://bit.ly/3UPHqgb
▼Roland SR-20HD
https://bit.ly/48NZi0F
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