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「最近ダル着しか着てない」(SiNKから考えるファッションの本質について)

少しだけ、希望の波が来ているここで振り返りのようなファッションのお話を。

コロナ禍と言われはじめてからもうずいぶんと時間が経った。その間ファッション業界は絶望と(少しの)希望の波にもまれていたように思う。

そんな中、たまたま街で耳に入った若い女性2人の会話が表題の言葉だった。

「最近服買った? 私、まじでダル着しか着てないんだけど。」

「ダル着」・・?? だらっとした服、主に部屋着。よく言えばルームウェア、着古してもう外には着て行かれないから部屋着にした(つまり2軍3軍の)服。

みたいなことだと思いつつ、印象的だったので調べてみたら意外と以前からあった言葉のようだった。単に自分が知らなかったというだけだが、緊急事態宣言が続いていた最中のタイミングで聞いた、このやるせなさに溢れた若い2人の会話に、今のご時世にこんなにフィットするファッション用語があったのか、と思った。

所謂、TPOという概念が薄れ、同時にファッション自体もその存在が薄れてしまい「長いお家時間」を中心としたライフスタイルが広がった結果、その境界の曖昧さを狙ったファッション…デイリーウェア、ワンマイルウェアの延長線上からアスレジャー、アーバンアウトドアなどに繋がりながら広がり、ビジネスウェアでさえもリモートワークを意識した、カメラ映えしつつも着心地はリラックス感あるものへとシフトしてきた。

そんな中、ZOZO TOWNから生まれた「 SiNK」といブランドコンセプトがとても素晴らしく、興味深かった。


「家で過ごす自分のままで、どこまで出かけられるだろう」というコンセプト。インタビューの中では、「近所の人たちのゆるっとした格好をたくさん見て、心の底から表参道や渋谷で見る服装より見応えがあって何倍も面白いと感じたんですよね。もはやストリートってどこにあるのって感じで(笑)」とお話しされている。

販売サイトZOZO TOWNの各アイテム説明にもこのコンセプトがたっぷり詰まった文章が添えられ、既に売り切れてしまったあるアイテムには「着て、近所へ出かけてみましょう、次はバスに乗ってみましょう、電車に乗ってみましょう」と言った言葉が添えられていて(もう確認できないので多少誤差ありかも)、まるでダル着(失礼!)でどこまで出かけられるか=ファッションという思想、手段を用いて街の風景を変える、今の世相を表現する、これから変わる世界をいち早く見せる、と言った本質的な挑戦が潜んでいるように思えた。

少し脱線するが、以前、ファストファッションが勢いを増し、ファッションのコモディティ化が進む時代の中で読んだ、吉本隆明さんのモードについてのインタビューで(おそらくアヴァンギャルドと言われたコム デ ギャルソンなどのことを例に)「着て街に出ることに何とも言えない緊張感があった」とおっしゃっていたことに共感し、その記事をおぼろげながら覚えているのだけれども、それと全く角度が異なりながらも同様の緊張感を感じるプロセスがあることを面白いと思う。

そもそも時代も変わり、ファッションとしてのジャンルもデザインの捉え方も、価格帯も何もかもが違うアプローチでありながら、得られたり求めたりする人々の感覚が同じであるならば、ファッションの本質はそこにあるのかもしれない。

その本質を見据えて、いかにも「ファッション」としてポップに、軽やかに表現してしまうSiNKの横澤さん日高さんご夫妻のようなデザイナーがこれからもファッションを盛り上げてくれることに期待と希望の気持ちを抱くのだ。
(そして、その未来への期待と希望こそがまたファッションの本質ですね!)

おわり




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