その日、長女が一時保護された。その1

一時保護2週間前

何で喧嘩になったかは覚えていない。100均で化粧品を買ってほしいとか、塾の宿題をやりたくないとか、そういうことだったかもしれない。

娘は私に馬乗りになり髪を引っ張った。これはいつものこと。痛い、やめて。それから揉み合いになり肩を思い切り噛まれた。念のために言うが自己防衛以上の暴力を私はしていない。離れて、痛い、やめて。繰り返しながら、私たちは取っ組み合いをした。

私に馬乗りになった娘は、手のとどくところにあった飲みかけの水をかけようとしてきた。わたしはそのペットボトルをとりあげた。拭くのどうせ私だし。家を荒らしてほしくなかった。

突如がつん、と顔の右側に衝撃が走り、目の前が真っ暗になった。何も見えない。ハッとした娘の気配を感じた。馬乗りになったままだが、攻撃は止まった。

リモコンで顔を殴られ、顔の右側が大きく腫れていた。視力はだんだんと回復してきたが、ぼんやりもやがかかった感じは消えない。なによりめちゃくちゃ痛い。

誰かに助けて欲しい、と直感で思った。
その時浮かんだ顔は夫ではなかった。
警察か、児相か、そもそも救急車か。
痛すぎてうずくまる私に、仮病使ってんじゃねーよ、と言いながら娘は離れていった。

この時、110番しておくべきだったのか?
でもわたしはしなかった。
怪我の状態から、一時保護になることが怖かった。
あの子の自由を奪わないためには私が我慢すればいいと思った。それが最善だと思っていた。

結局その日は、生活安全課に電話をした。
誰かに話を聞いて欲しかった
家庭支援センターの担当者にも話を聞いてほしくてかけた
警察は、お母さん病院行った後警察来てください、といわれた
つれていけるわけないし、私も病院なんて行く気力なかった

結局その日は顔を冷やして、次の日MRIをとってもらいに脳外科へ行った
なんともなかった
通報しなくてよかった、なんともなかった、私の判断は正しかったと、そう思った

青あざや見た目の怪我はいま、ようやく引いてきた

一時保護1週間前〜前日

夫が単身赴任から帰ってきた
夫の前では暴れない娘
たのしそうに、穏やかな時間だった

ただし、週末は次女と夫だけ旅行に行った
5月に暴れたペナルティだった
本当は、4人で旅行に行く予定だった
置いて行かれた長女は、しかたないね、と言っていた
わたしとも勉強したり、用事を済ませたり
買い物をしたり、穏やかな時間を過ごした

後に保護所での面談で
「あの日ママと買い物にいったのが楽しかった」
といっていたそうだ。

帰国時も私の顔にあざはあったが、
夫には娘に殴られたといわなかった
自分でぶつけたとはなした。
「さすがにこどもの力でそんな酷い怪我にはならんわな(笑)」
と夫は笑っていた。
いいえ、あなたの娘は強いですよ。そして私は弱いです。
心の中に留めておいた

一時保護当日

朝に夫は赴任先に戻り
子供たちも学校へいった
緊張感がぬけたわたしは、寝込んだ

娘が帰宅した
勉強を一緒にしよう、といわれたので
隣に座った。学校の宿題だった。
そのあと塾の宿題をしよう、という話だった

なにかが、娘の逆鱗に触れた
2週間前と同じように髪を引っ張られ、引き摺り回され、身体中を噛まれ、噛みちぎられた。

耐えられなくて、児相に電話をした。
担当者はすぐきてくれたが、双方から話を聞いてその時点では一時保護にならなかった

娘さんは今夜は部屋から出ないと言ってます
お互い距離をおいて、朝になったらまた連絡します。

そういって担当者は帰宅した

娘はすぐ部屋から出てきた
なんで通報した、私の人生おわった
お前なんていらない、パパの方がよかった
責められて怖くなり、次女を連れて家を出た

ファミレスで時間を潰し
次女に晩ご飯を食べさせながら
もう無理だな、とぼーっと考えた
あの家に帰ることが怖かった

壁にボロボロに穴があいてたら
教科書がバラバラに破られていたら
娘が凶器を持って待っていたら

怖くて、家に帰れなくて
そしてわたしは110番をした。

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