原料高&円安の今、国産米の米油は“あり”なのかどうか?
原料高に加えて急激な円安で、食用油の価格が高騰しています。
(円安は少し落ち着いていますが)
そんな中、原料価格の変動も少なく、円安とも関係がない米油が見直されています。
そこで今回は、
米油の栄養価、脂肪酸組成、製法、
価格、米油の意外な効果
について解説します。
また「米油は体に悪い」という声に関してもコメントします。
(記事の文末に動画を添付しています)
米油は米の糠層から抽出した油
米油は昔から流通していましたが、知名度も低く、あまりパッとしない存在でした。
ところが、例を見ない値上げラッシュが押し寄せて、にわかに「国産米を使った米油もありかも」という状況が訪れます。
米油は、お米の糠層から抽出した油です。
お米の構造は上の図の通りで、栄養素のほとんどは糠層に集まっています。
胚乳(白米)には、栄養素はほぼ残っていません。
米油は糠から抽出した油ですので、糠層に豊富な栄養素を摂取することができます。
米油の代表的な栄養素3つ
一つ目がビタミンEです。
食用油のほとんどにはビタミンEが含まれますが、このように米油の含有量は抜きん出ています。
ただし、100g当たりで25、5mgです。
1日10g摂ったとしても2、5mg。
私が推奨する1日300mgには程遠く、これで必要量の摂取はできません。
ただ、そうではなくて、ビタミンEが米油自体の酸化を防いでいることが大事です。
米油は、酸化に強い油です。
ちなみに、ビタミンEの中のとくに抗酸化作用が強いトコトリエノールという成分を取り出しても、米油の含有量が突出しています。
米油の栄養素、2つ目は植物ステロール
植物ステロールには、
①コレステロールの吸収を抑えて、LDLコレステロール値を下げる効果
②リンパ球の中のナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化させる効果
があります。
米油の栄養素、3つ目はγオリザノール
γオリザノールは、血液脳関門という脳に入るための関所を通過して、脳内で抗酸化作用、抗炎症作用の働きをします。
そのことによって、脳機能の維持に効果が期待できます。
またγオリザノールは、脳の視床下部に作用して、自律神経を整える働きもあります。
米油の脂肪酸組成 オメガいくつ?
脂肪酸組成とは、
EPA DHAや亜麻仁油のαリノレン酸(オメガ3)
サラダ油、菜種油のリノール酸(オメガ6)
オリーブオイルのオレイン酸(オメガ9)
それらの脂肪酸の比率のことです。
米油の主な脂肪酸組成は、
オレイン酸が42%、
リノール酸が36%
という、非常に微妙な立ち位置です。
42%のオレイン酸(オメガ9)は、推奨できる脂肪酸です。
が、36%のリノール酸(オメガ6)は、過剰に摂ると炎症促進をはじめ悪いことだらけの脂質です。
米油は、リノール酸とオレイン酸(若干多い)が共存しています。
悩ましい所です。
ごま油の脂肪酸組成も米油に近く、
オレイン酸が40%
リノール酸が44%
(リノール酸の方が若干多い)
ごま油は、風味をつける時に必要な油です。
食事の味つけは大事ですので、必要な場面がある油です。
では、米油にはそのような「必要な場面」があるのでしょうか。
答えは、「あると言えばある」です。
米油の“意外な”効果、使い方が3つ
①ご飯に入れる
ご飯を炊く時に米油を少々入れると、ふっくらとつやが出て、お米本来の甘みや旨味を引き出します。
②味噌汁に入れる
味噌汁に米油を4〜5滴入れると、味がまろやかになります。
③フライパントーストに塗る
フライパンに米油を敷いてパンの両面を軽く焼くと、香ばしさが増します。
以上、米油の“意外な”効果、使い方があります。
私も、3つの効果を検証してみました。
結果は「ハッキリと違う」というよりは「何となく違う」感じでした。
(あくまでも個人差があるので、一度試してみるといいでしょう)
米油の製法と価格
米油を抽出する方法には、溶剤抽出法と圧搾法があります。
溶剤抽出は低コストで製造できるため、500g当たり400〜600円前後と、リーズナブルな価格で商品を購入できます。
流通している商品のほとんどが溶剤抽出です。
一方の圧搾法は昔ながらの抽出法で、油本来の製法と言えます。
ただ、もっとも望ましい低温圧搾で米油を抽出するのは難しく、おそらく商品は存在しません。
そこで、蒸気精製法(スチームリファイニング法)で圧搾、抽出します。
この製法の商品も数は少なく、価格も高めです。
写真の「三和油脂コメーユ」は、450g入りで2000円近くします。
「米油は体に悪い」という声を耳にするが
「米油は体に悪い」と言われる理由は、溶剤抽出法で製造する際に、ノルマルヘキサンという溶剤を使うからです。
ノルマルヘキサンは、ガソリンに多く含まれる成分であるために危険だと言われます。
ただ実際は、抽出に使われるノルマルヘキサンは、抽出後の蒸留ですべて取り除かれるために、米油に残ることはありません。
その点では心配ありません。
結論として、米油は「買い」かどうかですが・・・
実際に試してみて効果を感じられる場合には、場面場面で使うのは“あり”かなとは思います。
まとめ
米油は米糠から抽出した油ですので、糠層に豊富な栄養素を摂ることができます。
代表的なものは、
ビタミンE
(トコトリエノール)、
植物ステロール、
γオリザノール
米油の脂肪酸組成は、
オレイン酸42%、
リノール酸36%
で、両者が共存しています。
米油の“意外な”効果は
①ご飯を炊く時に入れると、お米本来の甘みや旨味を引き出す
②味噌汁に入れると、味がまろやかになる
③フライパンに敷いてパンを焼くと、香ばしさが増す
この3つです。
溶剤抽出による米油はコストが低く、価格は比較的安価です。
圧搾法は油本来の製法ですが、米油を低温圧搾で抽出するのは難しく、
圧搾 ⇨ 蒸気精製法で抽出する製法がほとんどです。
「米油は体に悪い」と言われる理由は、溶剤抽出法で製造する際に、ガソリンに多く含まれるノルマルヘキサンという溶剤を使うからです。
しかし、ノルマルヘキサンは、抽出後の蒸留ですべて取り除かれるために、米油に残ることはありません。
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