
ソフトウェアエンジニアがグローバル企業に転職するまでの準備を振り返る
2025年1月14日付で前職を退職し、同年1月15日から日系のグローバル企業で働いています。会社名をここに書くと少し面倒なので書きませんが、基本的には外資ITと同等の環境で、転職の準備についても基本は同じと思って頂いて差し支えないと思います。私は2018年に千葉大学院の情報科学専攻を修了し、同年ヤフーにソフトウェアエンジニアとして新卒入社し、今回の転職に至りました。退職エントリについては以下をご確認ください。これまでの経歴についても丁寧に書いています。
本記事の概要
本記事では主に私が個人的に行った転職の準備についてまとめます。特に英語での面接は日本語の情報が少なく手探りで進めた部分が多かったため、一つの記事にまとめておくことには一定の価値があると考えています。誰かのお役に立てば幸いです。
ちなみに、英語学習全般については別途以下の記事で丁寧に振り返っていますのでこちらもよろしければご確認ください。
注意点
本記事は、あくまで個人的な転職準備の記録であり、会社とは一切関係ありません。面接内容についてもNDA(秘密保持契約)により記載できませんのでご承知おきください。転職前の転職準備に関する情報のみをまとめているため、会社にとって不利益となるようないかなる情報も一切含みません。
なお、文中に出てくる書籍のリンクはAmazonアソシエイトのリンクです。
普段から行っていたこと
まずは、特別転職を意識してというわけではなく、普段から日常的に行なっていたことを書きます。チャンスを呼び寄せるとか、いざチャンスが来た時に掴むとか、そういったことのための行いです。結局、日々の業務や自己研鑽が最も重要だと思います。
人に伝え易い経験を意識して積む
業務や業務外でも学ぶ
LinkedInのプロフィールを英語で整える
英語学習
人に伝え易い経験を意識して積む
なるべく「人に伝え易い成果」を出すことを意識していました。具体的には「Xという課題を解決するため、Yという機能を開発し、Zという成果を達成」といった感じで伝えられるようなプロジェクトを多く担当するように意識して過ごしていました。英語では特に、STARメソッドという方法を使って簡潔に分かり易く成果を伝えることが求められます。
一つのサービスに長く所属していると、そのサービスだけにどっぷり浸かったある意味単調な手作業ばかりやっていて、気づけばここ1年は履歴書に書けるような成果がほんの少ししかなかった、なんてことが起こり得ます。もちろんそういった仕事も大事なんですが、そもそもソフトウェアエンジニアの仕事はそういった単調な作業を自動化することにこそあります。本質的な意味で怠惰になれるように、手作業が増えていたらマネージャー等とかけ合ってきちんとプロジェクト化して、会社の利益やコスト削減に貢献する成果を上げていくことが大事になってくると私は思います。
業務や業務外でも学ぶ
旧ヤフーにはTech Upという制度があり、月に1万円までクリエイティブなことに関わる費用の補助が出ていました。LINEヤフーになってからは用途を指定せずに給料に上乗せする形で同額の補助が出ていました。私はそのお金のほとんどを毎月ほぼ欠かさず本の購入費や個人開発費にあてていました。何か新しい面白い本がないかを定期的に探すきっかけになるし、積読を解消するために本を読む習慣ができたので非常に助かりました。
特に働き始めると、直接業務に関わること以外で新しいことを学ぶ機会が減ると感じます。業務についても、半年〜1年くらいするとワンパターンに感じるようになります。その後は自ら積極的に新しいことに挑戦しない限り、成長が停滞します。
SNSでは定期的にソフトウェアエンジニアの勉強について議論されていますが、私個人の観測範囲では、ソフトウェアエンジニアの世界でも「学び続ける人」は一部に過ぎません。私自身も育児などで学習の習慣を途切れさせてしまった時期がありましたが、なるべく以下のことを心がけるようにしてきました。
• 常に積極性を持つ
「教えてもらう」のを待つだけでは、新しいスキルを身につける機会は限られます。私は未知の領域にも積極的に手を挙げ、挑戦する姿勢を大切にしてきました。多くの人が失敗を恐れて挑戦を避けがちですが、私は「今できないことでもとりあえず積極的に引き受け、周りのヘルプを借りながらでも成し遂げる」ことで成長できると考えています。チームメンバーやマネージャーも仲間であり、私の成功を願っています。人に丸投げするわけではなく、あくまで自分でドライブする姿勢を持って質問すれば、喜んで助けてくれました。
• 業務外での学習
業務の中で必要なスキルを学ぶのもとても大事ですが、自分の基礎的な能力を向上させたり根本的な生産性を上げたりするには、業務外での学習が不可欠だと私は思います。
私がこれまで読んできた本の中で敢えてここでおすすめするとしたら「SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル 第2版 - ジョン・ソンメズ」です。技術的な本ではありません。読んでみて私はかなりやる気が湧いてきて、体を動かす習慣ができたり、個人でアプリ開発するようになったり、Audibleで読書するようになったり、具体的にポジティブな変化がありました。終盤に「一日一食しか食わない」みたいな極端な話が出てくるのでそういうのは話半分で読みました。
もう一つ、最近読んだ本のおすすめは「世界一流エンジニアの思考法 - 牛尾 剛」です。私が今まで働く中で感じていた仕事に対する違和感がかなりスッキリして、今後どう行動していくべきかがよりはっきり分かるようになりました。
LinkedInのプロフィールを英語で整える
LinkedInを英語で書いておくと結構英語で世界中の企業のリクルーターさんから連絡が来ます。ちなみに日系企業のリクルーターさんから日本語でも来るので、チャンスを広げるという意味では英語で書いておく方が良いと私は思います。
英語学習
こちらは前述の通り以下の記事に切り出しているので興味があればご一読ください。
転職に向けて具体的にやったこと
以前の職場では一定の成果を出しある程度やり切った感があり、新しい挑戦も中々見つけられなくなってきました。そんな中、以前から興味を持っていたいくつかの企業のリクルーターさんからLinkedIn経由でお声がけいただき、次のステップを考える良いタイミングだと思い、面接を受けることにしました。家庭の事情ですぐに面接を受けることはできなかったので、そこから数ヶ月間は次のことをやりました。
転職先候補を決める
受けたいポジションのJob descriptionや会社のWebページを入念に確認する
過去の経験を整理してresumeを整える
典型的なBehavioral Interviewに対する受け応えを英文で準備し練習する
コーディング面接を練習する(NeetCode(LeetCode)の復習)
システムデザイン面接を練習する
※当然ながら募集中のポジションが埋まったらすぐにクローズされるので、私のように数ヶ月も空けるのは得策ではなく、基本的には声がかかったらすぐに応募する方が面接に呼んでもらえる可能性が高まり成功率も上がります。私の場合も結局最初に声がかかったチームはポジションが面接前にクローズされたので、結果的に別のチームに応募して採用となりました。
※LeetCodeは特に面接は関係なく普段からちょこちょこやってましたが、場所が散ると読みにくかったのでこちらにまとめました。
転職先候補を決める
転職先としては以下の希望が叶えられる企業を探しました。
国際的な環境で英語を使って働き海外にもプロダクトを届けたい
IC(Indivisual Contributor)としてキャリアアップしより裁量を持って働きたい
その他にも、以下の条件は大事にしようと思っていました。
給与のアップが見込める (転職はリスクを伴うため)
副業ができる (サイドでアプリ開発を続けたいため)
ちなみに宣伝ですが、現在こんなiOSアプリをリリースしています。時もち(Time Rich)の方は最近1万ダウンロードを超えました。最近は色々と忙しくあまり更新していませんが、今後もサイドでの活動は続ける予定です。
これらを鑑みて、LinkedInまたはビズリーチで転職エージェントではなく社内のリクルーターさんから連絡を頂いていた企業からいくつか選んで受けてみることにしました。
受けたいポジションのJob descriptionや会社のWebページを入念に確認する
どのJob descriptionにも「must have」と「nice to have」みたいなスキルセットが書いてあり、特に「must have」を満たさなければそもそも履歴書かHiring Managerによる面接でほぼ間違いなく落ちるので、満たすかどうかをきちんと確認しました。また会社のWebページに書いてある事業内容や価値観といった情報も入念に確認しました。最後に、GlassdoorやOpen Work、Open Moneyといったサイトの口コミも確認し、特に評価の低いレビューが自分にとって致命的な理由になり得ないかを確認しました。
この時点で、結果的に勤めることになった企業から順に一社ずつ受けることに決めました。一社目でオファーをいただけたので、一社だけで活動は終了しました。なお、転職活動のセオリー的には複数の企業を同時に受けて複数のオファーを並べて交渉するべきだと思います。私は転職に慣れていなかったしそもそも器用ではないので、そういったことをやる心理的余裕がありませんでした。
過去の経験を整理してresumeを整える
ResumeはGoogle Docsのテンプレートを使いました。いくつかいい感じのテンプレートがあるんですが、私は1カラムのものを選びました。
あとは「How to write resume software engineer」とかでググって出てきた例えば以下のようなサイトを参考に経験を整理しながら初版を書き、Chat GPTと相談しつつ仕上げました。
過去の経験を短い文章で整理するのが結構大変です。調べているとどうやら1ページに収めるのがいいっぽいですが、私が最低限書きたい内容を踏まえるとどう考えても1ページでは収まらなかったので2ページにしました。それでもプロジェクト単位で羅列なんてしていたらとてもスペースが足りないので、Job descriptionにマッチする経験を厳選し、インパクトのある短文にまとめるというのを何度も繰り返して洗練していきました。
典型的なBehavioral Interviewに対する受け応えを英文で準備し練習する
まずresumeに書いた話はSTARメソッドで英語で語れるように何度も練習しました。Job Descriptionを参考にしてChat GPTにも面接を想定した質問を考えてもらって、返答を書き出し添削してもらって改善を繰り返し、出来上がったQ&Aを声に出して録音し、反復練習したりランニングしながら聞き流したりもしました。
その他にも例えば「なぜ辞めるのか」「なぜこの会社に入りたいのか」「Tell me about yourself」辺りは100%聞かれる質問なので、英語でペラペラ喋れるように練習しました。
転職準備を進める中で、interviewguide.dev の内容が非常に参考になりました。このサイトには、「STARメソッドで語れる経験」を整理するための具体的なフレームワークや、面接準備に役立つ情報が満載です。
「世界で闘うプログラミング力を鍛える本 コーディング面接189問とその解法 - Gayle Laakmann McDowell」という本の内容も参考にしました。この本はコーディング面接に関する問題とその解答が大部分を占めていますが、私はそれ以外の冒頭の部分の方が参考になりました。コーディングについては今はLeetCodeなど interactive に学習できるツールがたくさんあるので、そっちの方が飽きなくて私は好きです。
あとは、疲れた時にYoutubeで how to を検索して動画を見たりもしてました。参考にさせていただいたチャンネルをいくつか貼っておきます。
コーディング面接を練習する(NeetCode(LeetCode)の復習)
場所が散ると読みづらいのでここにまとめて書いてますが、NeetCodeを使った学習に関しては転職を意識する前からやっていたので、転職を意識してからはその復習を中心に対策しました。どうしても時間がかかるものなので、普段からやっておくというスタンスが理想的だと思います。
LeetCodeとは?
そもそもLeetCodeとは、ソフトウェアエンジニアの就職・転職面接で出題されるデータ構造やアルゴリズムの問題をまとめたプラットフォームです。競技プログラミングと比較すると、より「基礎的なデータ構造とアルゴリズム」に関する問題が多く、“勉強してる感” が強い印象があります。
現在、3,000問以上の問題が公開されており、本格的に学習しようとすると数ヶ月〜数年単位のスパンでの取り組みが必要になります。各企業が実際の面接で出題した問題もそのまま掲載されていることがあり、「倫理的にどうなのか?」という議論が定期的に起こるものの、現状では「やらないと出遅れる」ほど必須の存在になっています。
https://leetcode.com/problemset/
NeetCodeとは?
そしてNeetCodeとは、元GoogleエンジニアのNeetCodeさんが、自身のニート時代にLeetCodeで学習した経験をもとに作成したサイトです。「LeetCode 進め方」などで検索すると頻繁に目にするようになり、私も気になって調べたところ、非常に有用な学習リソースであることが分かりました。
以下の動画を見るとどんなものか分かり易いと思います。NeetCodeさんはその解説の上手さもそうですが全体的に動画のクオリティも素晴らしいです。
Redditに「Why is everybody doing Neetcode 150?」という質問があがっているくらい有名なようで、LeetCodeを初めて進める人にとってはデファクトスタンダードになっていると言っても過言ではありません。NeetCodeには以下のような特徴があります。
LeetCodeの代表的なトピックから150問が選ばれており、全ての問題に丁寧なYouTubeの解説動画(英語)がついている
どのトピックをどういう順番で解いていくと知識獲得の観点で効率が良いかを示したロードマップがある。
一つ一つの問題はLeetCodeの問題に対応しているが、NeetCodeというサイト上でも問題が解ける
このロードマップと解説動画がかなり秀逸で、3~5年くらい前にLeetCodeを使っていた時はまだ自分の目に留まるほど有名でなく、LeetCodeの学習って大変だな〜という印象を持っていたので、進めるにつれてどんどん感動していきました。
学習の目安と私のこれまでの学習
LeetCodeのMediumレベルの問題を20〜30分程度で解けるようになれば、ほとんどの企業の面接では十分対応できると言われています。NeetCodeの150問は、よく出題されるパターンを網羅しており、これをしっかり理解すれば他の問題もかなり解けるようになる、という意図で設計されています。
私自身、こういった問題は得意ではなかったため、合計するとかなりの時間をかけています。過去には、やる気が出たときに集中的に取り組み、しばらくやらなくなる…を繰り返していました。しかし、NeetCodeの動画解説を見ながらだとわりとモチベーションを保つことができ、全てやり遂げたことでかなり基礎力及び自信がついたと感じました。
現在までに累計650問程度を解いていましたが、復習を兼ねて同じ問題を何度も解いています。「マスターした」という感覚は全然なく、初見の難易度の高い問題が出れば解けないことも全然あると思います。しばらくやらないと忘れちゃうので、今後も必要に応じて継続的に取り組んでいくつもりです。
ちなみに interviewguide.dev にもこんなことが書いてありました。
How much Leetcode practicing is enough?
This is a very hard question to answer! I did somewhere around 220 total questions last time around and had a lot of success during my interviews. That being said, some people do well practicing less and some people don't do well practicing more. There are a couple of realities here:
- Quality of your practicing is more important than quantity. If you complete a ton of questions but only because you look at the answer every time, you're not really developing your problem-solving skills.
- There's a good bit of luck when you interviewing. Practicing more problems increases the likelihood that you'll have success in an interview, but there's always a decent chance even the most practiced person will be stumped.
The truth is I never felt truly ready to interview for Leetcode-style questions, but I did a couple hundred questions and just went for it.
Exponent(旧Pramp)での模擬面接
LeetCodeの問題を解けるようにすることも大切ですが、それと同じくらい、明快に説明しながら解くスキルも重要です。特に、解けない問題に直面した際に、適切にコミュニケーションを取りながら粘ることが求められます。
私は過去にこの部分を軽視して失敗した経験があるため、今回は英語で話しながら解く練習も意識的に行いました。その一環として、Exponent(旧Pramp) を利用して模擬面接にも取り組みました。
Exponent (旧 Pramp) とは?
面接練習を希望するエンジニア同士が、30分ずつ面接官役と受験者役を交代 しながら計1時間の模擬面接を行うことができるプラットフォームです。それ以外にも色んな機能があります。
以前のPramp時代はこの機能については無制限で無料だったようですが、Exponentでは2024年時点で月5回まで無料になっていました。私は3回実施しました。
1回目はかなり慣れてる感じの人で、最初に私が面接官役だったのですが、ちょっと捻った二分探索の問題をその人は5分以内に完璧に解いてしまって早々に終了しました。今度は私が面接を受ける役でしたが、2次元DP(動的計画法)の問題が出て結局最後まで解けませんでした。久々の英会話ということもあり結構本番さながらに焦ったので、慣れのためには良い練習になったと思います。
しかし、2回目以降は相手が初心者すぎて再帰が理解できていなかったり、通信環境が悪くスムーズに会話できなかったりと、正直あまり実りのある練習にはなりませんでした。そのため、「それなら自分で時間を測って問題を解いた方が効率的では?」と感じ、3回で終了しました。ただ、少なくともこの3回は面接慣れという意味で価値があったと思います。
LeetCodeも大事だが…
未だに特にミドルレベル以下のポジションだとLeetCodeスタイルの面接が中心となる企業も多いのは事実ですが、昔から「LeetCodeスタイルの面接では本当の技術力は見抜けない」といった反対意見も世界中で根強くあり、interviewguide.dev にもあるように、LeetCodeスタイルの面接は実施していない企業もたくさんあります。もちろん、同じ企業の中でもチームによって面接スタイルは変わるので、一部では実施するし、一部では実施しない、ということも十分にあり得ます。
While many companies (especially big tech companies) conduct Leetcode-style interviews, it's important to recognize that many other companies don't perform these kinds of interviews. This Github repo has a list of companies that don't perform Leetcode-style interviews. Additionally, if you're interested in a company and are curious as to whether the do Leetcode-style interviews, be sure to check out the interview section of their Glassdoor page. If you're really uncomfortable with the idea of algorithm and data structure challenges, you can definitely find great jobs where you don't have to solve these puzzles.
私個人の意見としては、「確かにデータ構造とアルゴリズムの理解は大事だけど、難しい問題を素早く解く能力が今後もずっと求められるかは疑問」です。前述の通り、特にHardレベルになってくるとLeetCodeスタイルの問題の学習は人によってはとても時間がかかりますし、上には上がいるのでキリがありません。私だけでなく、そう感じている人は世界中にたくさんいるようです。
また最近はこの分野でもAIの進化が凄まじく、すでにほとんどの人よりはAIの方が解けるようになっています。チートされるリスクを考えると、オンラインコーディングテストの実施も難しくなってきているように思います。
Easy~Mediumの中難易度以下程度の問題が解ければ、アプリケーションを開発するソフトウェアエンジニアの基礎的な理解としては十分なのではないかなと思っています。それよりも、特定の条件に基づいた実際のアプリケーション開発力やシステム設計力を見る方が重視されていくのではないかな、と思っています。面接だけに特化した能力を見るというのは、双方(面接を受ける人と会社)にとってあまり合理的ではないのではないかと思います。
システムデザイン面接を練習する
昨今はシステムデザインがより重要になってきているという噂もRedditやXで目にします。そもそもジュニアレベルのポジションが中々空かない時期が長いのもあると思いますが。会社によっては、LeetCode的な問題は軽い確認程度に済ませて、より実践的なプログラムを組む宿題を課したり、システムデザイン面接の比重を重くしたりしているところもあるようです。
システムデザインの勉強法について色々調べましたが、私個人的には結局以下二つのコンテンツが今のところベストなんじゃないかなと思いました。
System Design Interview - Alex Xu
まずはこれです。これはもう世界的にもかなり有名な本です。
なんと日本語訳も出てます。
私はたまたま両方とも買って積読してたので、このタイミングで一応両方とも読みました。
読んでみると分かりますが、普段から仕事やサイドプロジェクトで自分でシステム全体を設計している人からすると、わりと当たり前な内容も多いです。ただ自分がよく知らない技術の話も出てくるので、知識の幅を拡げるという意味ではほとんどの人にとって役に立つのではないかなと思います。
Hello Interview
そしてこのHello Interviewです。なるほど、システムデザイン面接はこうやればいいんだ!と一発で感じられる内容になっていて、マジでびっくりしました。この動画に出ておられる Evan さんという方は元々Metaでスタッフエンジニアをされてた方のようで、私は特にここで提案されているシステムデザイン面接のフレームワークが素晴らしいと思いました。1時間という枠が決まってる中でのシステムデザインというのはちょっと特殊なので、タイムマネジメントも含めて少しコツがいります。こういったフレームワークに沿って考えるようにしておくと便利です。本当に素晴らしいので一度見てみてください。
その他のコンテンツ
「データ指向アプリケーションデザイン - Martin Kleppmann」もかなり有名です。
全部読破しようとするとかなりボリューミーなので大変ですし、RedditでHello Interview創業者のEvanさんも「DDIA(※↑の本)は面接対策としては深過ぎるし広過ぎる」みたいなことを仰ってました。
Q: Do I need to read DDIA?
A: No, it's a great resource. But far too dense and has way more information than you need for an interview. If you have endless time, go for it, but most don't and their are better ways to study.
とは言っても良い学習にはなるので、私は流すところは流しつつ緩急つけながら読みました。ちなみに英語版ならAudibleにもありました。これも重要そうなところだけ走りながら聴いたりもしました。
「クラウドアプリケーション 10の設計原則 「Azureアプリケーションアーキテクチャガイド」から学ぶ普遍的な原理原則 - 真壁 徹」という本もサラッと読めて良かったです。私はAzureは使ったことありませんがそれは全然問題じゃなかったです。
自分で手を動かしてやってみる
Hello Interviewでも「自分で手を動かしてやってみるのが大事だ」と何度も強調されていたので、私も手を動かしていくつかのデザインをやってみました。Job Descriptionを読んでシステムを想像してそのデザインや追加機能を考えて時間を測ってデザインしてみたりしました。
ホワイトボードツールとしてはテック界では Excalidraw が有名みたいです。
あんまり使い心地が変わらなかったので、私は少しだけ慣れてるMiroを使って練習しました。
転職のための準備は以上で終わりですが、以降では転職全般に対する私の考えを簡単にまとめておきます。
ポジティブな理由で転職する
転職は大変です。この記事にも書いたように、改めて整理してみると準備することは山ほどありますし、環境の変化には多大な不安とストレスが伴います。私もまだ転職したばかりなので、新たな環境へ適応するために頑張っているところです。
転職で手取りを増やす
でも、転職も見据えたキャリア形成をしていくと、明確に自分にもメリットがあります。その代表が給与です。昨今は物価高の影響もあり「手取りを増やす」が政治の主題にもなっていて大きな話題を呼んでいます。昇給に興味がない人なんてほとんどいないと思います。
以下の記事にあるように、日本はまだまだ転職が少なく、他国と比較して「現状の職場に不満や嫌なことがある」といったネガティブな理由が転職理由になりやすい傾向があるそうです。またそう言った理由からか、「転職時に給与が上がらない、もしくは減ることに対する抵抗が小さい」という傾向もあるそうです。
私は日本でも、特段不満があるわけではなくても、給与を増やす・キャリアアップの一環として転職する、という風潮はもっともっと流行ってもいいんじゃないかなと思っています。政治に対して個人が働きかけられることは限られていますが、転職は自分でコントロール可能なので、こっちの方がより実現可能性が高いのではないかなと思います。
終身雇用の終わり
そういえば以前、トヨタの社長が記者会見で以下のように述べたことが話題になっていました。
「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」
終身雇用が当たり前の世界では、給与を上げるには「会社に奉公して上司に認められて管理職に登用してもらう」というルートが基本でした。今となっては終身雇用も難しくなってきているし、実際に大企業でも経営不振に陥ってリストラや買収がガンガン起きています。「確かに大企業が潰れることは稀だけど、人は切られる」というのはかなり一般的になってきました。
今の日本は空前の人手不足で、市場としても労働者優位になっています。労働者の方さえその気になれば、もっと加速度的に手取りは増えていくんじゃないかなと思います。
心理学者のキャンベルは、人生をコントロールできているという感覚が幸福の鍵であると述べていました。(最近読んだ「サイコロジー・オブ・マネー」という本に出てきました)
転職によって一時的には大変なこともありますが、結果的には自分で人生をコントロールできている感覚が高まって、幸福感も高まると思います。
手を動かす人を大事にする会社が増えてほしい
私は日本で実際に手を動かしているソフトウェアエンジニアがもっともっとスキルアップしてどんどんキャリアアップして高い給料を貰えるようになるといいなと思いますし、AIに惑わされず上手く活用しながら粛々とスキルアップできる優秀な方にどんどんソフトウェアエンジニアになっていってほしいなと思っています。そしてそんな素晴らしい能力を持ったソフトウェアエンジニアを大事にする企業がもっともっと増えていけばいいなと思います。私もソフトウェアエンジニアとして成長を続け少しでも多く社会に良い影響をもたらせるように、これからも引き続きがんばります。
最後に
もしこの記事を読んで、私に質問や相談したいことがあれば、ぜひ以下のGoogleフォームやSNSでお気軽にご連絡ください。前回退職エントリーにも同じフォームを貼ったところたくさんの方からご相談いただき、今後のサイドプロジェクトを考える上でも非常に参考になったので、引き続きこちらにも貼っておきます。年度末くらいまで忙しいのでお時間はいただきますが、可能な限りお答えしたいと思います。
大変長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。