経営者のためのChatGPTを使った独自チャットボットの仕組み解説(後編)
こんにちは。株式会社ゼタントでCEOをやっている久保です。前編に引き続き、ChatGPTの仕組みを利用した独自チャットボットを作るにはどうすればいいかを、「詳しくわかった気になれる」ように説明します。
ChatGPTと社内情報など特定の情報に特化したチャットボットの違い
ChatGPTは生成AIと呼ばれるタイプのAIで、インターネット全体から情報を収集して、文章のパターンを分析(=学習)することで、様々な受け答えができるようになっています。生成AIのイメージは下図のような感じです。
「インターネット全体から情報を収集」というところが問題です。つまりこれは、ネットに公開されている情報のことしか知らないということです。
一方、社内情報はネットには公開されていないため、ChatGPT(の生成AI)はその情報を知る由もありません。そのため、社内情報に基づいて応答するチャットボットを作るためには工夫が必要です。
工夫の方向性は大きく2つ
ものすごくざっくり言えば、次の2種類の工夫の方向性があります。
生成AIに社内の情報を追加でさらに教え込む
生成AIはそのままで、質問の中に前提知識として社内の情報を含めておいて、うまく答えてもらう
一つ目の「追加でさらに教え込む」というのは、生成AIをトレーニングしてもっと賢くするイメージです。そのためには、教え込みたい業務に関連する様々な情報(文章)を生成AIに教え込むのに適した形式にしたものを準備して、生成AIに学習させます。例えばChatGPTを提供しているOpenAIは、このような追加のトレーニングを行うためのファインチューニングという仕組みを提供しています。
もう一つの「質問の中に前提知識として社内の情報を含めておいて、うまく答えてもらう」方法ですが、生成AIには与えられた情報をいい感じにまとめてもらうという役割を担わせるイメージです。例えばこんな感じです。
ChatGPT自体は社内ルールなど知りませんが、このような質問文を送ると、それなりにまともな答えを返してくれます。理屈はこういうことなのですが、上の例では質問文に合った社内規定などの情報を「前提」のところに書かなければなりません。お気づきのように、「それはどこから持ってくるのか?」という問題が発生します。大雑把ですが、例えば以下のような質問文作成システムを作る必要があります。データベースに社内の情報を整理して入れておきます。
どっちが楽か?
まず、どちらにしても大量の質の良い情報が必要です。ここでいう質がいいというのは、Q&Aのような形で形式が綺麗に揃っていたり、含まれる文章に矛盾がなかったり、色々な表現が含まれていたりすることです。前節のいずれの方法であっても情報を用意することが最も重要であり、もっとも労力が必要です。AIを使った仕組みを自分たちで作る場合、ここが成否を決めると言っても過言ではありません。
そして、元も子もないですが、前節の2つの方法はどちらも一長一短があり、どちらが楽かは一概には言えません。
生成AIに社内の情報を追加でさらに教え込む方法の場合、余分なシステムは不要ですが、社内情報を追加したり削除したりするのが苦手です(また教え直さないといけないので)。また、生成AIが元々持っている知識(ネット上にあった情報で学習した知識)にも引っ張られた回答をしてしまう可能性が高くなり、それが期待に反するものになるかもしれません。
質問の中に前提知識として社内の情報を含める方法はの場合、Q&Aの情報を別のデータベースで管理するので、社内情報の追加や削除が簡単で、常に最新の社内情報に基づく回答が得られます。ただ、生成AIに与えることができる質問文の長さには制約がある(または長くなるとお金が高くなる)ため、正しい前提を与えられず、中途半端な回答を返してしまう可能性があります。
したがって、どんな情報を用意できるか、どのくらいの頻度で最新情報を更新したいのか、などを鑑みて方法を検討するのが良いでしょう。
さいごに
この記事では、社内情報のように公開されていない情報に特化したチャットボットの作り方について説明しました。専門家からみるとツッコミどころはたくさんあるかもしれませんが、大枠を理解する上ではそれほど問題はないと思います。
技術は日々進化しているので、細かいところはどんどん変わっていきますが、大きな方向性としてはトレンドがあります。経営者やビジネス担当の方々は、イメージだけは理解しつつ、導入するのに何が大変なのか(今回の記事だと、質の良い大量の情報を用意すること)を押さえていただくと、次の具体的な一歩を踏み出しやすくなると思います。
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