【麻雀うんちく】青天井ルールから見た麻雀の醍醐味の話、青天井点数表を作ってみた話
「青天井ルール」という麻雀の遊び方をご存じだろうか。
晴天の下、ピクニック気分でやる麻雀のことではない。点数の増え方が特殊なルールのことだ。
『麻雀放浪記』や『ムダヅモ無き改革』などの作品でもとりあげられたド派手なルールなのだが、あまり流行っていない(ように感じる)。
なぜだろうか。今回はこの問いから麻雀の魅力・醍醐味について考えてみる。
通常ルール「満貫打ち切り」
先ずは、前提として通常ルールの点数をおさらいしておこう。次のグラフを見てほしい。
横軸が飜で、縦軸が点数だ。飜が増えると、点数も高くなる。基本的に右肩上がりだが、途中で曲線が折れ線に変わっていることに注目してほしい。
1飜~4飜の部分では、飜が増えるたびに点数がほぼ2倍になっている。ぐいぐいっと上がる曲線だ。それに対して、4飜以降は点数の増え方が不規則だ。せっかく1飜増やしても300点しか増えなかったり、同じ点数だったりしている。
これは「満貫打ち切り」という方式のせいだ。麻雀では、満貫まで(子8,000点・親12,000点 未満)の点数はとある式で算出し、満貫以上は計算をやめて固定の点数になる。
(点数の計算式について、詳しくは以前の記事に書いたので、気になる人は読んでみてほしい。)
なぜ、そんなことをするのか。
もう一度グラフを見てもらおう。次は点線の部分に注目してほしい。
この点線は、「満貫打ち切り」をせずに、数式で計算し続けたときの曲線だ。すごい上がり方をしている。倍々に増えるので、5飜で15,400点、6飜で30,800点、7飜で61,500点……。グラフが縦長になりすぎて、7飜までしかおさまっていない。
このように、そのまま計算を続けるととんでもない点数になってしまう。そんな訳で、通常の麻雀では満貫以上は計算をやめ、それなりの点数に調整されている。
さて、もうお察しの方も多いだろう。この倍々曲線をそのまま使ってしまおうという狂気の点数方式こそが、「青天井ルール」なのである。
狂気の青天井ルール
「青天井」とは
株式などで使われる用語らしい。
麻雀の青天井ルールでは、飜が増えるごとに、どこまでも点数が倍になっていく。数学で言うところの累乗や、指数関数だ。
指数関数の逸話では、秀吉が家臣に一杯くわされた話や、新聞紙を数十回折ると月に届くといった話が有名だろう。
倍・倍・倍……と続けると、少ない回数でも天文学的な数字になってしまうという性質をうまく表している。
点数の一例を見てみよう。
ハチャメチャな点数例
東1局、東家(親)のリーチ。
🀇🀈🀉🀊🀋🀌🀍🀎🀏🀅 🀫🀀🀀🀫 🀅でロン。
リーチ……1飜
門前 混一色(メンホン)……3飜
一気通貫……2飜
ダブ東……2飜
70符 8飜で、通常なら倍満24,000点だ。ずいぶん高い手だが、ありえないほどではない。
これを青天井ルールで計算してみると、
なんと43万と100点。もし原点が25,000点だったら、この放銃だけで17回とべる。もう、円広志だ。
点数表を作ってみた
せっかく作ったので点数表を共有しておく。特殊な事情も考慮して0飜の計算もしておいた。いつか役に立つときが来るかもしれない。
縦列に飜、横行に符を見る。同じ符と飜のマスに4種類の数字がある。マスの中では次のように見ることができる。
役満(13飜)を見ると、だいたい400万点~といったオーダーになっている。持ち点はそのぐらいに設定しておくのがよさそうだ。
実際どうやるの
ご覧の通り、点棒は全く役に立たない。青天井で遊ぶには、電子計算機と点数を記録するものが必須になる。両方を兼ね備えたExcelやスプレッドシートを使うのが現実的だ。
点数表を見るのが煩わしい場合は、予め数式を入れておくのもいいし、ブラウザで計算してくれるサイトを使うのもいい。
そして最も手っ取り早いのが、青天井に対応しているオンライン麻雀サービスだ。
検索すると、この2つが挙がった。他にも、期間限定イベントで採用していたゲームもあったけれど、常設で遊べるのはこの2つだけのようだった。
これだけ麻雀ゲームが沢山リリースされている中で2つだけということは、やはり青天井ルールはそんなに流行っていないらしい。
青天井では味わえない麻雀の醍醐味
ここからは持論だ。
人によって麻雀の楽しみ方はそれぞれでも、面白味を感じる部分は似通っていると思う。そして、その部分・魅力は経験値に応じて少しずつ変化していく。だいたい次のようなステップアップをするのではないだろうか。
とにかく手をそろえること、あがること
危険な場面での押し引き
点差や局面・条件を意識した打ちまわし
危険度のグラデーションがわかってくると、押し引きを楽しめるようになるし、点数計算ができるようになってくると、着順アップ条件などが意識できるようになる。
やや危険な牌は押すけど、「もう無理」と止めた牌が当たりだったときの「してやったり感」。オーラスで安い聴牌を取らず、遠回りしてでも条件を乗り越え、見事トップをまくったときのよろこび。
このようなハラハラとして、ヒリついた展開をテンポよくサクサク味わえる。
これが麻雀の醍醐味だ。
一方で、青天井ルールではどうだろうか。
押し引きは楽しめそうだが、条件を意識した打ち方をする場面は少ないと思う。何せ点数の振れ幅がすさまじい。1飜でも多く役をつけ、ドラを乗せ、高い手をあがった人の勝利だ。リーチ棒が出たからとか、2本場だからとか、まるで関係がない。
桁数が大きく、条件の計算がぱっとしにくいのも原因だろう。「よくわからないけど、高い手を作ろう」という意識になると、勝ったときも「よくわからないけど、勝てた」というボヤっとしたよろこびで終わってしまうかもしれない。少しもったいない。
素晴らしき調整役「満貫打ち切り」
青天井ルールを知ることで、改めて「満貫打ち切り」が見事な調整だったと気付かされた。絶妙な塩梅で、駆け引きを生んでいたのだ。
これからの麻雀人生は、満貫や跳満達に感謝して生きていかなくてはいけない。うっかり満貫以上を振り込んでしまったときは、勢いよく「ありがとうございます!」と発声しよう。
そして「まだ麻雀の点数がよくわからなくて」という人も勇気をもらえたことだろう。青天井ルールに比べたら、通常の点数表など九九くらい簡単に見えるはずだ。それも、「満貫打ち切り」で点数を固定してくれているおかげだ。ざっくりでも点数を覚えて、条件を意識した打ちまわしの面白さを味わってほしい。
次回の記事では、この「点差逆転・着順アップ・まくり」にフォーカスしてみようと思う。
いろいろとケチをつけてしまったが、青天井も「そういうもの」として受け入れれば、余興的に盛り上がることは間違いない。
感覚としては、赤ドラ増し増しの三麻に近いのかもしれない。安手で流して、相手のあがりを阻止したり、とにかく手を高くして勝負を決めにいったりといった独特な駆け引きが味わえるだろう。
先ずは一度お試しあれ。
それではよき麻雀人生を。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?