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【麻雀うんちく】ピンフと符計算は表裏一体な話、符計算フローチャートを作ってみた話

麻雀で最も基本的な役といえばピンフだ。麻雀役の一覧を見ても、たいてい最初の方に書かれている。
しかし、この役はかなりややこしい。麻雀を覚え始めた人が必ずつまずくように仕込んだのかと思うほど、的確に初心者の心を折りにくる。それもそのはず、ピンフの本質を理解するには(ふ)の知識が必要なのだ。今回はピンフと符についての話をする。

ここでは「麻雀蘊蓄(うんちく)」を話す。言い換えれば雑学や豆知識だ。知ったからといって麻雀が強くなるわけでも偉いわけでもない。ただほんの少し麻雀の楽しみに幅を与えてくれる。皆さんのよき麻雀ライフの一助になればと思う。



ピンフはよくダジャレに使われる。
漢字で「平和」と書くからだ。伊坂幸太郎の小説『砂漠』に、ピンフあがりにこだわる青年が登場する。彼はピンフであがることで平和(へいわ)につながると信じていたようだが、ピンフと平和(へいわ)が同字なのは偶然でしかない。中国語でトイレットペーパーを「手紙」と書くようなものだ。

平和(へいわ)ではないなら、ピンフの平和とはどんな意味なのか。
これは「平凡でシンプルな和了」を意味する(和了はホーラと読む。麻雀のあがりの意味)。
では、ピンフがどれほどシンプルなのか、その成立条件を確認しよう。

  • 雀頭が役牌ではないこと

  • 面子が全て順子であること

  • 門前であがること

  • 待ちが両面であること

ちっともシンプルではない。ピンフのウソつき!ひらのあがりって書くくせに!!
そして用語がわかりにくい。これも初心者泣かせの一因だ。それぞれ説明していこう。上の箇条書きがわかる人は次の区切り線まで読み飛ばしてほしい。

先ずはピンフの例を画像で見てもらおう。

ピンフの例

ピンフに限らず、麻雀では図のように4面子と1雀頭をそろえるのが基本的なあがりの形だ(例外の役が2種類だけある)。雀頭や面子について詳しく見ていこう。

  1. 雀頭が役牌ではダメ

    • 雀頭(じゃんとう)とは、あがりに必要な2枚の同じ牌のこと。

    • 役牌(やくはい)とは、白發中(🀆🀅🀄)と、自分の方角=🀀🀁🀂🀃のどれかと、場の方角=東場なら🀀、南場なら🀁のことだ。麻雀では方角のことを「風」という。自分の風は「自風(じかぜ)」、場の風は「場風(ばかぜ)」という。自風でも場風でもない風牌を「オタ風」という。

    • ピンフは、雀頭が役牌では成立しないので、オタ風か数字の牌を使わないといけない。

  2. 面子が全て順子

    • 面子(メンツ)とは、あがりに必要な3枚の牌のセットのこと。

    • 🀇🀈🀉のように数字が順番になっているセットを「順子(シュンツ)」という。

    • 🀌🀌🀌のように同じ牌3枚のセットを「刻子(コーツ)」という。

    • 例外として、同じ牌4枚で作る「槓子(カンツ)」という特別な面子もある。

    • これらの面子は4セット必要なのだが、ピンフは全て順子で作らないといけない。

  3. 門前(めんぜん)

    • 自分で引いた牌だけで面子や雀頭をそろえることを「門前(メンゼン)」という。最後の1枚は、人が出した牌であがってもいい。

      • 役作りの途中で、人が出した牌をもらって面子を作ることを「鳴き」といったり、「副露(フーロ)」といったりする。鳴くと門前ではなくなってしまう。

      • 鳴いて順子を作ることを「チー(吃)」

      • 鳴いて刻子を作ることを「ポン(碰)」

      • 鳴いて槓子を作ることを「明槓(ミンカン)」という。明槓には2種類の方法があり、自分で引いた同じ牌3枚に、人が出した4枚目をもらってくる「大明槓(ダイミンカン)」と、先にポンしてそろえた3枚の牌に、後から自分で引いた4枚目を加える「加槓(カカン)」がある。

      • ピンフは門前で作らないといけないから、これらのポンやチー、明槓をするとピンフは成立しない。

      • ちなみに、全て自分で引いた4枚で槓子を作ることを「暗槓(アンカン)」といい、特別な操作が必要なので、別で調べてほしい。

      • また、ポンした刻子を「明刻(ミンコ)」、自分でそろえた刻子を「暗刻(アンコ)」といって区別することがある。

  4. 待ちが両面

    • あと1枚の牌であがれるとき、未完成の面子や雀頭の様子を「待ちの形」という。

    • 🀈🀉を持っていて、最後に🀇か🀊で面子が完成してあがりならば「両面張(リャンメンチャン)」や「両面待ち」という。これは2種類の牌で順子ができる待ちの形だ。

    • 🀇🀈で🀉を待っているような、片方しかない待ちを「ペンチャン(辺張)」という。

    • 🀈🀊で🀉が欲しいような、間の牌を待っている形は「カンチャン(嵌張)」という。

    • 🀇🀇🀊🀊というように同じ牌を2枚ずつ持っているとき、🀇か🀊のどちらかが来れば面子が完成し、残りが雀頭となる。このような待ちを「シャンポン(双碰)」という。

    • また、雀頭だけが未完成で、あと1枚同じ牌がくればあがれる待ちを「単騎(タンキ)待ち」という。

    • 🀇🀈🀉🀊のように順子にくっついた単騎を「ノベタン(延べ単)」と呼ぶ。このとき🀇か🀊が来れば雀頭が完成し、残りが順子になる。

    • 待ちの形はこれらの基本的な6種類が組み合わさって複雑になることがあり、3種類以上の牌であがれるような状況が発生する。そんなときも、最後のあがり牌が両面のときしかピンフは成立しない。

以上がピンフの詳しい説明だ。軽い気持ちで読み始めると卒倒するだろう。軽い気持ちで書き始めて卒倒しかけた。とても麻雀初心者が耐えられる情報量ではない。



さて、ピンフの名前の意味が「シンプルなあがり」という話だったが、ここまで読み飛ばした人も卒倒しながら読んだ人も皆ツッコんだことだろう。「どんだけ説明要るねん!」と。
試しに清老頭(チンロートー)という、とても作るのが難しく点数も高い役と比べてみよう。清老頭の成立条件は……

  • 1と9の数字の牌だけで作ること

シンプルだ。非常にわかりやすく、これ以上解説のしようもない。ピンフの難解さが際立って見える。

では、どうしてこれほど厄介なピンフが「シンプルで基本的な役」なのか。

その答えはにある。

(ふ)とは、あがりの点数を決める重要な要素の1つだ。以前、こちらの記事に書いた通り、麻雀の点数は、符・役の飜数・親か子かなどで決まる。

この「符」という言葉を使うと、ピンフの定義は一言で表すことができる。
ピンフとは、符のつかない役」なのだ。どういうことか。

符は、あがったときの雀頭や面子の様子、待ちの形などで加算されていく点数だ。それらが加算されず基本の符だけしかつかない役、それがピンフなのである。
ようやく、「シンプルで基本的な役」という感じかしてきた。



ピンフの成立条件は、裏返せば「符が加算されない条件」と言い換えることができる(ちょっと違う部分もあるが、概ねそう)。では、符の加算について見てみよう。

  1. 基本符、副底(フーテイ)【20符】

    • 4面子1雀頭をそろえると、まず20符もらえる

    • この20符に、以下の加算をしていく

  2. 雀頭の種類

    • 役牌【+2符】

    • オタ風【0符】

    • 数牌【0符】

  3. 面子の種類

    • 順子(シュンツ)【0符】

    • 明刻(ミンコ)【中張牌 +2符 / 么九牌 +4符】

    • 暗刻(アンコ)【中張牌 +4符 / 么九牌 +8符】

    • 明槓(ミンカン)【中張牌 +8符 / 么九牌 +16符】

    • 暗槓(アンカン)【中張牌 +16符 / 么九牌 +32符】

    • ※「中張牌(チュンチャンパイ)」は数牌の2~8

    • ※「么九牌(ヤオチュウハイ)」は数牌の1か9、字牌

  4. 待ちの形

    • 両面張(リャンメンチャン)【0符】

    • シャンポン(双碰)【0符】

    • ペンチャン(辺張)【+2符】

    • カンチャン(嵌張)【+2符】

    • タンキ(単騎)【+2符】

    • ノベタン(延べ単)【+2符】

  5. あがり方

    • ツモ符【+2符】

    • 門前ロン【+10符】「門前加符」

    • 鳴いたロン【0符】

  6. 切り上げる

    • 一の位の数を切り上げる

    • 例えば、34符→40符

基本符【20符】に ②~⑤の要素を足して、最後に切り上げるのが符計算だ。

0符】の部分を見れば、ピンフの条件にだいたいなっているだろう。違うのはシャンポン待ちと、あがり方の部分だ。
シャンポン待ちは、あがりと同時に暗刻(アンコ)ができてしまうので、面子の項目で符が加算されてしまう。だからシャンポン待ちではピンフにならない。
一方であがり方の符は、完全にピンフの定義と矛盾している。この矛盾には、歴史的な経緯が絡んでいる。



本来、ピンフとは基本符【20符】と門前加符(門前ロンのときの【+10符】)だけがつく役だった。だから、ツモあがりのときはピンフが成立しなかった。それが時代とともにピンフとツモの両立が認められるようになり、ピンフツモは常に20符というルールになってしまった。これをピンヅモありという。ピンフのときは例外としてツモ符【+2符】を無視する。
現在でも「ピンヅモなしルール」といってピンフツモを認めない由緒正しい古式麻雀を続けている雀荘もあるが、もはやローカルルールを採用したマイナー店と見られている。少し寂しい話だ。



そんなわけで、ピンフは符計算の例外になってしまった。ピンフのときは符計算が不要で、ピンフツモ20符、ピンフロン30符と確定する。また、ピンフの形で鳴いてあがったときも、本来なら符は加算されないはずだが、慣例として30符とする。
さらに、例外的な役で、七対子(チートイツ)は25符確定だ。さらにさらに、満貫(マンガン)以上は「計算打ち切り」といって飜数だけで点数が確定するから、符計算はそもそも必要ない。
なんだか条件分岐が多い。テキストじゃなくて、図で説明してくれ。できればフローチャートにしてくれ。

私もそう思って検索してみたが、完全な符計算フローチャートは見つけられなかった。だから作ってみた。細かいので、拡大して見てほしい。

符計算フローチャート

作りながら薄々気付いていたが、実践の場ではあまり役に立たないかもしれない。符計算に関しては場数を踏んで、反射でぱっと判断することがほとんどだと思う。そもそも細かく数えたところで一の位は切り上げてしまうのだから、「24符だと思ったけど、ツモ符があって26符だ!」なんてのは、2符足し忘れたままでも30符だ。
慣れてくれば、刻子が2つや槓子があるときにちょっと注意して数えればいいとわかるだろう。

ともあれ、せっかく作ったフローチャートが供養できて嬉しい。皆さんが符計算の全容を知ることに少しでもお役に立てたなら幸いだ。
そして、今までピンフをややこしいと感じていた人も、これからはピンフのシンプルさを感じながら麻雀が打てるのではないだろうか。

それでは、よき麻雀人生を。

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