デザイン調べ_1 : KIRIN_世界のKitchenから/アートディレクター_福岡南央子氏
当noteは様々なプロダクト/サイト/サービス etc の中で見えてくるデザイン仕事を調べ、「デザイン」って何なのか を考察しよう、という内容です。
第1回目はキリン株式会社が2007年から販売している日本のジュース等のブランド、
「世界のキッチンから」を調べてみます。http://www.kirin.co.jp/products/softdrink/kitchen/products/
これまで発売されてきたものから現在発売中のもの(ペットボトルに限る)を、形別に分けて配置すると型種が10種類もあることが分かります。
「味が濃くとろみある商品のボトルは細く背が低い」、「炭酸商品は断面が丸く幅広く、口に向いすぼまる角度が鋭い」、「ホットドリンク商品の形は…」と共通点を見つけられるものもありました。
量産品の限られたボトルの形の中で、「この商品特性ならコレ」とボトルの形を変えているようで、形の違いは普段あまり意識してなかった点なので改めて見ると驚きです。
さて、それぞれが個性的なラベルデザインでありますが、ブランドサイトは実にシンプルにデザインされています。
キリンビバレッジの他ソフトドリンク商品ブランドサイトのトップのキービジュアルやアイコン、背景、動き等の演出と比べると、シンプルさが際立っている印象を受けます。
なぜそうなのか?を考える際、当商品のアートディレクターである福岡南央子氏のインタビューから見えてくるものがあり、以下に引用します。
うちの宮田(元所属会社「DRAFT」代表)は「プロダクトヒーロー」という考え方をよくします。「いい商品やいい会社は、それを主人公にしてそのまま見せればいい」という考え方です。この『世界のKitchenから』はまさにそれなんですね。
「世界中を飛び回って、いろいろな人に出会い、いろいろなおいしいものを教えてもらってひらめき、自分たちで作ってみる」という今回のブランドの原型ができたんです。
確かに当商品ブランドサイトのシンプルさは、無駄な装飾が無い分、それぞれの商品が主人公として見えているように思えます。
「世界のおいしいものを自分たちで作ってみる」というコンセプトだと、商品/地域それぞれの個性を損なわないように紹介するには全体のトーンはシンプルな方がそれぞれが際立つということかもしれません。
その他、「家庭料理の取材記」という読み物コンテンツは、商品が生まれてくるバックボーンを読んでいるようで、ユーザー視線で見ると、商品に愛着を持ち「飲んでみようかな」と思える取材記だと思います。
福岡氏は上記の各国への取材に極力同行し続けており、各家庭の台所の様子や道具、地域に伝わる工芸などをそれぞれのラベルデザインに落とし込んでいるそうです。
ほっこりしていて、かわいらしいという意見をよく耳にしますが、どちらかというと文化人類学とか考古学的な視点がこのブランドのベースにあると思っています。
現地の暮らしを見せてもらって、文化も社会状況も丸ごと感じることが納得につながるかなと思います。
商品開発もデザインもリサーチに基づいているからこそ、消費者にとって説得力のあるものが出来る=無駄な装飾に頼らず商品だけで見せられるデザインが可能になる、ということかもしれません。
同商品シリーズは2016年4月6日にinstagramを開設していて、取材先の写真を投稿しています。https://www.instagram.com/sekai_kitchen/
取材写真を見る事で、ユーザーも現地の空気感をより感じながら商品を味わえる、まさに「世界のキッチン」ですね。
という訳で、「リサーチがデザインに説得力を生む」というのを、今回のデザイン調べの教訓とさせていただき、次回も是非、ということでどうぞよろしくお願い致します。
お読みいただきありがとうございました。
以下参照/引用元-----------------------------------------------------------------
世界のキッチン http://www.kirin.co.jp/products/softdrink/kitchen/
「市場分析はしません」『世界のKitchenから』担当者に聞く、外さない新商品の作り方 https://irorio.jp/kamiiiijo/20160919/351953/
読売ADリポート ojo http://adv.yomiuri.co.jp/ojo_archive/02number/200707/07creat.html
福岡 南央子 | 京都精華大学 http://www.kyoto-seika.ac.jp/edu/faculty/fukuoka-naoko/