【勝因】『讃岐のプレスを上回った北九州のビルドアップ』~第14節ギラヴァンツ北九州VSカマタマーレ讃岐~
スタメン
この試合を選んだ理由
ミクニワールドスタジアム北九州(通称:ミクスタ)が電車で20分の距離にあったことから、現在大学4年生の僕は大学1年生から大学3年生のときに北九州の試合をよく見に行っていました。15試合くらいだったでしょうか。平面での観る力を養うためにバックスタンドの2列目に座っていた修行の場所なんです。
今季は岡山に帰っているためミクスタには行くことができず、北九州の試合を久しぶりにフルタイム視聴したいと思っていました。個人的に佐藤亮選手には絶対的エースにならなきゃいけないと期待しているので、彼のプレーも見たかったんです。
さらに、対戦相手の讃岐は僕が初めてJリーグの試合取材に行ったクラブなんです。思い入れのある両チームの対戦ということで選びました。
讃岐のプレスを上回った北九州のビルドアップ
今季の北九州は天野賢一新監督のもとでも、ボールをつないで敵陣に運んでいくスタイルを継続していました。自陣低い位置で左CB河野、右CB藤原、右SB藤谷の3選手が並び、DMF永野が頂点になってひし形でビルドアップをしていきます。後ろの3選手が横パスをつなぎ相手を揺さぶって、ピポットと呼ばれるDFM永野に縦パスを入れて方向転換をし、相手のプレスを剥がしていく方法です。
それに対して讃岐は1トップ+2シャドーでひし形の後ろ部分にプレスをかけていき、ピポットにはボランチの西本が監視する体制を整えていました。いわゆる人で見てしまおうというものです。明確にハメに行った讃岐でしたが、敵陣の高い位置でボールを奪ってショートカウンターを発動させることはできませんでした。
讃岐のプレスが効果的ではなかったのか、というよりも北九州のビルドアップのクオリティが上回ったからだと思います。ひし形を形成する左CB河野、右SB藤谷、DMF永野は昨年から所属している選手で、やり方も大きく変わっていません。立ち位置、パスルートなど意図や狙いが整理されていて、判断にも迷いは見られませんでした。真ん中を務めた藤原選手は新加入の選手ですけど、すでにフィットしている印象です。他の3選手とビジョンを共有できており、左右にパスを散らして素早く動き直し、相手のプレスにハマらないようにしていました。
また北九州の選手はパス回しそのものに自信があります。讃岐が勢いを持ってプレスをかけてきても全く焦ることなく、プレーエリアが狭くても躊躇なく永野選手に縦パスを打ち込みます。少し高い位置を取る左SBの永田選手はパスを受けたときに相手のスライドが間に合ったり、囲まれそうになっても、運ぶ、かわすドリブルで局面を打開していました。
北九州が組織でも個人でも讃岐のプレスをいなしていくので、讃岐は勢いを持って前がかりにプレスをかけてきます。両WBも押し上げ、3バックも相手陣内に上げて圧力を強めようとしましたが、奪いきれません。北九州のビルドアップは決してボールを保持することが目的ではなく、あくまでも点を取るための手段なのです。そのため、自陣でのショートパスのリスクが高くなったら、FW高澤へのロングボールという逃げ道を使います。また、右SH佐藤、左SH藤川はスピードがあり裏への抜け出しを狙っている選手なので、2選手を走らせるボールも選択します。前がかりに来た相手の矢印をひっくり返す手段を常に持ちつつ、ビルドアップをしていたんです。
右SH佐藤が決めた決勝点も、まさに相手の矢印をひっくり返して奪った得点でした。
36分、自陣右サイドからのスローイン。右CB藤原、左CB河野とパスをつないで、ボールは少し下りてきた左SB永田に渡った。左SB永田は相手2選手に囲まれても奪われずにキープすると、左CB河野がロングボールを蹴ってFW前川が競る。これが左サイドに開いていたFW高澤へのパスとなりプレスを完全に突破した。ボールを持ったFW高澤はスルーパスを送り、中央から飛び出したDMF六平がゴール前まで運んでパスを出すと、PA右に入ってきた右SH佐藤が左足でシュートを流し込んだ。
自陣からパスをつないで相手のプレスの矢印をひっくり返す、どころか完全に矢印を折ってゴールを決めたんです。これを見たとき、昨年に目指していた形からの得点ではないかと感じて鳥肌が立ちました。ゴールを決めたのが個人的に注目している右SH佐藤だったことも、鳥肌ポイントです。
得点という分かりやすい形で北九州のビルドアップVS讃岐のプレスの決着がついてしまいました。
つないで敵陣にボールを運びたい。敵陣でボールを奪って攻めていきたい。互いのやりたいことがぶつかり合い、そこで上回った北九州が11試合ぶりに勝利を飾りました。
(中継ではありましたが、久しぶりにミクスタのピッチを見ると、またあの素晴らしいスタジアムに行きたいなって気持ちが出てきました。タイミングが合えば、また行きたいな)