大きな可能性と期待感を示したコパ・アメリカ日本代表を振り返る
若手が台頭したとは言えないGK
19歳でA代表初選出となったGK大迫敬介(広島)が正守護神を務め、新たな若手の台頭を期待したが、大迫はチリ戦で4失点で豊富な経験値を買われたGK川島永嗣が2試合ゴールマウスを守った。川島はセービング力でピンチをしのぐ場面が多く見られ、36歳と4年後を見据えると代表のスタメンで起用し続けるのは難しいが、けが人が出たりなど緊急事態の時に十分任せられることを証明できたと思う。しかし、ビルドアップ能力は必要な基準値を満たすものではなかった。ここは日本サッカーの永遠の課題だ。
ポジティブな印象を与えたDF陣
まずはCBとして3試合フル出場したDF冨安健洋(シント・トロイデン)、DF植田直通(クラブ・ブルッヘ)について触れていこう。前者は20歳という若さに似合わない冷静さからプレー選択の正確さ、カバーリングなど地上戦での守備対応が光った。また、持ち運びもよく今後スーパーな選手へとさらなる成長の余地を感じた。後者は、Jリーグで見せていた空中戦の強さはロングボールを跳ね返し続け、セットプレーでは惜しいシーンを何度も見せた。今大会ではビルドアップ能力の向上を見せてくれた。鋭い縦パスを繰り出す姿は海外でのプレーで成長した部分だった。
続いてSB。DF原輝綺(鳥栖)、DF岩田智輝(大分)、DF杉岡大暉(湘南)がプレー機会を得た。ポジティブな部分を多く見せたのは、岩田と杉岡だっただろう。岩田は五輪代表から離れていたが、大分で主力としてプレーすることでタイミングの良い上がりや終盤まで戦える運動量など好印象をを与えた。DF酒井宏樹(マルセイユ)、DF室屋成(FC東京)に続けるだろう。杉岡は、湘南で身に着けたタフさを発揮。粘り強い守備対応、試合を重ねるごとに向上した攻撃面は良かった。佐々木や山中、安西との2番手争いに大きなリードを得たと感じた。
将来が楽しみな若手と存在感を示したベテランMF
ここではボランチと2列目について言及していく。ボランチで評価を高めたのは、MF板倉滉(フローニンゲン)、MF柴崎岳(ヘタフェ)だろう。板倉はDFラインの前の防波堤のようにゴールキックなどを跳ね返し、最初はミスが目立ったビルドアップ面では徐々に落ち着きを取り戻した。柴崎はオーバーエイジ枠として東京五輪に出場することがほぼ確定しただろう。持ち前の視野の広さ、展開力はこのチームに欠かせないものであり、ボールの落ち着きどころとなっていた。苦手とされていた守備面では、大きな覚悟を持って挑んでいることを示すかのように、危険なエリアに顔を出し体を張り続けた。
今大会で日本の2列目の選手たちは世界に知らしめるプレゼンスを見せた。レアルマドリードに電撃移籍をしたMF久保建英を筆頭に、2ゴールを挙げたMF三好康児(横浜・F・マリノス)、スキルの高さを改めて証明したMF中島翔哉(アルドドゥ・ハイル)、適応能力と連携能力の高さを見せたMF安部裕葵(鹿島)は今後が楽しみな選手たちだ。久保のライン間でボールを受けるポジティブは秀逸で、プレーの直前に判断を変えることができる技術の高さはガチの南米相手に通用した。三好はボールを持ったとき、持っていないときでも質の高さを見せた。中島のゴールに向かう姿勢や相手を抜き去るスキルフルなドリブルはやはり中島だったが、守備への貢献度の低さが露呈される形となった。中島が務めた左サイドは相手に通行フリーパスを与えるようだったので改善は急務だ。
またしても決定力不足に泣いたFW
招集されたFW岡崎慎司、FW前田大然(松本)、FW上田綺世(法政大)の3名とも出場機会を得た。岡崎は持ち前の前プレス、前田は爆発的なスピード、上田は動き出しの良さを、各々が特徴を発揮した。しかし、楽観視はあまりできない。3試合でFWが決めたゴールはない。先に述べたように、完成度の2列目の選手たちがかなりの数のチャンスを作り、シュートを託したが一つも決め切れなかった。この得点機会で少しでも決め切れていたらと考えると惜しい大会だった。上田は特に動き出しのうまさ、相手の視野から外れてゴール前に進入する部分は通用した。来期の鹿島アントラーズへの入団が決まっているので、プロの世界で揉まれ、世界へ羽ばたいてほしい逸材だと感じた。
総評
グループステージを突破することはできなかったが、東京五輪に向けて多くの可能性、大きな期待感を見せてくれた。これから本大会のメンバーの椅子を掛けて熾烈な争いが繰り広げられる。切磋琢磨もう一回り成長した彼らを、五輪で、A代表として輝く姿が非常に楽しみだ。
選手はポテンシャルを見せてくれた。監督の森保一の成長と戦術的な柔軟性を身に着けてほしいと感じたのは正直な意見であり、人が好い森保監督だからこそ監督業でがっかりさせてほしくない。