【2016.8.29】オメでたのはじまり

この記事は2016年8月29日、新宿ReNYで行われたライブレポートとして書いたものです。赤飯(概念)からオメでたい頭でなによりへ繋いだ記念すべきライブでした。当時の勢いそのままに。4周年を迎えた愛すべきバンドの、はじまりの記録として読んでいただけたら嬉しいです。

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赤飯率いる最幸にオメでたい5人組バンド「オメでたい頭でなにより」本格始動!全員が主役の幸暴分裂!

2016年8月29日、東京・新宿ReNYにて赤飯ワンマン「幸暴分裂ツアー~赤飯の誕生日にかこつけてすげー幸せに暴れられる奴が増えますように的なこと~」が行われた。

昨年よりGuitar/Vocal:ぽにきんぐだむ、Guitar:324(みつよ)、Bass:mao、Drums:ミト充が赤飯の出演するライブにサポートとして集結し、今年に入ってからはFML(Free Mosh License)と銘打った対バンイベン トも積極的に実施。着実にその名を広め、満を持したワンマンツアーを8月25日大阪、8月27日名古屋と行い、今回の東京でファイナルを迎えた。

定刻を少し過ぎた頃、客電が落ちるかと思いきや会場に流れてきたのは「赤飯のオールナイト会場」!赤飯自身が某ラジオ番組をオマージュした「ラジオ番組風」企画。いつもは対バンのバンド転換の時間を有効活用し「オールナイト転換」を放送しているが、今回は転換時間がないため開演前の前説的な盛り上げを行っていた。「ふつおた」「こんな○○は嫌だ」などラジオっ子は思わずニヤリとするコーナーや、赤飯自身で弾き語りをしたジングル、提供読みもツボを押さえている。提供読みでは赤飯自身が今まで関わってきた事務所やレコード会社などの名前もあり、ここでも自身の今までの活動に携わった方達への感謝が感じられた。曲紹介→オリジナル曲をOAの流れもまさにラジオ番組風。フロアでは音源に合わせて本番さながらに盛り上がっており、高揚感が増していく。

いよいよ客電が落ち、オープニングSE「準備運動のテーマ」に合わせてメンバーが登場。対バンイベントFMLではお馴染みになっていたが、今回のワンマンツアーで流れるのは初めて。大阪、名古屋に参加した人はここでセットリストの違いに気付いただろう。

一曲目「あれこれそれどれ」ではボーカルのマイクトラブルもあったが、フロアから自然と赤飯を助けるように歌声や合いの手が聴こえたのも印象的だった。続いて「いーあるふぁんくらぶ」「看板娘の悪巫山戯」「ヒューマンエラー」と赤飯が今まで数々のライブで歌い続けてきた曲が続く。赤飯は動画投稿サイトでその名を広く知られることになったためライブではボカロ曲を歌うことが多かったが、今回のツアーではやっとほぼオリジナル曲でセットリストが組めたのが嬉しい、と話していた。ファイナルではボカロ曲を前半のターンに固め、赤飯を築いてきた大切な存在である曲達へのリスペクトも感じた。ここで赤飯から「次の曲で本編は終わりです」と突然のアナウンス。フロアはザワザワしていたが、「大丈夫だから」と少しの緊張感と自信に満ちた笑みを浮かべる赤飯とメンバーに一同次の言葉を待つ。

そして始まったのは「骸Attack!!」。赤飯といえばこの曲!激しく叫び、荒々しく吠えるボーカルスタイルを表現できたのはこの曲のおかげだと何度も繰り返していた赤飯。昨年リリースされた赤飯のアルバムには同曲にアレンジを加えて収録され新たな楽曲の切り口を届けてくれたが、今回は長年ライブで披露されていた原曲Verで披露。今までの赤飯を応援してきたファンへの感謝と「これから」への強い決意を感じることができた。

ここで幕が下り、暗転。フロアにはスクリーンが登場し、本編終了のお知らせと共に「これからもみんなで楽しく笑っていたい、もっとたくさんの人に知ってほしい!」というメッセージ。そしてスクリーンを食い入るように見つめるフロアの目線の先には「バンド名決まりました!」の文字!ここで正式に「赤飯」から「オメでたい頭でなにより」という5人のバンド名が発表された。「オメでたい」という表現は、一見「あいつの頭はオメでたいね」など皮肉を込めたような意味合いで使われることが多いが、楽しいこと、幸せなことを表現するために全力でバカをやりたい!!というメンバーの開き直りにも近いポジティブな想いが込められている。

ここからはオメでたい時間の始まり!ライブの中ではアンコール扱いのオメでたゾーンが始まる。今回のツアーではオープニングSEとして流れていた「オメでたい後光が射すとき」がここで登場。幕が上がると、ステージ後方に掲げてあった「赤飯」フラッグが「オメでたい頭でなにより」フラッグへ変更され、ドラムにもバンド名が記されたステッカーが貼ってあるのも空気をガラッと変えていた。赤飯の過去と今がここで自然と繋がり、バトンを渡しているように見えた。

衣装をお揃いのTシャツに着替えて登場したメンバーからは、バンド名発表を経てフロアにそれが届いた安心感と新たなスタートを切った高揚感がビシバシ伝わっていた。2016年8月14日のコミックマーケットより頒布されたアルバム「オメでたい頭でなによりです!」(タイトル)に収録されている「ふわっふー」からスタート。サビの「ふわっふー!」に合わせて全員でジャンプする一体感が楽しく、赤飯とギターボーカルのぽにきんぐだむとの掛け合いがとても微笑ましい。ぽにきんぐだむはこの曲に限らず、他曲でもギターを弾きながらボーカルパートを担当しており、それも今回からの注目ポイントである。

続く「憂き浮きウォッチング」はタイトルからも解るように某お昼の国民的番組をオマージュ。Bメロではメンバー紹介を兼ねたフレーズとフロアの「そうですね!」というコール&レスポンスが気持ち良い。サビに出てくる「友達の輪」という歌詞にもメンバーが伝えたい想いが込められている。ライブには一人で参加していたけど気付いたら友達がたくさんできた、友達の友達が友達になった、ずっと話しかけられなかったけどやっと繋がれた!など、ライブに参加して広がる縁や気持ちを感じたことがある人も多いはず。日常で嫌なことがあってもここではすべてをポジティブに引っ張ってくれる力強さがある。

前述の「骸Attack!!」作者である鬱Pと赤飯が制作したアルバム「IDOLATRY」から「ぬりかべ」「食事」「ジャンクヒンズダンサー」の3曲が続く。鬱P曲を歌う赤飯はやはり文句なしにかっこいい。赤飯自身のボーカルスタイルにシンクロした激しい曲調と併せ持つキャッチーさが、フロアとの掛け合いと共に全体の熱量をどんどん上げていく。

次に、セットリスト中唯一のバラード「パンの唄」。曲のテーマは非常に重く、思わず目を背けたくなるような現実も含まれている。母への愛、絶望と悲しみの先に辿り着く現実、守りたかった想いを赤飯が力強く歌う。324のリードギターも哀愁をまとい、赤飯の歌と全体の空気を引っ張っていく。いつか誰もが迎えるそのときのために、今ある日常が当たり前ではないこと、素直に想いを伝えることの大切さも実感できる。

そんな空気の中、涙を拭く間もなく始まった「さくらんぼ」。誰もが口ずさめるこの曲を赤飯が大学時代にやっていたバンドでカバーしており、このたびオメでたVerでついに世に発表された。赤飯のボーカルの武器である声色を使い分け、サビではサークルを作りフロアのみんながグルグル回るハッピーな空間!こんな荒々しいさくらんぼは見たことない(当社比)!続く「見習いハーデス」は赤飯のライブで欠かせない曲の一つ。恒例になっている「曲中物販」もこの曲の間奏で行われた。メンバーがサイリウム(ただし使用禁止)をフロアに降りて売り子する微笑ましいシーン。100円玉を掲げてサイリウム(しつこいようだが使用禁止)を求めるフロアの光景は非常に面白い。これもオメでたいコミュニケーションの一つである。この使用禁止サイリウムが唯一解禁される「おにゃのこ きねんび」では、使用許可が下りたサイリウムを待ってましたと言わんばかりにバキバキに折り、さきほどまで拳しか見えなかったフロアが赤のサイリウムで埋まっていく。一曲通して女声で歌う赤飯はこのときだけは「あずき(アイドル)(当社比)」である。間奏ではWOD(ウォールオブデス)でフロアは大暴れ!リフト中のメンズに向かって「どうしてあなた裸なの?」と問いかけるあずき(赤飯)の言葉にフロアも爆笑。この曲が終わると赤いサイリウムはただちに撤収され、各々が自然といつもの光景に戻す姿が微笑ましい。今後赤飯のライブに参加する人は、この曲だけサイリウムの使用が許可されるので覚えておこう。それ以外は拳でお願いします!

「wosushi~ウォールオブ寿司~」ではWOD(ウォールオブデス)のオメでたスタイルを展開!タイトルと曲のテーマに合わせ、シャリ(上手)とネタ(下手)に分かれてブツかり合うことで寿司になる!という最幸にオメでたい空間が始まった。フロアにはイクラの着ぐるみやエビ、玉子、大トロ、サバ、ウニなど寿司ネタになりきったカラーTシャツを着たネタ隊、白Tシャツのシャリ隊がスタンバイ。そして緑タイツのワサビと謎の寿司職人(似合う)も登場し、ステージのメンバーも大爆笑。積極的にオメでたい空間を一緒に作ろうとするフロアを見て、赤飯もメンバーも心から嬉しそうに笑っていたのが印象的だった。赤飯は水鉄砲(本格的)にすし酢に見立てたクエン酸水を入れてシャリ側に向けて乱射!そしてネタ側には醤油に見立てた麦茶を乱射!なんだこれ楽しい!そしてシャリとネタがブツかり合ったあとにはサークルでグルグル回転寿司でオメでたい!赤飯がこの曲で見たかった「思いやりのぶつけ合い」がガッツリ表現されたはず。寿司ネタ隊の皆さん、最幸でした!!

「P.R.P.」では324と赤飯の光るパリピサングラスが曲にガッツリハマっており、フロアは一気にテンアゲなクラブ状態。ラスサビの高音も最幸に気持ち良い!「Fight For your right」では間奏でフロアを座ら せ、オールスタンディングがオールシッティングに。このときの赤飯やメンバーは本当に楽しそうで、全員で同じ光景を作っている一体感を全身で感じることができる。赤飯の掛け声と共にオールシッティングから一斉にジャンプ!最幸の景色が生まれた。

先日バンドとして初のMVを作成した「生霊の盆踊り」ではジャパニーズフェスティバルオメでたスタイルを表現。曲中に赤飯がフロアに降り、自身が盆踊りのやぐらとなって輪を作り、超絶スローサークルをしてほしい!とリクエスト。半歩ずつくらいしか進まない超絶スローサークルはシュールかつ一体感があり、赤飯がステージまでスムーズに戻ってこれたのも素晴らしい。「大河アッパーカット」は某対戦ゲームをオマージュ。サビで拳を垂直に突き上げ、全員でアッパーカット!この曲は昨年夏に行われた対バンで初披露され、その後のライブでも繰り返し歌われてきた。今ではライブの定番曲になり、バンドの歩みも刻まれた大切な曲である。

ここで最後の曲を前に赤飯がこの日のライブに込めた想いを語る。

「今まで俺が作ってきたオリジナル曲は、日常の不満や腹が立ったことを全部曲にぶつけてきたけど、でもそんなことを共有したいわけじゃないんだと気付いた。みんなで楽しい時間を共有して、笑顔でいたいっていう単純な気持ちが一番で、それが俺の伝えたいこと。歌詞も、パッと見ふざけてるようにしか見えないけど、その中に伝えたいメッセージをしっかり込めてる。今まで本当にいろんなことがあったけど、今回のアルバムには未来のことしか書いてないんだよ。何故なら、前に進んでいきたいから。来月も再来月も来年もその先もずっと、オメでたくて楽しい空間を作っていきたいって本気で思ってます。だからみんなもついてきてほしい!」。

当時赤飯が曲にヘイトを込めて尖った歌を歌っていた時代を知っている方、同じフィールドで活動されている関係者の方達もたくさん来ており、終演後のTwitterでは「今の赤飯が本当にやりたいこと、伝えたいことがガッツリ伝わった!」等あたたかい言葉がたくさん溢れていた。ファンからの言葉とはまた別で、同じ立場の皆さんからもらう言葉はまた違う喜びがあるはずだ。今回のライブでたくさんの人にメンバーの想いが伝わった結果がそこにあった。

これをすれば万人が満足するという正解はないが、一人でも多くの人が楽しいと感じるための要素はたくさんある。バンドやライブへのイメージを変え、あらゆる角度から様々なニーズに応えるために行われているのが、記事内でも触れたラジオ番組風の企画や曲中物販、あとは今回のツアーから設置された「デリケートゾーン」(暴れない人のためのエリア)である。ライブには参加してみたいけど雰囲気が解らない、暴れることはできないけど参加したい等、大暴れするエリアとゆったり参加するエリアで分けることでそれぞれの楽しみ方へ最大限の配慮が感じられる。「自分に合ったスタイルで参加することで、一緒に楽しい空間を作り出すために協力をしてくれていることになるから」というスタンスだ。何故なら、ここでは参加する全員が主役。それぞれの想いが重なって、知るキッカケが増えて、その数が増えるほど幸せが広がる。それがメンバーの伝えたい「幸暴(さいぼう)分裂(幸せに暴れて、どんどんその輪が広がっていけるように)」である。赤飯のライブで見るようになったダイブやモッシュも、ライブを楽しんでその想いをみんなと共有していることの表現。まさに楽しさの共有、幸せに暴れるための一つの方法でもある。

そんなたくさんの想いを乗せたラストは、バンド名でもあり、今後の主題曲となるであろう「オメでたい頭でなにより」。メンバーもフロアも汗だくで、泣いて笑ってダブルピースで楽しめるその空間は最幸にオメでたい!そこにはネガティブな感情が一つもなく、みんながオメでたい涙を流して最幸の笑顔になっていた。曲中にも登場する『でも今ありがとう ありがとう すごく笑えてる』 という言葉には赤飯をはじめ、メンバーのこの日を迎えるまでの想いがたくさん込められているように感じた。何度も話し合いを重ね、喧嘩をしながらも「今何がしたくて何を伝えたいのか」という明確な気持ちに気付き、それを届けたい、伝えたいという強い意志が会場全体に広がっていた。一人一人が曲を聴いてほしい、ライブに来てほしい、知ってほしい、その輪を広げていきたいという想いを持っている。ステージからの一方通行ではなく、その熱量をしっかり受け止めて返していく、双方向のブツかり合いはとてもあたたかい。8/13は赤飯の誕生日だったため、今回サプライズでメンバー、スタッフ、ファンの有志でバースデーケーキが登場。フロアからのコールに乗っかり、顔面に生クリームをつけた赤飯がとても嬉しそうに笑っていたのがとても微笑ましかった。ロビーには「オメでたい奴ら」より素晴らしいスタンド花も設置されていた。こういうところでもたくさんの想いが形になり、しっかり届いていることが実感できた。

少しでも気になった人は、Twitterのハッシュタグ「#幸暴分裂」で検索してみてほしい。参加した人達のリアルな声、想い、楽しさの連鎖を感じることができる。そして是非、このオメでたい空間に飛び込んでみよう。転んでも差し伸べる手がたくさんあるし、みんなで一緒に作り上げるオメでたい景色を自らの目と耳と心で体感してほしい。きっと、それぞれの「守りたい場所」が見つかるはず。

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