【ACT.4 夢を追うバンドマン】 inspired by “ザ・レジスタンス”
「俺が見たいのはこんな景色じゃない」
目の前に広がるはずだったフロアの景色。何度裏切られるんだ。何度騙されるんだ。俺はただ、歌いたいだけなのに。笑っていたいだけなのに。もうダメだ。全部やめたい。何も信じられない。
歌うことが大好きで、歌うことで気持ちを伝えられていると思っていた。でも本当にやりたいことは何だ?一番伝えたいことは何だ?
俺は何で歌っているんだろう。
正直、ハッキリと言葉にできなかった。歌に集中できる環境でもなかった。
「お前が本当にやりたいことは何なんだよ」
メンバーにそう問われ、何日も何日も考えた。考え抜いた結果、単純な答えに辿り着いた。
「一人でも多くの人を笑顔にしたい。全員が汗だくになれるライブがしたい」
それが俺の歌う理由だ。どんなときでも笑っていよう。誰かの笑顔が、誰かを笑顔にできるかもしれない。かっこいいバンドは山ほどいる。俺達にしかできない形で、みんなを笑顔にしたい。それが一番かっこいいことだと信じている。
「日本一のボーカルは間違いなくお前だ」
「お前がボーカルのバンドならてっぺんを取れる。俺達が必ず一番にする」
「最高に幸せな集団になろう」
俺に居場所を与えてくれた。歌う意味を、生きる意味を。裏切りも馬鹿にされたことも騙し打ちも全部自分の中に取り込んでこの借りを全部返してやる。過去を否定するつもりは1ミリもない。すべてが今の俺を形作ってくれている。今なら胸を張ってそう言える。
今日は俺達の大切なワンマンライブ。ステージから見えるもの。守りたい居場所。やっと見つけた。やっと辿り着いた。そこにはダブルピースとたくさんの笑顔が広がっている。
「これが俺の見たい景色だ!!」
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