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名古屋をどりNEO傾奇者 名古屋心中観劇に寄せて

2022年10/15(土)、10/16(日)に実施された【名古屋をどりNEO傾奇者 名古屋心中】観劇してまいりました!


ナゴヤ座のメンバーが出演されると聞いてチケットを予約しましたが、この名古屋をどりという空間すべてを楽しむことができました。
第一部「全国芸妓博覧会」と称した、数々の芸妓の皆さまの優美で嫋やかでしなやかな舞を贅沢に堪能。普段触れることがなかった世界が目の前に広がって、それぞれの個性があって、とにかく麗しい!祖母が日舞をやっていたので、幼少期にお稽古を見学していた頃を思い返す場面もありました。舞台の上ではこんなにも華やかで煌びやかなものを魅せてくださる皆さまですが、ここに辿り着くまで表に見えない努力を重ねてくださっているんだと思うと感謝でいっぱいになります。芸事を生業とされる皆さまの生き様を魅せていただきました。


第二部「名古屋心中」。佃幸彦さんと戸田恵子さんのリーディングに添って展開される、喜八と小さんの物語。様々なフィールドから集結したプロフェッショナルな面々の異種格闘技戦のようでした。そして全員優勝!その場にいる全員が主役で、それぞれの見せ場があり、普段の活動を知らない人にも心に必ず何かを刻まれるような、そんな時間でした。


本田剛文さんの女形は、所作や表情すべてがしなやかで美しかったです。違和感なく小さんという1人の女性を追えたのは、本田さんの並々ならぬ努力とお稽古の積み重ねに加えて、ご本人が持っている魅力を役に乗せて最大限魅せてくださったからなんだろうな……と感じました。


西川流の皆さまの本格的な舞踊を拝見できたのも、とても貴重な時間をいただきました。家元である西川千雅さんはご自身で影アナも担当されて、第一部の転換時にも進行を担当されて、フル稼働!物腰も口調も柔らかく、周囲の魅力を積極的に見つけて発信してくださる素敵な方でした。今回の舞台では「防界坊」と名乗る坊主役と徳川宗春さまを演じられましたが、凛々しさと茶目っ気溢れる演じ分け、流石でございました!


OSK日本歌劇団の皆さまは、本当に華がある!舞台での魅せ方、表現力、空気を一瞬で変えてくださる優美さ。第一部でもパフォーマンスを披露されましたが、踊りも歌も目が離せなくなる魅力があり、「虹色のかなたへ」が頭から離れませんでした……!名古屋心中の中でもOSKの皆さまならではの魅せ方をしてくださる場面があり、すっかりファンになってしまいました!アクションや立ち回りもたくさんあり、皆さまのスキルの高さと多才さに心からの拍手を送りたいです。


そして我らがナゴヤ座の皆さま!今回出演されたのは名古屋山三郎(サンザ)さん、名古屋山之助(サンスケ)さん、名古屋虎三郎(トラザ)さん、名古屋参永已(サンエー)さん、名古屋参九郎(サンキュー)さん、名古屋参笑太(ショータ)さん。お稽古の段階で、「サンザかっこいいよ!」「あれは痺れる」と期待値のハードルを上げていく一座。座長(サンザさん)がかっこいいことは十分存じておりますが、一体どんなものが観れるのかと期待値を最大にして臨みました。そして終演後、一言で表すとしたら「名古屋のサンザはハンパねぇ……!!」でした!こちらが最大に上げていった期待値を大きく上回る舞台。最後の最後まで目が離せなかった。座長の魅力があらゆる場面で表現されていて、一つずつ一時停止したいくらいでした。


前半は片岡寅右衛門(サンザさん)率いる侍たちが街中を見回り。一貫して凛とした表情と姿勢を崩さないサンスケさん、すぐ抜刀しちゃう血の気が多いトラザさん、全体を見て冷静な判断をしつつ、ムードメーカーなんだろうなと垣間見えるサンエーさん。それぞれのキャラが端々から感じられました。遊女との宴席の場面では4人中3人が普段ほとんどお酒飲まないのに……!って、つい心の中で突っ込んでしまいましたが、ここでもそれぞれの役の個性が見えて楽しかった。サンエーさんは人一倍宴席を楽しんでて声もデカいし豪快な飲みっぷり!トラザさんは回を追うごとに陽気になっていた気がする。サンスケさんは一貫して気を許さない鋭い表情。「この中に宗春さまを見た者はいるか」という問いに、陽気に飲んだくれていた侍たちの表情がガラッと変わる瞬間も痺れました。

火消しとして登場したサンキューさんとショータさんは、サンキューさんの第一声で笑いが起きるほど掴みはオッケーでしたね!耳をつんざくような会場に響き渡るサンキューさんの声と、火消し組同士の小競り合いが何とも微笑ましく展開されていました。ナゴヤ座では定番のゴムパッチンも登場して、拍手が起きるほど痛そうだった……!ショータさんは相手の動きを止めるために一発芸を披露!ここでは笑ってはいけない場面だったけど思わず笑ってしまいました!折れない心!こういうところでも、一人一人の見せ場があってとても楽しかったです。


大きな見せ場の一つである喜八と小さんの心中の場面。白の精霊たちと黒の妖たちのコンテンポラリーダンス!生きたまま結ばれたい、でもこうするしかない……!という2人の葛藤を取り囲む白と黒のせめぎ合い。白が舞えば2人を「生」に引き戻し、黒が舞えば2人を「死」へと誘う。でもできない、でもやるしかない、時折2人寄り添う姿は美しくも儚く、舞台を埋め尽くすほどに雪が舞う中で舞台背後に佇むのは、黒を纏ったサンザさん。ナゴヤ座でサンザさんを知っている人にとっては「鴉天狗さま……!!??」となってしまったあの出立ち。両手を大きく広げて、その佇まいだけで全てを闇に取り込んでしまうような存在感。思い返すだけで泣けてきてしまいそう。サンスケさん、トラザさん、サンエーさんの黒を纏った舞も本当に美しく、体幹がしっかりしていて跳躍力もあるから、動きに躊躇いがないことが更なる美しさに繋がっていました。あの場面、繰り返し観たい……!


終盤に向けての畳み掛けるような展開も、見ていて息を飲みました。サンザさん演じる片岡寅右衛門は実はなりすましていただけの仮の姿、宗春さまに正体を見破られたあとの展開!片肌脱ぎで赤い布地が露わになり、目が離せない名乗り口上。そこからの飛び六法やサンザさんを中心に円となり全員での立ち回り。要所要所で拍手を送りたくなったし、オヒネリも投げたかったし、オオムコウも叫びたかった!最終形態では黒の衣を身に纏い、最期はナゴヤ座の一座が構える梯子に乗り、高々と掲げられた場所での見得きり!危険を伴う演出ですが、ここで一座に身を任せられる信頼感が垣間見えるのも目が離せないポイントでした。クライマックスと思いきや、梯子から降りたあとは手をつかずにバタンと体ごと倒れる仏倒れ!これでもかと追い打ちをかける見せ場の数々に、拍手と涙と名前のつけられない感情が溢れて止まりませんでした。「名古屋のサンザはハンパねぇ……!!」この叫びに繋がります。

今回「名古屋をどり」という伝統的な場所で、大好きな一座がこんなにも全力で大暴れしていて、魅力をたくさん伝えられる機会をいただき、出演者の皆さまそれぞれの魅力にも触れることができて本当に嬉しかったです。個人的な話ですが、私はナゴヤ座がキッカケで名古屋という場所ごと好きになりました。コテコテの名古屋弁で溢れた今回の舞台も、それだけで笑顔になってしまうほど。着物を着て観劇したいという想いもナゴヤ座がキッカケとなり、趣味になり、今回も2日間着物で参加しました。とはいっても着付け教室でちゃんと習ったわけではなく、自己流で帯の代わりにベルトを巻いたりブーツを履いたりあくまでも趣味の世界なのですが、今回私の自己流の着方を見て声をかけてくださる方がたくさんいて、褒めてくださって、とても嬉しかったんです。形式に捕らわれない自由な舞台、自由な場所なので、「今日にピッタリね!ステキよ!」というお言葉をいただいて、自分の好きなものがキッカケで広がった世界がこうやって自分の心を満たしてくれていると感じて、参加できて良かったと心から思いました。隣の席になった方も終演後に声をかけてくださって、全力で拍手して泣いて息を飲む私が目に留まったようで、「本当に好きなのねぇ」とナゴヤ座に興味を持ってくださいました!パンフレットを見ながらバッチリPRさせていただきました!ありがとうございます!

エンタメ業界で活躍される皆さまは、今までもこれからもあらゆる困難に立ち向かいながらその灯を照らし続けるために全力で走ってくれています。私は名古屋のエンタメを浴びる機会が多くあるので名古屋贔屓になってしまいますが、その世界を愛し、その場所を愛し、ご自身が発信するものに絶対的な自信を持ってくれる方達を好きになれて幸せです。名古屋愛に溢れる場所は本当に居心地が良い。またいつか、名古屋の傾奇者たちに会いに行きたいと思います。このような素晴らしい時間をいただき、本当にありがとうございました!


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