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AIと人の創造性は共存できるのか(Design Matters Tokyo 24に参加して)


◾️はじめに

初めまして、コンセントでサービスデザイナーをしている岡村です。
コンセントに昨年入社し、それまではコンサルティング会社で働いていました。そんな非デザインバックグラウンドな自分ですが、コンセントの自主活動「ひらくデザインリサーチ」というリサーチ・スルー・デザインを実践す
る活動に参加し、デザインリサーチのあり方を探索しています。
このnoteでは、その探索活動で取り組んた内容や、表題の問いに行き着いた経緯についてご紹介します。

1. AIと人の創造性の関係性とは?

まずはじめに、「工夫:組織から要請されずとも自然に発露する「普段づかいの創造性」とはなにか?」をテーマに探求を始めましたが、なかなかどのテーマに絞るか難しい… 

そこでDesign Matters Tokyo 24というイベントや、そのなかで開催されるワークショップに参加して、手を動かしながら探索のインスピレーションを得ることにしました。

https://designmatters.jp/ja/
  • 問題解決としての創造力とはどのようなものか?

  • デザイナーでなくても、誰もが創造力を持てるようになるには?

  • Creative Confidenceは、どうすれば持てるか?

  • どうすれば完璧主義を乗り越えて、誰もが創造力を発揮できるのか

これらの問いを持ってふわふわした状態でイベント当日をむかえ、当日は2つのワークショップに参加しました。ワークショップに参加した結果、自分の興味として、「AIと人の創造性はどう共存すべきか」に関心があることに気づきました。

昨今の生成AIのブームや、それが人の思考や創造性に与える影響について、日頃何となく関心がありました(ちなみにこのnoteの冒頭背景は生成AIで作成しています。)が、デザインの文脈でアナログや人の創造性の重要さに改めて気付かされた大きなきっかけとなりました。

そうした人の創造性を完全に無くさないため(人がツールに代替されない強みを持つため)に、かつ生成AIやデジタルの創造性を取り入れていくために、デザイナーはどうあるべきかを探求したくなったのです。

Generative AI’s greatest potential is not replacing humans; it is to assist humans in their efforts to create hitherto unimaginable solutions.
(生成 AI の最大の可能性は、人間に取って代わることではなく、これまで想像もできなかったソリューションを生み出す人間の取り組みを支援することです。)

Harvard Business Review 2023
How Generative AI Can Augment Human Creativity Use it to promote divergent thinking

次の章からは、そのワークショップでどのようなワークをして、AI(デジタル)と人との創造性の関わりに関する気づきを得たのかをご説明します。

2. イベントで参加したワークショップ①

Acquire Model Design Skills through Sharing What You Love |
自分の推しをモデル化して他人に伝える情報整理術(※1)

◾️ワークショップの概要

  • 自分が好きなコンテンツ(推し)をモデル化して他の人に伝えるワーク

  • 「モデルベースの説明の伝わりやすさ、その結果メンバーからもたらされるフィードバックの受け止めやすさ」を実感する

◾️ワークショップで得た学び

  • 創造力は、自分ならではの「推し」を他者に伝える上で重要
    今回のワークでは、各自好きな映画やゲームといったコンテンツをモデル化し他者に伝えるために情報整理することを体験しました。「推し」コンテンツの魅力を伝える上で、人としての創造力が重要なのかもしれません。

  • コンテンツの全体像のうち、「どの要素を残すのか?」にその人の個性が現れる
    「何を作るか」、「何を面白いと感じるか」、「何を伝えたいか」という個人的/主観的な感情(ある種フレームのような、物の見方そのもの)が創造力の起点となると感じています。

◾️ワークショップの成果物

自分の好きなコンテンツ(映画)のストーリーをモデル化した様子
自分の好きなコンテンツ(映画)のストーリーをモデル化した様子

3. イベントで参加したワークショップ②

デジタル世界で魅力的なコンテンツを作る(※2)

◾️ワークショップの概要

  • 「日本のクラフトマンシップと現代のデジタル世界とのギャップを学ぶ」

  • クラフトマンシップの精神を取り入れて、デジタル世界へ響く、魅力的な体験を作り出す方法を発見する」

◾️ワークショップで得た学び

  • クラフトマンシップへのリスペクトを忘れない
    デジタルツールやAIが普及する中でも、クラフトマンシップ「専門知識・細部への注意・完璧主義の精神・忍耐と規律・伝統への敬意)を忘れてはいけない(AIに代替されない創造性)と感じました。

  • デジタルとアナログの組み合わせによる魅力は、国・文化を超える
    今回のイベント・ワークには幅広い国籍の方が参加し、ワーク自体も英語で行われていました。各自が好きなコンテンツは文化に影響されるところが大きい(逆にいうと、文化を知らないとそのコンテンツの良さが伝わりにく)のですが、中にはデジタルとアナログを組み合わせてアイデアを共有している参加者もいました。
    国や文化を超えたオーディエンスの共感を得るためには、デジタルとアナログを組み合わせた普遍的な体験を模索することが重要なのかもしれません。

デジタルとアナログの組み合わせ
(スマホのプロトタイプを紙の付箋やイラストで補強している様子)

◾️ワークショップの成果物

デジタルではなく、できるだけアナログ(会場に用意された廃材)
で
コラージュ的に作成することがゴール

4.今後考えていきたいリサーチクエスチョン(なぜAIの創造性について気になるのか)

上記のワークショップに参加することで、自分の創造性に対する興味のうち「AIと人の創造力の違い」という観点に興味があることに気づきました。

それはデザイナー以外の出自である人間として、生成AIを初めとするツールが表現やものづくりを民主化したことに喜びを感じた一方で、だとしたらデザインにおける自分らしさや個性のあるデザインはどのようにあるべきなのか(そもそも可能なのか)という点に疑問を感じていたからなのだと、振り返って感じています。

今回の探索活動を踏まえて、今後は以下のようなリサーチに取り組んでみたいと考えています。

  • AIは人間の主観的な創造力やアナログの良さすら代替できるのか

  • AIの創造力と人の創造力は、どのように共存できるのか

  • デザイナーでなくても、誰もが創造力を発揮するために、どうAIを活用すべきなのか


◾️参考

上記のイベントに加え、Config2024というデザインイベントで話されていたセッションでも、同様の気づきを得ることができました。
「From paper to pixels: why great ideas start on a napkin(紙からピクセルへ:なぜ素晴らしいアイデアはナプキンから始まるのか)」というタイトルで、デジタルツール(Figma)とアナログツール(紙のメモ)がどのように共存できるのか、に関するセッションでしたが、これもAIと人の共存に通ずるものがありそうです。(デジタルとアナログは完全に対立するものではなく、お互いの良さが補完し合う関係にある。

  • スピーカーは、メモアプリNotionのデザイナーのRaphael Schaadさん。

  • デザインをする上で、デジタルもアナログも両方の良さがあると主張しています

  • Notionもアナログのスケッチから生まれたプロダクト(紙のスケッチの使いやすさと、柔軟性からインスパイアされた)

  • アナログとデジタル(Figma)を組み合わせるとどんないいことがあるか?

    • 文字認識機能のおかげで、アナログノート・デジタルノートを組み合わせ、2nd Brainを作ることができる!

    • 今後の文字検索機能のFIgmaのプラグインで、(ChatGPTのような)チャットbotに検索を依頼することができる

    • (例えば、「XXXというアイデアをいつ思いついたか探してください」という問いかけをすれば、たとえ10年前からの膨大なアナログのメモからでも、該当するメモを探し出して答えてくれる!)


◾️引用元

※1:https://designmatters.jp/ja/lineup/akitsugu-tsuchiya-ryo-sampei/
※2:https://designmatters.jp/ja/lineup/jasper-wu/

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