風呂敷と毛布
男は、最近、近所の人妻さんと懇意になった。その人はまだ子供がいなくて、旦那さんと二人暮しである。
ある日、その人妻さんからメールがあった。「今夜は旦那がいないの。ウチに来れる?」
男は急いで人妻の自宅に向かった。
人妻の家に着くと、人妻はすぐに男を求めてきた。男も人妻の求めに応じた。
数分後
急に玄関の鍵が開けようとする音がした。
「まずい。うちの人が帰ってきたみたい。すぐにクローゼットに隠れて」
男は自分の服をまとめてなんとかクローゼットに逃れた。
「おい、出張が早く終わったんで早く帰ってきた。もうちょっと飲ませてくれ」
人妻の旦那は酔っ払って帰ってきた。最初はソファに座っていたが、クローゼットの前に倒れ込み、そのまま眠ってしまった。
このままでは男は出るに出られない。
困った人妻は同じ都内に住む便利屋の弟に助けを求めた。
メールで事の詳細を弟に伝えた。弟は今回の貸しは次に返してもらうよと言いながら、すぐに駆けつけると言った。
「おいおい、兄さん、もう完全にできあがってるね。こんなところで寝ちゃ風邪引くよ」
「おう、君か。で、何で今日はうちに来ているんだい」
「ちょうどこの近所でトラブルがあったんですよ。どうも、あるところの奥さんが間男を引き入れたらしいんですけどね、旦那さんが急に帰ってきたらしくて、奥さんがあわてて男を押入れに隠したんですけど、そこの旦那さんが押入れの前で寝込んでしまったんですよ」
「それでどうしたいんだい」
「ちょうどお兄さんみたいに寝転がっていたんで、この毛布を使って、ああ、そのときは風呂敷だったんですけど、寝ている旦那さんにかぶせたんですよ。今やってるみたいに。それで、押入れを開けたら、男がいたんで『早く出ろ』と目配せしたんですよ。で、そいつが出ていくときに『忘れ物するんじゃねえぞ、靴も間違えるなよ』って言ってやったんですよ」
「ほお」
「それで、そいつが出て行ったあとで、風呂敷をこんな風に取った、とこういうわけですよ」
「なるほど、そいつはうまく逃しやがった」
※フィクションという名のオマージュです。