Acompanyの執行役員CTOに就任しました

2022年12月よりAcompanyの執行役員CTOに就任しました、田中(@tkrk_p)です。

Acompanyが「2035年までに世界No.1の偉大な会社になる」ために、グローバルへの進出をより一層加速させられるよう、前CTO近藤さん(@TakeItHaru)の取締役副社長 海外事業責任者 就任に伴い、CTOのバトンを引き継ぐ流れとなりました。

本記事は、Acompany Advent Calendar 2022 1日目の記事です。
僕がAcompanyに入社した3年弱前から今までの歴史を振り返り、今後の抱負を書き残そうと思います。

Acompanyとの出会い

元々、僕は学部時代に大学の同期と立ち上げた会社で、CTOとして匿名SNSや名古屋の長期インターン求人サイトを作って運営していました。

ある時、その同期に誘われて参加したReact勉強会で、大学の先輩起業家だったAcompany代表の高橋さんと出会ったのが最初のきっかけでした。

当時Acompanyが注力していた、今は無きブロックチェーン事業の構想を色々聞かせてもらったのを覚えています。そこから何度か事業についての相談に乗ってもらいました。

そんなこんなで、大学4年になると同時に創業した会社を離れたタイミングで、縁があって高橋さんにお声がけ頂き、Acompanyにインターン生として入社することになりました。

秘密計算エンジンQuickMPCの開発

僕が入社した2020年は、ちょうどAcompanyがブロックチェーンから秘密計算にピボットしたての時期で、MPC(Multi-Party Computation)を使ってデータの中身を第三者に開示せずにデータを利活用したいというニーズを満たすサービスを開発しようとしていたタイミングでした。

当時既存のMPCフレームワークはアカデミックなOSSが多く、MPCを使ったサービスを開発するという事にとてつもなく大きな壁がありました。

MPCという技術を使って今後サービスを展開していく上でも開発者がアプリケーションを開発しやすいMPCフレームワークは必要だと考え、自分たちで0から実用的なMPCフレームワークを作ろうということで、秘密計算エンジン『QuickMPC』を作り始めていました。

まずは、MPCについての本や論文の輪読からはじまり、アーキテクチャ設計と実装を進めていきました。四則演算、基本統計量、比較演算、機械学習と機能を次々と拡大していきました。(当時輪読した本の和訳&まとめがここにあるので興味がある方は是非)

当然これまでの道のりは安易なものではなく、多くの課題が立ちはだかっては乗り越えてを繰り返しながらも、QuickMPCをリリースし、2022年8月にはOSSとして公開することができました。

データコラボレーションと法律の壁

同時に、データの利活用という文脈で多くの企業と話していく中で、自社の有するデータだけでなく、組織を超えたデータ連携による価値創出に大きなニーズがあることがわかりました。

しかし、ここには法律とデータコラボレーション全体に大きな壁がありました。

今の個人情報保護法では、秘密計算を含む暗号化によって個人データを秘匿化しても、個人データの第三者提供と変わらないという評価になるため、法律対応という部分では有効打にならないのです。

加えて、企業がデータ連携を行う際に発生するステップそれぞれに異なる課題があり、法律、ビジネスの制約が複雑に絡み合っているため、法律対応とビジネス価値のある技術選定と全体設計をしないと、最終的な価値創出にうまく辿り着けないという難しさがありました。

プライバシーテックソリューションAutoPrivacyの誕生

この課題を解決するソリューションとして『AutoPrivacy』が生まれました。

AutoPrivacyは、QuickMPCを含むさまざまなプライバシーテックを組み合わせ、安全かつ適法な企業間データコラボレーションを一気通貫して実現するためのソリューションです。

複雑な法令対応からデータ分析までをシームレスで安全に実現するプラットフォームと、スムーズな導入からビジネス的価値創出までを総合的に支援するコンサルティングを組み合わせ、秘密計算単体では実現できなかった適法なデータコラボレーションを可能にしています。

ちょうど先日資料をアップデートしたので、気になる方は是非こちらからご覧ください。

これからなにをしていくか

AutoPrivacyはまだ立ち上がったばかりで、安定的に数千万〜数億件レベルの大規模データを扱えるように機能強化していったり、新機能の立ち上げ、運用コスト改善などやるべきことが山積みです。

QuickMPCはマルチコンテナ構成になっており、複数コンテナをクラウドだけでなくオンプレ上でも動作することが求められるため、現時点ではDocker Composeの上に展開して運用しています。そのため、障害時の冗長性担保や自動スケールが容易ではありません。

また、プライバシーテックは多くの場合、その性質上、個人データを扱うマシンリソースにアクセスできる権限は厳密に制御する必要があります。
理想的には、データオーナー自身がマシンとソフトウェアの管理を全て行うことが望ましいですが、実際問題それができるのは限られた企業だけです。
そのため、マシンの管理を委託する場合においても、万が一にも運用者に秘密情報が漏れないよう、厳密なアクセス制御が不可欠になります。

こういった課題に対し、Docker Composeをk8sへリプレースすることで、耐障害性を担保しながら、複数のステークホルダーがきめ細かいアクセス制御によって安全かつ効率的にリソースを管理し、安定的にサービスを提供可能にしていけることを目指していたりします。

他にも様々な課題がありますが、それらを一つ一つ乗り越えていくとともに、AutoPrivacyのスケールを促進しもっと爆速で新機能リリースできるような組織を作っていきたいと思っています。

最後に宣伝

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