【繰り返す】タイム・ループ・ラブ・コメディ映画5選【また戻る】
みんなー、タイム・ループ・ラブ・コメディ(TLLC)してるー?
いきなりなにかと思ったかもしれませんが、私はタイム・ループ・ラブ・コメディ映画が好きです。そんなニッチなジャンル、と思うかもしれませんが、実はなかなか伝統のあるジャンルなんですよ。その代表格が、『恋はデジャ・ブ』ですね。
いかにも90年代という邦題ですが、1993年、ビル・マーレイ主演のこの映画は、TLLCにおける完成形の一つと言えるでしょう(その前にもっと有名なのがなんかあるのかは知らん)。後々のTLLC映画は基本的にはこの形を踏襲しています。
その基本的構造とは、タイムループを繰り返し、そこから脱出しようという中で自分を見つめ直し、ループから脱出していくというものです。タイムループものだとラブ・コメディ以外には復讐ものなんかがありますが、人間タイムループなんかしちゃうとラブコメと復讐くらいしかやることなくなっちゃいますからね。
こういう軽いノリで楽しめる作品って嫌いな人は少ないんじゃないかな、と思います。たぶんスパイク・リーとかは嫌いでしょうが、それはまあそれで。というわけで、近年見て面白かったTLLC映画作品を5つ紹介しようと思います。
1.明日への地図を探して
実は劇場未公開で、アマプラで配信されたのみです。TLLCの王道中の王道の作品と言っていい作りなんじゃないでしょうか。わけもわからずタイムループで1日に閉じ込められ、そこから出られなくなっているという、基本的な設定です。ただ、面白いのは、最初に主人公のマークがタイムループに既に気づいているという状態なことですよね。すでに同じ日を何度も繰り返しているという状態にいて、そこで同じくループにハマっている女性マーガレットに出会います。2人で過ごすようになりますが、マークと比べてマーガレットはそれほどループ脱出に乗り気じゃなく……というストーリー。いかにも青春!という感じで若々しく、さわやかでいいんじゃないでしょうか。二人でいちゃいちゃしながら地図作って、タイムループ楽しみやがってこのやろー。TLLC初心者にも安心して進められるさわやかタイム・ループです。ちなみに、マーガレットを演じるのは『名探偵ピカチュウ』でコダック背負ってたキャスリン・ニュートンで、見覚えがある人もいるんじゃないでしょうか。
2.リバー、流れないでよ
TLLC界に衝撃を与えた圧倒的短時間ループの邦画作品がこちら。舞台は京都貴船の老舗旅館です。そこの仲居を勤める主人公・ミコトだけでなく、その周辺にいる人たち全員が、2分経ったら記憶を残したままでまた2分前にタイムスリップするという設定。どうですか、この圧倒的な短さ。タイムループもののループ単位って最低は1日ってのが定石なんですよね。あとは、出来事が起こったら戻る(ほとんどが主人公の死)というパターン。2分ループは、TLLC史上最短、タイム・ループ・ラブ・コメディ界の音速の貴公子と呼んでも過言ではないでしょう。最初は、2分で何やるんだよって私も思ったんですが、見るとこの2分がちょうどいいんですよね。圧倒的にテンポがいい。ダレない。「今回は無理っぽいからスキップしよ」みたいな捨て回もあります。もちろん、その2分間でめっちゃイチャったりもします。全員がループにハマっていることを自覚しているという設定なので、みんなで相談するのもいいですね。めちゃくちゃ笑いました。小劇場臭がすさまじい謎の機械も出ます。しかし、なぜこんな老舗旅館を撮影に使えるのかと不思議でしたが、主人公・ミコトを演じる藤谷理子さんがこの旅館の娘だそうです。圧倒的コネ。
3.ロシアン・ドール: 謎のタイムループ
Netflixからはこちらのドラマシリーズを1つ。ラブ要素薄めですが、一応なくはないのでTLLCということにします。誕生日ループもの。ナターシャ・リオンが演じるヤクとタバコバリバリの不良女主人公ナディアが、自分の誕生日パーティー後に死んでしまい、目を覚ますとまたそのパーティーの開始前に戻ってしまうというもの。おかしい、おかしいと思っているうちにばんばん死んでいき、そして同じくタイムループを繰り返している青年アランと出会い、二人でループから脱出しようという物語です。構造はオーソドックスですね。ただ、基本に忠実なだけではありません。ループするたびに世界が変わっていくという新機軸もあり。衣装や音楽のセンスも非常によくて、1話30分弱のテンポに合わせてどんどん見れます。そして辿り着く、切ない最後。まるでマトリョーシカ(ロシアン・ドール)のような重層的タイムループ世界をご覧あれ。ちなみにシーズン2もありますが、いったんシーズン1で終わるのでご安心を。
4.パーム・スプリングス
TLLC界に颯爽と現れた新星がこちらの映画。カリフォルニアのリゾート地パーム・スプリングスを結婚式で訪れたサラは、そこに出席していた男性ナイルズと出会う。いい感じになったところで、なぜか弓矢で襲われて、洞窟に逃げ込んで気を失い、気が付くとまたその日の朝に戻っていたという。そこでサラはもう一度ナイルズに出会ったところで、その日をナイルズが繰り返していることを知るのです。基本的には王道ものでしょう。その日を脱出するために色々もがくもうまくいかず、二人でいちゃいちゃと遊びまわったり、決裂したり、謎の殺人鬼が襲ってきたりと、ラブ・コメディ部分をしっかりと描いているのが好感が持てますね。なにしろヒロインがかわいくて、テンポがいい。そして、衝撃はラストの脱出部分。たいていはカップルの二人のうちのどちらかの心理的葛藤が元でそこから出られないという話で、それを心理的に解決することでループが解けるんですが(冨樫義博の『レベルE』にもそんな話がありましたな)、この映画ではマジで物理で抜け出します。そんな解決法あるの!?という斬新な脱出方法で思わず笑ってしまうので、ぜひご鑑賞あれ。
5.ハッピー・デス・デイ
サムネがひどい!近年のTLLCものの傑作と言えばこの作品でしょう。『ロシアン・ドール』と同じく、こちらも誕生日ループ作品です。ある日大学寮の見知らぬ男の1室で目覚めた主人公ツリーは、その日が自分の誕生日であることに気づきます。1日の最後に仮面を被った殺人鬼に殺されたツリーは、また誕生日の朝に戻っているのです。典型的なTLLCもの、と思いきや、こちらは一味違います。まずツリーがビッチです。はちゃめちゃビッチです。性格も悪くて、女にも男にも嫌われています。そして、そこに殺人鬼が絡みます。あらゆる手段で殺してくる殺人鬼がいることで、いきなりホラー要素が加味されてくるのです。タイム・ループ・ラブ・コメディがタイム・ループ・スラッシャー・ホラー・ビッチ・ラブ・コメディへと大増量されたのです。面白くないわけがないでしょう。2にいたってはさらにそこにSFが加わります。もちろん、ツリーちゃんもビッチのままでいるわけではありません。タイム・ループを繰り返しながらビッチが人間的成長を遂げるというTLLCのド定番展開も完備。あらゆる死を経験するごとに強くなっていくという、強くてニューゲーム状態。そして、2の最後にはやはりこちらも物理(物理)でループを断ち切るというごり押し展開。流行ってんのか、物理。1だけでも楽しめて、2も面白いこの作品、未見ならばぜひ。3は企画はあるものの、進展なしだそうです。
おわりに
近年の面白TLLC作品を集めてみました。どれもこれもしっかりとタイムループしながらも、それぞれ独自性を持った作品です。軽くて面白い作品ばかりなので、気軽に見れると思います。
TLLCは一定数作られ続けていますが、理由をちょっと考えてみました。まずタイムループという大きな軸があることで、ストーリーがブレませんよね。そして、タイム・ループは人間ドラマにも繋げやすいというのも大きいです。何回も繰り返すことによって主人公その他は嫌でも自分の姿を何度も見直さざるを得ず、その結果として人間的に成長していくという形は映画にしやすいですし、見ていても非常にわかりやすいでしょう。また、筋が繰り返すので、コメディの伏線も貼りやすいという利点もありますよね。前と同じ展開をちょっと外すだけで笑いにできるのは、大きい。あと、もう1つ忘れてはならないのは、場所と登場人物が限定されるので、あんまり金がかからない、ということです。お金は重要ですからね。莫大な金をかけたクリストファー・ノーランの撮るTLLCものとか見てはみたいですが。音楽で胃もたれしそう。
とまあ、いろいろ御託を並べましたが、良質なTLLC映画作品を見たいという思いは常にありますので、ぜひ新しいTLLC作品がありましたら、お知らせください。
ちなみに、今モーニングで連載している『8月31日のロングサマー』がTLLCど真ん中の作品でかなり面白いので、興味のある方はこちらもぜひ!