『The Tribe Game』開発者インタビュー!
Cloud9『The Tribe Game』開発者インタビューをお届けします。
インタビューに応じていただいたのは、「The Tribe」ドラマシリーズと今作のディレクター、レイモンド・トンプソン氏。カルト的な人気を博すドラマシリーズのRPG Maker製ゲーム、制作へのきっかけや注目ポイントを語っていただきました!

「The Tribe Game」、Steamでリリース中!
(現在英語・ドイツ語のみとなっています)
「The Tribe」とは?
「The Tribe」はニュージーランドを拠点とするCloud9 Screen Entertainment Groupによって制作され、1999年から2003年までイギリスで放映されたSFドラマシリーズ(計260エピソード)。未知のウィルスにより大人がいなくなった世紀末を舞台に、残った子供やティーンたちが生きていく壮大なストーリーとなっている。
1───「The Tribe」のゲーム版制作のきっかけは何ですか?
「The Tribe」には非常に忠実で熱心なファン層がいて、音楽、ノベル等と幅広く展開しています。
ファンの方々からは、以前よりゲーム版の強い要望がありました。我々としてもこの要望に対応できる適切な手段を探して、約2年前に私のクリエイティビティを維持しつつシリーズとしての整合性を保ち、表現ができるゲームエンジンに出会いました。
2───ゲーム版 「The Tribe」で最も注目するべきポイントは何でしょうか?
ストーリーとキャラクターですね。
ストーリーは「良い世界を次世代に残す」というテーマに基づき、非常に強力なストーリーとキャラクターの相互作用を主軸にしています。
社会正義から自立まで、希望と絶望、サステナビリティや大地への思いやりといった幅広い形で視聴者・プレイヤーの心に訴えかけられればと思います。
作中の様々なキャラクターとの交流で、友人と過ごしているような感覚、(ゲームが)プレイヤーにとっての居場所になればと思います。

また、バトル要素を含むゲームではありますがただ単にバトルをするだけでなく、
植物の育成、料理、クラフト、採集、畑などの様々な要素も用意してあります。


ゲームをプレイするにつれて、主人公のアビリティやスキルは進化していきます。
つまり、ゲームをプレイすることはただの冒険だけでなく自分自身を探す旅でもあるということです。
そして、ジャンルとしては「青空のディストピア ‘blue sky dystopia’」であり、逆境に打ち勝つ希望に満ち溢れたゲームとなっています。
すべての世代のために、より良い、サステナブルな世界を築きたいという、善良な全人類の希望が反映されています。
3───TVドラマがゲーム化されることで、ファンの方たちはどのような反応を示すと想定していますか?
ファンはきっと、ゲーム内でドラマの登場キャラと時間を過ごせるのが一番うれしいのではないかと思います!実際好きなキャラとデートしに行く人も居たりするでしょう(笑)。自分が好きなキャラを見ながら一緒に時間を過ごせると、プレイヤーもきっと感情移入しやすくなるのではないでしょうか。また、ドラマの本来のテーマ、集団的危険性・チャレンジ・夢・欲望等も、ゲームという媒体を通して直面する際、プレイヤーはきっとその感情を強く感じ取れるはずです。
4───TVドラマ版「The Tribe」を知らない人でもゲームを楽しめますでしょうか?
もちろん!The Tribeシリーズを知っている事を前提にしていないので大丈夫です。このゲームの主軸はキャラ間の触れ合いはもちろん、プレイヤーの出身地や文化を超越した人間同士の繋がりを、リアルに表現するためのフレームワークとも言えます。当然、ストーリーやクエストやクラスなどのお遊び要素も盛りだくさんです!
5───なぜ、数あるゲーム製作エンジンの中からRPG Maker MVを選ばれたのでしょうか?
なんとなく、「レトロ」な感じがしました。また、レトロ感が好きなゲーマーは一定数いるのも明らかです。旧作のほうのゼルダ・ポケモン・スターデューバレー等は今も人気が続いているのを見ていると、必ずしもAAA級の大作じゃないと成功できないことがない現象は、ゲーム市場の面白いところでしょう。
そして何より、チームのメンバーにはRPG Makerのファンが居まして、Maker(ツクール)シリーズの「誰にでもゲーム製作ができるように」という理念には物凄く賛同しています!RPG Makerは、世界観やストーリーを手軽に再現することができ、原作キャラとの触れ合いのチャンスを簡単に与え、さらに収穫、採集や戦闘などお遊び要素も取り入れられます。これらを手軽に実現出来るのがRPG Makerを選んだポイントで、自分が技術的(プログラミングなど)に思考を惑わされることなく、プロデューサーらしく、クリエイティブに行動できるのは非常にありがたいです。

6───ゲームを作る上で、どういった困難に直面して、どのように解決されましたでしょうか?
弊社Cloud9は、自分のクリエイターとしての志を実現するために設立した映像スタジオですが、本来はテレビ番組や映像の制作がメインビジネスです。
この「The Tribe」のゲームが、自分がゲーム業界に入る最初の試みです。弊社は大手会社ではなく、パッションと責任感だけ他人より2倍強い職人集団と言ったところでしょう!なので、ゲーム制作に関して右も左も分からない状態からスタートして、まずは正しい知見を持ちながら、私たちの信念に共感してくれるメンバーの募集に相当な時間がかかりました。メンバーを招き入れた次は、ゲーム制作に関するもっとも基本的な5W1Hを整理することでした。基本的ステップを把握した後はさらに何が可能で、何が不可能なのかを検討することでしたが、妥協知らずの塊りである私たちは、「本当の不可能」と「不可能に見えるがやってみたら実際は可能となった」のところを、試行錯誤を通して見極めることでした。
同業の方々からは、私たちが目指そうとする高い目標やビジョンについて、無謀だとすら評価されていました。でも本当に根気よく取り組んでみたら、一部の方々で不可能だと言い続けていたことも、なんとか実現に至ることができました。「知らぬが仏」という諺は本来、悪い意味で捉えることが多いものの、今回の私たちにとっては良い言葉になりました。だって、限界を知らないからこそ、挑戦してみるのです ー それが、クリエイティブ・プロセスの一部なのではないかと思います。だから先ほど、「本当の不可能」(技術的や金銭的問題等)と「不可能に見えるだけ」(回り道や代替案を探せば実現可能)の見極めが難しかったですね。でも、ゴールへ到達可能かどうかは、やはり時にクリエイターの根気や我慢強さ次第だと思います。
ゲーム作りは初めてでしたが、実際に体験してみた結果、テレビドラマのプロデューサーとしての自分が積んできた心得も、ほとんど流用可能だと実感しました。とにかく自分の想像力を限界まで回し、クリエイティブに様々な技術的問題を解決して自分の描いたビジョンをうまく実現していくのです。まさに「挫けず夢を生かし続ける」ことですね。
だから、夢を持つことは重要だと思います。夢がなければ、成し遂げのしようもないでしょう。ゲーム作りも同じだと思います。途中までは必ず反対意見を言い続ける人は居ますが、掴みたい夢やビジョンを持ち、それを実現に向けて力の源にすることが大事です。自分は、この「The Tribe」のコンテンツに対してはかなり満足しており、表現したい物事も一通り実装できました。もちろん、この喜びは自分一人の物ではなく、チーム全員が共有している気持ちです。ぜひ、「The Tribe」のゲームと私たちが描くビジョンを、ご体験してみてください。
7───RPG Makerで制作をしていて、改良して欲しいと思った点は何でしたか?
チームとして、RPG Makerの「ゲーム製作を身近に感じてもらう」という志は賞賛しています。
プログラミングの高度な専門知識を必要とする他のものとは異なり、RPG Maker MVは、本当にゲームクリエイターを目指す方々の夢をかなえているのです。
例えるなら、同じ音楽でも、作曲とピアノの演奏家のようなものです。スキル差はあれど、交響楽のコンダクターとベートーヴェンと子供は全員、自分が作った音楽を通して自分を表現できるのに対して、それをうまく演奏出来るのは、訓練に何万時間を掛けてようやく可能となったピアノ演奏家だけです。
なので、RPG Makerの初心者でも制作が出来るというツールであることにはとても魅力を感じています。
この魅力を踏まえた上で言うならこの三点ですかね。
1)データベースウィンドウと、プラグインマネージャーを同時に開きたい
2)データベースの検索機能の強化
3)データベースにプラグインを統合する機能
8───すでに続編の構想はあるのでしょうか?もしあれば、今回よりも速く開発できると思いますか?
はい、今回の第一作目のゲームはまだドラマの序盤!ドラマシリーズでは全部で300話近くあり、まだまだカバーしたい部分が沢山あります。
今回のゲームは、ドラマの話数でいうと6話分のストーリーまでとなっています。
最初は確かに大変でしたが、この第一作の制作過程で出来上がった素材やアートワークがたくさんあり、それを活用すればきっと開発スピードのみならず、新たな演出やシナリオも満足に実現可能でしょう。
9───最後にゲームをリリースした開発者として、同様のチャレンジをしているクリエイターに何かアドバイスはありますか?
クリエイティブな事に関して大事なのは、まず白紙の状態から始めて、ストーリーとキャラクターを作り上げることだと思います。例えて言うならば、この二つの要素が小石と池のようなものです。石は色んな投げ方をして様々な波紋や連鎖反応を引き起こすことができるが、石と池という礎がちゃんとしないと、何も出来ません。この根幹となる部分がちゃんとしていれば、問題に直面するときは非常にすんなりと解決方法が見つかってしまうことも多いのではないでしょうか。
なので、何かを制作する人(ゲーム、音楽、映画、番組など)へのアドバイスとしては、自分のプロジェクトは何なのかをはっきりさせることです。最初に何が起きるかではなく、その根底にあるテーマです。それをしっかりと持つことで、ビジョンも明確になるはずです。
そして、そのビジョン、そして夢を手に入れたら、目標を達成することに集中することです。一番困難なのは、制作の途中で様々な反対意見も出てくるかもしれません。意見を聞き入れることは大事だとは言え、建設的意見と、自分自身の想像力や根本的ビジョンを揺るがす意見をきちんと選別したうえ、自分が表現したい物を強い気持ちで守り抜くことも大事です。ゲームのみならず、色んな分野でクリエイターを目指す方々も、自分が満足して作りたい物を作り、そして成功を収められるように祈っております!