【謝罪します】イシナガキクエを探していいのか(3) 電話帳ナビの謎を解明して番組に謝ろう
この記事には初回記事の番組批判の撤回と謝罪が含まれます。
申し訳ありませんでした…。撤回に至るまでの過程をお読みください。
「イシナガキクエを探しています」第2回が放送された。
だが私にとっては番組内容より衝撃なインタビューが放送直前(正しくは前回記事投稿時と同じ頃)に公開された。
仕込みはしていない。
そんなバカな。
前回、前々回記事で触れた通り、電話帳ナビのクチコミは一般の利用者も投稿できる。しかしPR文などの基本登録情報の変更は有料サービスの利用者か、電話帳ナビ管理者にしかできない。また、一時チャットエリアが出現したことからも有料サービスの利用者ではなく電話帳ナビ管理者がこのページの仕込みを行なっていた可能性が高い。番組側が仕込んでいないのであれば、電話帳ナビ事務局が勝手に番組に連動させたコンテンツを展開していることになる。前回記事で今後は純粋にモキュメンタリーを楽しみたいと書いたがこうなってくるとまた番組内容より気になることが出て来てしまう。
というわけで今回も番組自体の考察ではなく、番組外の気になる動きに対して情報の整理を進めていく。
多くの視聴者はすでにいたずらとして切り捨て、ネットの情報は考察の対象から外し、また番組制作側は考察はさせず、番組本編のみで楽しめるコンテンツを目指したと表明している。だから私が行う検証は邪道であり的外れな行為であり、徒労ではあるが、傍流の楽しみ方としてお読みいただければ幸いである。
■結論は出ません
結論から言うと結論は出ない。
実は私は最初の記事執筆後に電話帳ナビに「仕込みなのかいたずら(荒らし行為)なのか」と件の2ページについての率直な問い合わせを行っている。
だが5日以上が経過した現在、未だ電話帳ナビ側からの回答はない。(回答義務もない)
イシナガキクエ関連の電話帳ナビページで誰が何をしているのかがわかるのは電話帳ナビの管理者だけであり、彼(彼ら)から回答がない限り真相はわからない。歪んだ考え方ではあるが、電話帳ナビも、そしてテレビ東京もしらばっくれる可能性だってあるだろう。大森プロデューサーの仕込みをしていないという発言すら嘘かもしれない。大森Pが知らないだけで番組関係者が勝手にクチコミを投稿したり電話帳ナビと結託している可能性だってある……!
……と、ここまで来るとまさに大森プロデューサーが危惧している陰謀論にハマった人間になってしまうのでここまでにしておく。
まずは「番組関係者はネットで仕込みを行なっていない」を大前提とする。
つまり電話帳ナビで行われた行為は全て番組内容に無関係のもの(いたずら)とし、一般利用者とそれ以外の管理権限がある者を区別するための、「誰なら何ができるのか」という事実確認と、情報の整理をこれから行なっていく。
■「仕込み」が疑われる2つのページ
まず最初に電話帳ナビでどのページがイシナガキクエ関連と目されていたのか確認しよう。
https://www.telnavi.jp/phone/05017205244
https://www.telnavi.jp/phone/0585964135
この2つである。「05017205244」は番組内で情報提供先として提示された電話番号だ。もうひとつの「0585964135」は現在ほぼ白紙化され、当時サイトを見ていなかった方には何がなんだかわからないだろうが、「狂小屋(きちがいごや)」という岐阜県揖斐川に実在する地名の電話番号とされていたものだ。
「05017205244」の基本情報が、ゴールデンウィーク中に頻繁に更新されていたことは最初の記事でお伝えした。この更新の中で、当初電話番号の所在地としてGoogleマップに登録されていたのがこの狂小屋なのだ。そしてクチコミで「狂小屋の電話番号も電話帳ナビに存在する」と「0585964135」へのリンクが貼られた。
こうして「0585964135」のページも「05017205244」と同じように様々な登録情報の変更や、クチコミの投稿が行われていく。
一時は陰謀論者をワクワクさせるような画像やクチコミが投稿されていたが、
この魚拓取得時に表示されている画像、3枚とも個人ブログからの転載である。一番下の画像から順番に掲載サイトを紹介する。
狂小屋は廃村として人気の高い場所で、そこの探訪記録から拝借されていたわけだ。ということで番組の仕込みだと仮定した場合でも狂小屋のクチコミ情報はイシナガキクエ捜索番号以上に考察の価値が低い。そもそもいくら実在する地名でもこんな言葉はテレビで流せないのだから当然無関係だと最初から結論づけるべきだったのかもしれない。
しかしこの2つのページで有料サービス利用者、もしくは電話帳ナビ管理者しかできない情報変更が行われ続けたのは事実である。それを行なえるのは誰かを次に検証していきたい。
■エンタープライズサービスで何ができるのか
電話帳ナビ事務局を疑う前に、有料サービスのエンタープライズサービスで何ができるのかを再度確認したい。有料サービス利用者の権限でチャットエリアなどの設定もできるのであれば、この一連の騒動は身銭を切ってでも電話帳ナビで悪ノリしたい一視聴者の仕業になるからだ。
電話帳ナビの説明によれば、
以上4つの機能が有料サービスで利用できる。
前項でも触れた最大の問題点、「チャットエリア」の設置については何も触れられていない。だがこういったサービスにおいて、外部で告知されていない機能が存在していることはままある。
ならば自分で有料サービスを確認してみよう。
ということでエンタープライズサービスに仮登録した結果がこちら。
やはりこの4つの機能以外は見当たらない。
実際に私の保有する電話番号や適当な番号に対してこれらのサービスを申し込み、謳われている機能の詳細を確認することもできるが……私が電話営業事業者でない以上、荒らし行為と変わらないので実際の課金は行わない。
では件の2つの電話番号はエンタープライズサービスで使われているのだろうか。それも確かめてみた。
どうやら両者ともすでに有料サービスが利用されているようだ。というわけでまずは「有料サービスを使った一視聴者のいたずら」という可能性が高くなる。
■チャットエリアの謎
「数万円かけていたずらする愉快犯がいたんだね。物好きだね。」
それで話は終わらない。
なぜならこの2つのページには有料サービスでは明示されていない「チャットエリア」が表示されていた時期があったからだ。
ウェブ魚拓で確認してみよう。
ページ下部、クチコミ投稿フォームのさらに下にある黄色いエリアがそれだ。チャットエリア右下には「チャット(会話)とクチコミの違い」というリンクがあるが、これはリアルタイムで出現していた際も押しても何の反応もなかった。もちろん魚拓でも反応しない。ブラウザの機能によってポップアップウィンドウがブロックされていたり、特定のブラウザでしか反応しないJavascriptで書かれているのかと思い当時色々試してみたが、結局単なるリンク切れ(無効リンク)のようだった。しかし私自身も当時試したが、チャット自体はきちんと機能する。別の方も同じようにチャットが使えていたようなのでXから引用する。
「イシナガキクエ……」の方ではご丁寧に次のPR文まで書かれている。
先に「狂小屋」のクチコミはほぼ全ていたずらであろうと結論づけたが、このページにもチャットエリアは設置されていた。イシナガキクエ……のページと異なり、PR文には何も書かれていないが、やはりエンタープライズサービス利用者だけでは行えない現象だ。
ところで電話帳ナビの各電話番号ページは、アクセス数が増えるとシステム上自動でクチコミが投稿される。「元」狂小屋のページにもこれが何度か投稿されている。(ウェブ魚拓)
ではチャットエリアもアクセス数の多いページに自動で表示される類のサービスではないのか。
しかし残念ながら他のページで似たようなチャットエリアは見つからない。
電話帳ナビはトップページにアクセス数の多い電話番号のページへのリンクが表示される。同時アクセスが起こりそうな時間帯にトップに表示されたアクセスランキングからいくつかのページを確認したが、やはりチャットエリアは見つからなかった。
前述のように、エンタープライズサービスにはこのようなチャットエリアを設置する機能はない。以前の記事でも主張したが、電話帳ナビ管理者でないとできないことではないだろうか?
PR文に特定のHTMLコードを仕込むことで有料サービス利用者でも擬似的にチャットエリアを設置できるのではないかとも考えたが、魚拓に残っているソースコードを見る限りそのような形跡はなさそうだ。(私は素人なので、もしそのようなコードが確認できた方がいらっしゃったらコメントでご報告いただきたい。)
■やっぱり結論は出ません。
では電話帳ナビ管理者がこれらの行為を意図的に行なっていたと仮定しよう。番組側の仕込みがないという発言も信じたとする。なぜテレビ局からの依頼もないのにそんなことをしたのか?
さっぱりわからない。
電話帳ナビは一般利用者にとっては迷惑電話の情報を共有するコミュニティであり、電話営業事業者にとっては自社の電話番号の明瞭性をアピールするための場所だ。大変真面目なサイトである。
そんなサイトをモキュメンタリー番組のために管理者自らが率先してぶち壊すような真似をするのだろうか?
電話帳ナビの中の人が大変なモキュメンタリー好き、もしくは大森プロデューサーや他の制作スタッフのファンだったとしても非常に考えにくいことだ。
一方で、そんなわけのわからない無軌道な行動だったのなら、多くのいたずらクチコミが不作為に削除され、当初私が問題視していた「集団昏倒事件の加工画像」のような一部の画像が残された理由もわかる。テレビ局のような番組内容に沿った方針やモラルなど特にないからだ。そして私のような不必要に深読みをするタイプの人間が「これは消されていないクチコミだから番組公認の演出だ!」と思い込む。これが真相なのだろうか。
■第2回放送の内容とリンクするクチコミ
だが一方で陰謀論者に残された希望もある。
「イシナガキクエを探してください」第2回では番組後半、ある池の中を探索し、「イシナガキクエとされる写真と、簀巻きにされた人間か棺桶のような物体」が映し出される。詳細については番組を視聴して確認していただきたい。
水の底にイシナガキクエらしきものが沈んでいる…。これ、放送以前に電話帳ナビで示唆されていたのだ。
上記の暗号解読はおそらく下記のクチコミを受けてのものだと思われる。
さらに、表示されていたGoogleマップは、当初狂小屋付近の陸上を示していたが、時間経過とともに湖の中にピンが移動し、さらにそのピンも湖の中を漂うように不規則に位置を変え続けていた。
ウェブ魚拓ではGoogleマップの記録まではできないため、これはリアルタイムに電話帳ナビを確認していた人しかわからない。XなどのSNSでこの不気味な現象を報告する投稿はいくつか確認できる。
また、「殺され 閉じ込められた」という点も第2回冒頭で情報提供をしていた自称霊媒師の霊視内容とも一致する。
あまりに番組内容とリンクしすぎている。陰謀論者に戻っていいだろうか。
ただ、ホラーにおいて死体が埋まっている場所といえば土の中や水の中は定番だ。そもそも池と湖という決定的な違いがある。単なる偶然、適当に書き込んだ一般人放送見てガッツポーズ、と片付けることもできる。
■逆転の発想による制作手法
だが陰謀論者というのはいつも物事の順序を都合のいい方に解釈しがちだ。
逆の方向からも物事が成り立つ場合がある。
「電話帳ナビを番組制作側が利用してこの先のストーリーを暗示した」のではなく、「番組制作側が電話帳ナビの素人のいたずらをストーリーに採用した」と考えればどうだろう。
この記事の発端となったインタビュー記事を再度確認するとこんな発言がある。
なるほどまさに順序が逆、逆転の発想によるギミック採用である。
そしてこんな種明かしもしている。
第1回放送後、電話帳ナビやXで、折り返しの電話がかかってきたという報告はいくつかあった。その報告自体が仕込みだろうと見る向きもあったが、本当に折り返しの電話をかけていたのだ。そして確かに第2回放送ではいくつかの目撃証言が紹介されていた。おそらく一部は実際の視聴者から寄せられた情報(創作)だろう。
第1回(4月29日深夜)から第2回(5月10日深夜)放送までは2週間弱の日にちが空いていた。この不定期なスケジュールは不定期な特番というモキュメンタリーを演出するため、もしくはゴールデンウィークの影響かと思っていたが、こうやって現実を虚構に取り込むために、わざと制作期間が取れるように設定していたのだ。
さらに冒頭の「仕込みはやっていない」発言をもう一度見返してみよう。
「イシナガキクエを探しています」という番組は都市伝説が実体化していく過程を描く物語なのではないかという考察がある。つまり本来存在しなかったはずの架空の人物イシナガキクエが、他者の噂や思い込み、願望が入り混じる中で現実味を帯びていくのではないかという説だ。まず捜索者の米原さんからして、初回放送当初はイシナガキクエの写真は残っていないと主張していたのに、番組後半で写真が残っていると言い出しそれを取材班に提示する。これは何らかの不都合があって写真が残っていることを隠していたのではなく、イシナガキクエが存在してほしいという想いが写真を用意させたのではないか。
また、第2回では池の映像公開後にラランドサーヤが困惑しながらこう言っている。
つまり番組内外の様々な目撃者が、全く関係ないものをイシナガキクエと認識し、架空の存在に輪郭を与えていく。大森プロデューサーが言う「都市伝説の発生の過程」そのものだ。これが番組テーマであり、我々視聴者、そしてネットユーザーもこの最大のギミックに利用されているのではないか。
電話帳ナビ発の「イシナガキクエが湖の中に沈んでいる」という噂、デマ、いたずら書きを、モキュメンタリー番組自らが取り込み、第1回放送後の2週間弱という猶予の中で、作中登場する謎のビデオテープのシーンとして採用し、制作する。
こう考えると、「制作側はネットに何も仕込んでいないが、電話帳ナビのクチコミ内容と番組本編はリンクする」という謎に説明がつく。
この番組を、画像を盗用し電話帳ナビでステマを繰り広げるモラルにもとるコンテンツだと批判していた陰謀論者は、今この番組構造の面白さにしてやられている。これこそモキュメンタリーだよ!!言いがかりをつけてすみませんでした!
でも電話帳ナビが番組と無関係に仕込みを行っていた(邪推)理由は今も不明のままだ。
チャットエリアについて有料サービス利用者なら設置できるよ、という情報をお持ちの方はぜひお知らせ下さい。
やはり(少なくとも現時点では)全ての真相を解き明かすことはできないのである。
■前々回記事についての謝罪
さて、ここに来て私が問題視していた「2014年の新宿集団昏倒事件の画像盗用」は、限りなく一般の視聴者によるものであり、番組側は冤罪だった可能性が最も高くなってきた。
不確かな推測だけで鼻息荒く番組批判をしていたことをここに謝罪します。
大森プロデューサーを始めとする番組制作スタッフの方々、そしてこの番組を純粋に楽しんでいた視聴者の皆様、本当に申し訳ありませんでした。
そして私が電話帳ナビ事務局に対しても濡れ衣をかぶせている可能性も捨てきれない。
初回記事ではクチコミの個別削除ができるのは電話帳ナビ管理者だけ、と私は主張していたが、これについても単に一般利用者からの違反報告が多い投稿だけを消していただけの可能性もある。残る謎、チャットエリアについても何かご存知の方がいらっしゃいましたら、コメント欄にて情報をお寄せください。
よろしくお願いします。
完結編となる「イシナガキクエを探しています(3)」は5月18日(17日深夜)1時53分から。
すっかり手のひらを返した愚か者は、今から待ち遠しくて仕方ない。