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証券会社とコンサルでのロジックに対する感度が違う、という話

Revueのサービス終了に伴い、そちらに掲載していた記事をnoteに移設しています。本記事は、Revueにおいて 2022/8/7 に掲載したものです。

2022/12/21


いつもはニュースを取り上げるのですが、今回こんな質問をいただきましたので、こちらについて皆さんにも紹介したいと思います。

※もしご質問あれば、TwitterのDMで送ってください

金融の方って”曖昧(リスク避けるために意図的なのではなく)”な話し方をする人が多いと思うのですが、セルアナとコンサルご経験されて、良ければご感想お伺いできないでしょうか?例えばP/Eと一口に言っても、来期予想ベースなのか今期予想ベースなのかで数値が異なり、重要な意思決定であるバリュエーション結果に影響すると思うので、個人的には峻別すべきと思うのですが、みんなP/Eだとひとまとめな感じがしてしまって。一方コンサルの方はバーバラミント宜しくピラミッド的に構造化して情報を整理していて、使う言葉の定義が明確な印象があります。

なるほど、そんな感じ方をするのか、でも実際自分のバックグラウンドに応じて言う事/言い方は変わるなと思ったので、以下のような返答をしました。(質問・回答をブログ等に書くことについて、ご本人の同意はいただいています)

ゴールが違うからアプローチも違う

端的に言えば「ゴールが違う」というのが、話し方だったりの「アプローチの違い」に結ばれるのかな、と感じます。証券会社とコンサルは収益モデルも提供価値も違うので「ゴールも違う」のです。

証券会社もコンサルティング会社も、事業会社の支援をするという意味では、似通ったことをしています。セルサイドアナリストは機関投資家の支援で少し違います。プライマリーサイドなら証券会社も戦略コンサルタントも事業会社の支援事業で一緒です。

ただ、それらの人々はゴールまでの時間軸が違います。

証券会社の場合

例えば、セルサイドアナリストとして重要なKPIは、推奨が当たる・業績予想が当たる(スターマイン社)そして人気投票によるランキング(Institutional Investor・日経)です。

もちろんバリュエーションの過程でP/Eの定義や何故それがワークすると考えるかというロジックは準備しますが、そのロジックの正確性より「推奨が当たるかどうか」のほうがずっと重要です。

また、IBDのMA部隊で買い手側のFAにつくのなら安く買えればいい訳です。そして買えた時点でフィーをもらうでしょう。つまり成功は「買えたこと」です。フェアバリューという見る人によって変わるものに関するバリュエーションの真の正確性は二の次で、安く買う(買い手が買う意思決定をできる値段で合意する)ための交渉術としてのポジショントークだって大切です。※注:IBD勤務経験はないので若干想像も入っています

どちらも長期的なお付き合いという意味では、長い時間軸での信頼獲得が必要ではあるのですが、どちらもゴールは比較的近いところにあり、成果を見やすいです。

コンサルの場合

一方で、コンサルとして重要なKPIは、納得感です。

だいたいが改善などの新たな行動の意思決定を行うものが多いので、不確定な未来について「こうすれば成果が出る!」という説明をして実行を促す訳です。

戦略立案の結果、成果が出るかどうかというのは5年10年経たないと分からないこともありますし、戦略が正しくても実行が間違っていれば、成果も出ません。成果ってすごく曖昧です。

そうなると満足してもらうには見えづらい/見ることのできない未来の結果より、その戦略・施策に賭けて良いという納得度のほうが重要です。意思決定のサポートをしている訳ですから。そのため、理解しやすさや論理的正確さなどをものすごく意識します。

理解をしてもらい、納得をしてもらうためには、ロジックは非常に重要ですし、説明の仕方も重要です。

サポートしてくださった方のご厚意は、弊社の若手とのコミュニケーションのためのコーヒーショップ代にさせていただきます。